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春ららら ~三人揃って春の日に~前編



朝の早くから電話が来た
うちに朝早くに電話をよこす人は珍しい

電話の相手はK婆さんで
内容的にはホントに【あの婆】に困ってると言う話だった

「あの?」

そう、あの。

以前にNoteで書いた

ゾンビ婆に噛まれた俺は異世界で賢者してきたんだけど話聞く? 
ー死闘前編ー

に書いた
あの已寺ヤミデラ婆(仮名)の事だ

「またあの婆かい・・・」正直うんざりだ

国家権力さえ泣いて騙せると思ってるような婆だし
正直言って触りたくない

その場はなんとかまぁまぁとなだめたが

その後また電話があって
いつの間にか已寺婆の被害者の会が結成されてた・・・


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主要登場人物


【私】果哉屋叶子(カナリヤカナコ)

  ご職業は主婦という話の実際は何してんだか分んない人
  今回は噛まれてない

【婆】已寺絵巳子(ヤミデラエミコ)ストーカー婆

  資産家のタッちゃん(の、お金)LOVEのすがすがしい人
  ヤンデレとツンデレと妄想が酷い

【爺】埴虎成辰 (ハニトラナルタツ)通称 タッちゃん

  資産家故にターゲットされてるが、それ以上に優柔不断な人
  フニャフニャな人(自称糖尿体質)今回は空気

被害者の会の面々

K婆(タッちゃん爺の店子・已寺に誹謗中傷されている)
Y姐(タッちゃん爺の店子・已寺に誹謗中傷されている)

S婆(元タッちゃん爺店子・引っ越先にも已寺に訪問被害)
M婆(タッちゃん爺の知人・電話被害・已寺に訪問被害)
L婆(同上・電話被害にあっている)
O爺(タッちゃん爺の知人・Y婆の彼氏。
  已寺婆が彼のアパートに何故か突撃している)
兄ちゃん(タッちゃん爺の息子 今回も空気)

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あの苦々しい事件があってから
何とも現状は後日談は書きずらい事もあって

タツ爺は もう殆ど放置だった

だってさ、
警察沙汰になっても
まだ毎日きてたんだもんよ ヤミデラ婆

道で私を見かけるたびに
凄い勢いで車で逃げてくんだし
例え歩行者がいる歩道だろうが
後ろに車がいようが
バックで逃げようとするんだもんよ

しかもタツ爺さんの身内みんなが
もう白旗あげちゃってて

私自体も

「もうタツ爺さんはケツの毛までむしられちゃえばいいよ Hahaha!」

みたいな扱いだった

彼の財産など私には一切関係ないしね!と

タツ爺さん自体も何度かヤミデラと喧嘩したり
本気で切れようとしたりしていても
あのしつこさと周囲を切られた寂しさもあって

もう共依存化してたのは事実だった

だが、その度に私達が爺さん側に何かを働きかけたかのように
彼女は思い込んで周囲に嫌がらせをするという悪循環になっていた

全くそんな事は一切なかったのだが

そんな折、爺さんの所有物件に新人の婆さんが来た
ところがその新人さん、どこかで見た記憶がと思ったら
以前私が住んでいた場所のすぐ裏のアパートにいた婆さんだった

「あら、Y姐さん、しばらくぶりでした」

顔を見合わせて挨拶をしたら

『あんたこんなとこに引っ越しをしてたのかい』と驚いていた

私も彼女がアパートの立ち退きで遠くに行くと聞いてたので
全く予期もしていなかった再会だった

しばらくはそういう事もあり
たまに顔を合わせる程度だったのだが
どうも変な違和感を感じる表情を見せる時があった
なんだろうと思っていた

【なんかね、あの新しい人のとこにヤミデラが出入りしてるらしいのさ】

私達の地域の情報通こと、K婆ちゃんが言った

【どうもあのヤミデラが出入りしてて、あんたの悪口を言ってるみたいよ】


さもありなん


そらぁ憎いだろよwwwwww
色ボケ爺さんを騙して
息子達と確執させて
ウマウマ金を搾り取ろうとしてたのに
いきなり邪魔したんだもん

そらそうですよねーwwwww
忘れるわけがない

で、タツ爺さんが冷たくなるたびに私のせいですかそうですか

やってられないわ

頭の中で山口百恵がはすに構える


話はこうだ

ヤミデラ婆さんはY姐さんのところへ足しげく通いだす

手にはおかずや手作りのおはぎなど
そしてしつこいまでの電話
そして周囲の悪口、信用するな あいつらは泥棒だ
あいつは詐欺をしてるようだ 等々
この辺のヤミデラメソッドの変更はないようだ

全く自己紹介乙としか言えない

だが、Y姐さんは一筋縄ではいかなかった

Y姐さんは持病を抱えているので深夜まで起きてられない
強い薬を飲んで寝ているのでヤミデラの深夜コールに付き合えない

そして人の手作りのものが苦手で
どうしても受け付けないと言う
そういう人はままいるので不思議でもないはずなのだが

その上での理由の拒否に焦ったヤミデラ婆は

これはきっとあいつが何かしてるに違いない と思い込んだ

そしてタツ爺さんの夕飯後の時間に
Y姐さん宅に今まで以上に通うようになった

そしてどんどんY姐さんが疲弊して行く

妄想とメンヘラをこじらせた80歳に
何をしたって無駄だよなぁと思いつつ

Y姐さんに近寄ってる理由を考える

そこで思い当たったのがY姐さんのボーイフレンドO爺さんだった

O爺さんは私の昔からの知り合いの一人で
彼はコインや切手の収集業者などをしていた
正直、もうほとんど価値のあるものなどは
お店を畳んでしまってからは持っていない状態で
お店が災害にあい 年も年だしと言う事で店をやめて

