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ゾンビ婆に噛まれた俺は異世界で賢者してきたんだけど話聞く? ー死闘前編ー


新しい警察署は新築の匂いがまだしていた

夜も夜 さてどうなるのか

たぶんこれから先は結構大変だろうなぁと
他人事のように考える

いや実際他人事だったんだけどな

いずれにせよ、面倒なのは面倒だろう


携帯を取り出し友人へ電話する


「あー、ちょっとトラブルに巻き込まれて
 これから取り調べ IN 新築の警察署です」


『えっ、大丈夫なんすか!どしたの!』


「面白そうなんでtweetしておいて」


『わかった!』    即答かよwwww

何と不謹慎な!と 言われそうな・・・


けれど、ほんとに他人事だったんだ 

そう ほんとに


噛まれた腕が痛い タイヤで踏まれた足の指先も痛い
親指を突っ込まれた右目も痛い 


痛い場所だらけだ


呼ばれて行った先は小さな事情聴取の部屋だった



さぁ、ショータイムの幕開けだ


不謹慎な程の笑顔で私は部屋に入って行った


=================================


以前から土地を借りたりビジネスの付き合いのお爺ちゃんがいる
早くに奥さんを亡くして長く独り暮らしだが
社交的で明るく友人も多く、息子さんもすぐ近くに住んでいるので
独居老人という趣は一切感じなかった

かれこれ2年にちょっと満たないくらい前だろうか
彼のところに通ってくるお婆ちゃんがいた
お婆ちゃんと呼ぶには、いや、たしかに年配なのだが
なんというか艶めかしい 
枯れたと言われる年代、80前にはない妙な色気のある人だった

そのうちにその彼女が どんどん私達の間に干渉しだした


『俺は来ないでくれって言ったんだけどな』


まぁ、そうでしょうね

『世間体もあるからね、僕だってね』


お爺ちゃんと私はビジネスの関係の間柄だ
だが、ほぼ家族付き合いに近く、色々と相談も受けていた
他の件のトラブルでは書類の作成を手伝ったり
裁判所やその他の手続のために
彼の息子さんと二人で役所を周ったりしたせいか
かなり信頼はされていたと思う

そのせいもあってか、

お爺ちゃんが相談してくるのは別に気にもしていなかった


『彼女の絡みのせいで親戚や自分の子供ともうまく行ってない』


そういうことをお爺ちゃんがぽつぽつと言い出したのは
半年ほど前の事だったろうか


彼女とは趣味の社交ダンスで知り合ったそうだ
社交ダンスの会に来ていた彼女が次に来た際には
お爺ちゃんのビジネスの名刺を持ってきたらしい
以前どこかで会った人

そういうきっかけで仲良くなったが
いつの間にか一緒に会に行くようになり

で、どんどん近づいてきて
いつの間にか家まで把握していたそうだ


『最初さ、うちの近くの駐車場で待ってたの』

『この辺じゃないかなって思って、、って』

【お爺ちゃんもひとりで寂しいんですもんね】

【私も一人で寂しいの】


で、彼の自宅で一緒に夕飯をとるようになった

ところが、、、どんどん彼女の干渉が色んな方面へ多くなり
辟易しては何度ももう来るなと大喧嘩を繰り返したが
そのたびに壁に書かれたお爺ちゃんの関係先へ
彼の愚痴や悪口などおかまいなしに勝手に電話してしまうので
渋々付き合いは続いてしまった


実際、私のところにも何度か彼女から唐突な電話が来た
挙句に教えてもいない自宅に来たりされた

夜10時過ぎの自宅にいきなりの訪問は
誰だって面食らうだろう

「何の御用ですか?」いぶかしげな顔で対応する私に

彼女はこう告げた

貴方がビジネスの関係でお爺さんの代わりに電話を受けたそうだが
お爺さんに報告したその内容を教えてもらえないので私に聞きたい

「ご冗談でしょう」

いくら親しい人間であっても、他人や家族にビジネスの内容は言えない
ましてや他人の彼女には

「彼とは守秘の約束も正式に取り交わしておりますし、その上での付き合いです
それでもし、彼とのビジネスがダメになったらどうしてくださいますか?
申し訳ありませんが、そのような事はできませんし、言えません」

ドアを閉めかけ、帰るように促すと彼女はこう言い放った

【私がそんなことはさせないわ 絶対に!】

いや、アナタ、そんな権限全くないから(汗)

まーったくないから


ましてやお爺ちゃんはビジネスに関してはシビアだ
そんな私情は挟まない人だからこそ彼女には話さなかったと思う

とにかくお帰りをと促すと彼女はこう言った

【この事はお爺ちゃんには言わないでね 絶対ね】

それだけを言うと
私の返事も待たずにさっさと帰ってしまった
約束などしてもいないのに(苦笑)

やれやれ、面倒臭い人だなあと思いはしたが、
そんな不思議ちゃんにかまってもいられないので
明日も早いし、寝ようと布団に入った


携帯が鳴った

え 誰から??

