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本を読むのが得意でない私が司書になった理由

 図書館で働きたいか、働くのか、理由は様々です。私は司書の資格を短大で取りましたが、本(特に小説)を読むのは得意ではありませんし、読書が趣味というわけでもありません。
 読書や本が好きで図書館で働きたいという人もいます。図書館という場所に憧れを持って求人に応募する人もいます。なんとなく図書館で働いてみようという人もいます。図書館で働き始めて、図書館に対する憧れと現実とのギャップに「こんなはずではなかった」「思っていた感じと違った」と落胆してしまう人がいることも事実です。
 
 なぜギャップが生まれるのか。
 なぜ司書の給料は低いのか。
 なぜ女だからといって不当な扱いを受けないといけないのか。

 なぜを考えたらキリがありませんが、一番のなぜはタイトルの通り
「本を読むのが得意でない私が司書になった理由」ですね。

そんな理由で? と思われること間違いなしの理由です。
よければご覧くださいませ。

1.「司書」と「図書館員」

 「司書」は資格です。資格を持っていて図書館等に勤めて司書という肩書を名乗ることができます。
 「図書館員」は図書館で働く人です。司書資格の有無にかかわらず、図書館で図書館サービスに従事している人を指す言葉です。
 図書館員でも司書ではない人はたくさんいます。
 求人を見ると有資格者限定のものや資格の有無で給料に差があります。
大学、短大で規定の単位を取得すると司書の資格が得られます。また、学歴条件がありますが、社会人になってから司書講習を受けても資格を取ることができます。
 利用者さんは誰が資格を持っていて持っていないのか分からないと思うので、“図書館で働いている人=司書”と思っている人もいるかもしれません。
私が司書の資格を持っているからどうしても資格持ちを贔屓してしまいますが、司書の資格を持っている、あるいは図書館情報学等を学んだ人と、そうでない人ではやはり知識に差があると思います。好きな作家さんがいる、年間何百冊と読んでいるというプライベートな知識ではなく、利用者さんに図書館サービスとして知識や技術をもって提供できるかどうかも大切になってきます。
 これは余談ですが公共図書館ですとやはり色々な利用者さんが来ますので、理不尽な要求をされたり、各図書館のルールを守ってくれなかったり、罵声を浴びせられたりすることもあります。「本が好き」だけではなく、人と接することに抵抗がないかも重要です。

2.私が「司書」を取った理由

 私が“司書”という職業を知ったのは高校生のときです。考えていた進路に進むのが難しいと判断した高校3年生の1学期。進路に悩んでいた私に部活の顧問が言いました。
「さくらいさん、画用紙でメッセージカード作ったり、絵を描いたりするのが得意なら、司書として図書館で働きながら壁飾りとか装飾を作るっていう働き方もあるよ」
 当時の私には画期的に思えた働き方。仕事の主な業務ではなく、仕事の合間にちょっとだけ好きなことを取り入れて働く。帰宅してすぐに“司書”という職業について調べました。
(へえ、国家資格なんだ。公共の図書館で働いたら公務員になれるんだなあ。公務員か、公務員。安定してる仕事じゃん。司書の資格がとれる学校探そう!)
 なんとも浅はかだとは思いませんか。私は思います。
 なんとか司書の資格が取れる短大に入学し、司書課程のガイダンスで教授が言った一言で私はちょっぴり落胆します。
「現在、業務委託等を取り入れている図書館が多く、公務員で司書を採用しているところはとても少ないです。公務員として働こうとするのは狭き門です」
(まじか……!)
 司書について調べたときは、どうやったら資格が取れるか、どういうところで働けるのかくらいで、公務員の司書の採用がどうなっているかまでは調べていなかったのです。
「ただ、司書の講義で身につけたことは、図書館で働かなくとも様々な仕事で活かせると思います」
 その教授の言葉を信じて、2年間の短大生活がスタートしました。

3.教授の言葉と私の働き方

 講義の中で、心に残っている言葉があります。

「ゼネラリストのスペシャリストになれ」

 ガイダンスのときに教壇で話していた教授の言葉です。
 司書はひとつの事柄のスペシャリストになるのではなく、広く浅く事柄を知り、利用者さんから質問されたときに「詳しくは知らないけど、なんか聞いたことある!」くらいに知識を広げておくと良いという意味でした。
この「ゼネラリストのスペシャリスト」は今後の私の働き方にも影響してきます。
 私が初めて務めた図書館は貸出カウンター7つに分かれていました。そのうち業務委託に任されていたのは5つのカウンター(のちに6つになります)で、どのカウンターに共通する仕事と該当のカウンターしか行わない仕事がありました。一緒に働いている人によっては入る、入ることができるカウンターが限定されていることあれば、いくつか入ることができることもありました。これはカウンターとの相性や上司の采配も関係してくると思いますが、私は5つ(のちに6つ)のカウンターすべてに入ることができるようになりました。メインで入るカウンター以外に、急遽欠員がでたカウンターに入る、昼休憩の間の中継ぎとして入る、忙しくなっているカウンターに入るという入り方ができます。どこでも入ることができるといえば聞こえはいいですが、私にも若干苦手なカウンターはあったので“都合の良い人材”だったかもしれません。ですが、たまにしかこないため一部の人しか知らない依頼の対応や少し厄介な利用者さんの対応ができる、どのカウンターもできるということは私の強みでした。
 次に働いた図書館では主に児童サービスを担当しました。市の直轄から指定管理者制度導入のため引継ぎの段階から次に働く図書館へ行っていました。引継ぎで全体の大まかな仕事のやり方や内容を聞いていたため、主担当でなくても大方の仕事はなんとなく知っている状態でした。主担当の人がいないときのために、児童サービス以外の仕事を覚えることもありました。そのため、自分の主担当以外の仕事も割とできるようになっていました。
 ひとつのことに特化したスペシャリストに比べると劣る点や欠点はありますが、私はこの「ゼネラリストのスペシャリスト」のような仕事の仕方が実に合っていたのです。

 さて、図書館員になったことで壁飾りや装飾は作れたのかということですが、ちょこちょこ作れました。折り紙で季節の装飾を作ったり、指あみで造ったティペットを「この本を見て作りました!」と本と一緒に飾ったり、赤ちゃん向けのおはなし会用にフェルトでパペットを作ったりしました。あとは行事ごとのチラシや小学校や中学、高校へ配るPR紙をパソコンで作りました。

 ほとんどは日々の業務に追われて残業したり、市直轄の図書館から嫌味を言われたり、理不尽な扱いを受けたりということも少なくありませんでしたが、私は司書、図書館の仕事が好きですし、図書館で働かないとしても絵本のよみきかせや何か資格や知識を活かしたことができればいいなと思っています。


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