『いまはその日暮らしなんだよ』

彼がY姐さんと仲良しになってたとは知らなかったが
彼は足しげくY姐さんのところへ通い 夜は帰って行く
たぶんその彼の元の職業のせいで
ヤミデラ婆さんに目をつけられたのではないだろうか

何故か深夜に
O爺さんのアパートの近くで
ヤミデラ婆の車を見かける事があった

ヤミデラの家とは真逆の方向で
とってもそんなとこに用事があるとは思えない場所だ

O爺さんに聞くと
深夜にいきなりチャイムが何度もしつこく鳴ったので
怖くなって警察を呼んだと言う話だった

その辺はさすが元の職業柄しっかりしている

Y姐さんも
昔から知っていた私の悪口を
ヤミデラから聞かされていても
一概に信用できない部分があった

そしてやたらにヤミデラが
O爺さんの事を聞いてくるのが気になっていた

そして私同様に悪口を言われていたK婆に
思い切って相談したようだった

そして私が考えるヤミデラの行動の理由を
Y姐さんに言うと

「やたらに私に言うのよ今日はO爺さんはこないのかと」

今帰ったと言うと

「ああ、じゃ、今行けば会えるね」と言ったそうだ

会える? ドコで? O爺の家で?

Y姐さんはその一言が凄く気にかかっていて
以前から深夜に鳴らされるチャイムや
O爺に非通知でかかってくる電話は
ヤミデラの仕業じゃないかと薄々気づき始めていた

後はもう答え合わせは簡単な事だった

K婆に対してのいわれのない誹謗中傷や
反対にY姐に対しての誹謗中傷が答えあわせされた

そして元店子で今は別の家に住んでいるS婆に
K婆さんは助けを求めた

S婆もこちらに住んでいる間に
ヤミデラには散々煮え湯を飲まされ
半ば追い出されるように借家を離れた

それなのに何故かタツ爺しか知らないハズの
転居先にヤミデラがうろうろしているのを見ていた

S婆さんはすぐに
ヤミデラから電話攻撃にあってるM婆とL婆二人を引き連れ
K婆さん、Y姐さんの元へやってきた

そして最新版のヤミデラのでっちあげニュースを聞いて
二人がブチ切れたと言うのが今回の発端になった

K婆さん、Y姐さん 二人への誹謗中傷は
ちょっとかけない程の酷さで
よくもまぁそこまで悪しざまに言えるなぁと思う程の酷さだった

そしてそのまま煮詰まった婆さんズが
怒りを結成理由に固まったのだから大騒ぎになった

K婆がいつもヤミデラのいるという話の
カラオケに行こうと言い出し
我も我もと婆様が参加することになった

総勢 6名 

おいおい、こんな人数でどうするつもりだ(汗)
討ち入りにはまだまだ季節的に早いぞ

だが、真面目を生業に生きてきたようなY姐や
気の強さとヤミデラへの怒りでバーサーカー化したK婆には
到底聞いてもらえない雰囲気だった

各自をタクシーで拾い、皆で行くぞと意気込んでいたが

K婆さんが何故か
私とタツ爺さんの息子も足そうと言い出した

これで8名である


タツ爺さんの息子さんは電話に出ず
使えない奴だと諦められた
(そんな奴だな兄ちゃんは)

そして出発の予定時間の
わずか30分前に私に招集がかかった

つくづく電話に出なければよかった・・・

朝の不穏な電話があった故に
心配だったのでついつい出てしまった

K婆の話を聞いて
私はあまりのヤバさに
少ない脳味噌を回転させ
なんとか回避案をひねり出した

そんなにタクシーを並べて行ってもしょうがあるまい
店も小さく しかも常連は多い
たぶん全員入るのは至難の業だし
何よりもいきなり店におしかけるような行為をしては
真面目に営業されている店主さんにも申し訳がないだろう

ここはまずは先鋒として2~3名が行き
顔をつなぐか、どういう空気なのか確認して
その上で店がはけてから話しかけてはどうかと

話さないまでも私達が店に行けば
彼女はさぞかしやりずらいだろうと

カチこむ気満々だったK婆Y姐は難色を示したが
他の数人は電話での説明でそれで納得してくれたようで
後日の情報収集のためにも
つながりがばれないほうが良いだろうと
自宅待機を申し出てくれた

O爺さんも男が行くとこじれかねないので
控えて行かないと言う事になった

すぐにタクシーが呼ばれ
K婆・Y姐・私の三人が乗り込んだ


もうすっかり雪は溶けて
春が近いのか沿道の猫柳の芽がふくらんでいた


「どこかお友達三人でおでかけですか?」

タクシー運転手さんがにこやかに言った



「ええ。女子会なんです」

私は【こんな女子会は嫌だ】と言うハッシュタグを想像しながら
すましてカラオケの店の名前を告げた




【後編へ続く】

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