電話口の声は彼女だった

【已寺(仮名)です、さっきはごめんなさいね】


ぁぁ、ヤミデラさんか・・・と思った瞬間
ある事に気づいた


あれ?なんでこの人私の携帯知ってんだ??


「あの、私の携帯どこでご存じに?」

【以前お野菜のお持ち帰りの看板に書いてあったから】


いやいやいやいや、その看板、
考え直して 20分程度で回収してる筈だし!


【悪いとは思ったけど、お爺ちゃんのカレンダーにも・・・】


あー、たぶんそっちが本当だろうな(汗)

彼女の電話は長く、そして話が何度もループする

要約すれば【話の内容を教えろ】 だ


ああ、私はこの手の女性を知ってる
自分の納得する結果が出るまで粘る口だ

これはあかんわ、、、

必要最低の質問だけして答えを引き出そうとする

が、ガンとして応じない 


ダヨネー ソウイウヒトダヨネー


「とにかく、話の内容は教えません 教えれません
本人(爺様)から聞いてください

いいですか?已寺さん、私もあなたも他人なんです

彼のビジネスは彼だけのものです
たとえ身内の奥さん、息子さん、ご兄弟だったとしても
彼の同意なしで開示は求められません ご了承を


【もうね、なんで?】

他人と言われて彼女はあからさまに激昂した

【みんな貴方に依存してる!おかしいわよ!】


お前が言うなお前がwwwww


【アンタのことなんかみんな悪口言ってんだから】

あーはいはいw

みんな~って言ってるわよってのは 
あたしがそう言いたいの!の変換だよね

ぷりぷりと怒ってほぼ叩き切るように電話を切られたが
最後の〆には【あの言葉】を添えてきた


【この事はお爺ちゃんには言わないでね 絶対ね】


うん、はいはい でもね返事してない してなんかやらねぇ *smile*


そして彼女とは一切約束してないから
次の日、お爺ちゃんに一切合切 

すーべーて全部話した


『そうか、、、すまなかったな』

いやいや、すまないの前に、あの女性なんなんですか(汗)


『彼女はね、、、ダンスのお友達でね…』


なんでお友達が、、、あなたのビジネスにまで口出してんですか(汗)


「お爺ちゃんと私の仲なんで聞きますよ?」と前置きして


「あの人、なんなんですか?身体のお付き合いでもあるんですか?」

「再婚する約束でもなさってるんですか?
なんかすごく偉そうにされたんですが」



お爺ちゃんはいやいやいやいや、と手を振って
僕は糖尿だから!!糖尿だから!!!と顔を真っ赤にして答えた


「なんぼ糖尿でもおっぱい触るとか
将来を誓い合ったとかそういう関係でもなきゃ
あそこまで自信持って思うままに振舞いませんわ(汗)」


「隠してるんじゃないですか?」


ふるふるふるとお菓子やの前のペコちゃん人形のように
お爺ちゃんは首をぶんぶんと横に振った


「そこまで否定するなら信じますけどね、、 
あっちはあれ誤解してますよ」



『そうなんだろうか そこまでの女じゃない気が…』


「甘い」

食い気味に答える


『甘いか?』



「ええ、お爺ちゃんのオシッコ並みに甘いですわ」


暗い顔の老人を脅すのは可哀そうだが
あの女性は何かやばい気がした



「いいですか、今は法律が変わって籍を入れてなくても内縁でOKなんです」

「しかも、2年も通わせてしまったら、
あと1年程度も通えば実績扱いになりかねませんよ」


『いや、彼女、ちゃんと夜は自分の家に帰るよ』


「一緒の家に住んでない夫婦も存在するんですけどね」

「彼女とは、今後どうしたいんですか?結婚したいとか思ってるの?」
「そうならそうでそのように扱いますが・・・」

『いやいやいや、ダンスの仲間だから!友達だから!全くそんな気ないから』


「じゃ、そのように扱いますよ」


うんうんとうなづくお爺ちゃんの姿に
心無しか違和感を感じた


あれ、こんなに押されやすい人だっけ??


『あれでもねぇ、根は良い女なんだよ』

何故か寂し気にお爺ちゃんが言う

根が悪い女ならそもそも付き合わんでしょうが(汗


『ごはん作ってきてくれたりしてねぇ』

そら、そんくらいは誰でもしますよ 友達なら


『息子たちはあんだけしてくれてる彼女にありがとうも何も言わなくてね』
『この爺さんにあれだけやってくれてるのに、感謝すら…』


…ん? 

あれ? お爺ちゃん、割と以前から食事、自分でマメに作ってましたよね?
ここの掃除ってしてもらってるんですか?

『いや、ここは僕が掃除してるよ 他人の掃除は苦手で』

ですよね?

既に奥さんが亡くなって20年近くなる
だが彼はいつも身ぎれいにし、部屋も綺麗にしているし
自分が漬けたという漬物も振舞ってくれたりするタイプだ

以前、病気にかかり身体が不自由になった際ならまだしも
身体の自由を取り戻した今は家政婦すら頼んでいない


食費は?

