相続人の配偶者(妻)が被相続人の介護をした場合における寄与分について

  1. 取り上げた裁判例
    東京高決H22.9.13家月63巻6号82頁

  2. 事案の概要等
    被相続人は、Xの妻であるEが嫁いで間もなく脳梗塞で倒れて入院した。

    被相続人が付き添いに頼んだ家政婦は、被相続人の過大な要望に耐えられなかったため、Eは、少なくとも3か月間は被相続人の入院中の世話をした。

    Eは、被相続人の退院後は、右半身不随となった被相続人の通院の付き添い、入浴の介助など日常的な介護に当たった。

    更に、Eは、被相続人が死亡するまでの半年の間は、被相続人が毎晩失禁する状態となったことから、その処理をする等被相続人の介護に多くの労力と時間を費やした。

    被相続人が入院した期間のうち約2か月は家政婦に被相続人の看護を依頼しており、被相続人は、在宅期間中は、入浴や食事を作ることを除けば、おおむね独力で生活する能力を有していたことが認められる。

    しかし、Eによる被相続人の入院期間中の看護、その死亡前約半年間の介護は、本来家政婦などを雇って被相続人の看護や介護に当たらせることを相当とする事情の下で行われたものであった。

    また、それ以外の期間についても、Eによる入浴の世話や食事及び日常の細々した介護が13年余りにわたる長期間にわたって継続して行われた。

    そのため、Eによる被相続人の介護は、同居の親族の扶養義務の範囲を超え、相続財産の維持に貢献した側面があると評価することが相当である。

    そして、Eによる被相続人の介護は、Xの履行補助者として相続財産の維持に貢献したものと評価できる。

    その貢献の程度を金銭に換算すると、200万円を下ることはないというべきである。

    また、Xは、少なくとも昭和42年から昭和55年まで及び昭和59年×月からEと婚姻する昭和61年×月までの間、原則として勤務先から支給される給与の全額をいったん家計に入れて(相手方及び次男Cについては、それぞれの収入を家計に入れることがあったとは認められない。)、昭和60年×月×日に、Xの母Fが死亡するまでの間はFに、以後は被相続人にその管理を任せて苦しい家計を助けていたことが認められる。

    したがって、Xは、被相続人の相続財産の維持及び増加に寄与したものということができる。

    もっとも、
    ①Xが家計の中から必要な小遣いをもらい、時にはそれがXの給与の額を超える額となったことがあり、Xが家庭で生活する際の日常の食費、被服費、光熱費等の出費は家計から賄われていたこと
    ②Xが家計に入れた収入の一部はX名義の金融資産となった可能性があること
    も認められるから、その寄与の程度を具体的に確定することは困難である。

    しかし、少なくとも現在の貨幣価値に換算して200万円を下ることはないという程度の推定は可能である。

  3. 結論
    したがって、Xの寄与分の申立てのうち、寄与分を400万円と定めることを申し立てる部分には理由がある。

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