『いやー、夜1食だけだし、それでも悪いから◎円まとめて払ってあげた』

んん???

『ダンスの会もあってから一度も払わせてないよ 僕が払ってあげてるの』

『それなのに息子たちはねぇ、、挨拶も、、、』


ちょ、まって

友達ですよね? ダンスの付き合いだけの 友達


『うん、友達だよ』


その息子さんらが挨拶しない云々は彼女が?


『うんうん、下の息子の嫁がね、、特に睨むって言われてねぇ』


え めっちゃいい人なんだけどなお嫁さん



『上の息子はほら、鬱で前の仕事辞めたのもあって、
独身で引きこもってるのもあって彼女が世話を焼きたがってるんだが、
息子があまり来ないでくれって言うんで 彼女には行くなと言ってるんだ』


・・・? なんで彼女が上の息子さんのとこに??


ちょっと整理して・・・


うーん、、、、、

付き合ってないんですよね?結婚も予定ではなくて

『そうよ 友達だから』


彼女の家で御飯とかしてないですよね?


『そうね 僕の家ばかり』

『作って来なくていいよって言ってるんだけどね』

『最近は面倒なのか買ったお惣菜並べてたりするんだけどね』


・・・おかしくないですか?

『ええっ、なんで???買ったお惣菜だから??』


いえいえ、そこじゃなくて、、、

「え、だって、再婚してお世話になる間柄ならまだしも

ただの仲良しのお友達でしょ?」


「しかも お食事も作らなくていいよって何度も言ったんですよね」


「しかも食費も渡してある」

「なのに、なんで息子さんらが彼女に挨拶しなきゃダメなんですか?」


「それをしろと言うなら、
彼女の子供さんも【うちの母がお世話に…】って
するべきじゃないかと思うんですが」


『あ』


「ましてや、彼女だって若く見せてても80前ですよ」

「仲良くご飯食べてて、、、ウウッ!ってあったら!!」

胸を掴んで倒れるフリをしてお爺ちゃんの顔を見る


「どこに連絡したら!って思いませんか?」

『・・・そうだよね』


うんうん 彼女がそう言うなら そうした方が良いのでは?

お互い様なんだから



挨拶しろや って言うなら 
そっちも挨拶しろよと(笑)



お爺ちゃんは「もし何かあった場合」の言葉に
深くうなづいていた


数か月前になるが

お爺ちゃんが所有しているマンションで
知人が亡くなったばかりだった

前日まですごく元気だったのに
まだ60歳の若さだったのに 急にだ

お爺ちゃんはその事があってから真剣に終活を考え
土地や家屋の財産の処分を始めていた

息子さん2人に迷惑がかからないように


「彼女が息子さん達にも勝手に電話するなら
聞いても失礼ではないのでは?」

『そうだね、聞いてみるよ』

ま、教えるかはカケのようなものだと思ったのだが


お爺ちゃんと向き合ったテーブルの隅に
土地売買の書類が見えた


「また、その辺にそんな書類置いて(怒)」


彼は年配なのでわからなくならないよう
大事な書類は手元になんでも置いてしまう


大きな商取引の書類を無造作に置いたら・・・

『ああ、こないだ言ってくれた業者であの土地無事に売れたよ』

そうでしたか 良かったですね
なまじ立地が良く面積も大きいので価格が高く
なかなか売却にならなかった土地だ

『あの大手に頼んでても全然売れなかったからねぇ』

売れなきゃ、固定資産税かかるだけですしね
税率が大きく変わるっていう話でしたし、いい機会だったのでは?


『ホント勘弁だよねぇ』


売れて良かった良かったと言いつつ彼は変な事を口にした


『已寺さんにさぁ、

カナコの紹介じゃダメだって何度も言われてね』


ああ、彼女私を目の敵にしてますから(笑)
でも、紹介したすぐに即売れで良かったじゃないですか


『そうなんだよね、言い値で売れたしね!』

『…でも私ならもっと高く売ったって責められてねぇ』


待って、、もっと高くって、、、


 なんで彼女が売却価格知ってるの?


『こないだここに置いてた書類を見られちゃってねぇ』


まってwwwww


建売が4件楽に立つような広さの土地の
そんなケタの金額【友達】に見られちゃダメでしょ(大汗)

何してんのwwwww


『あの人さぁ、なんでもこの辺り見るんだよね 黙って』


『僕の誕生日教えてないのにあそこに置いた免許証から覚えちゃってね』


『誕生日だから一緒にどこかに外食にーって、お寿司食べに行ってね』

『私、着るものとか旦那(故人)に買ってもらった事ないわぁって言うんで』

『亡くなった妻の洋服とか見せたら、喜んじゃってねぇ』


『あら、こんなのいいわぁって アクセサリーとかねぇ、貰ってくれてねぇ』


え え え?


『バッグもどうせ使わないんでしょう~ワタシ使わせて~って』

『今彼女が持ってるのうちの亡くなった奥さんのなんだよね』


はい???


『で、どうせ処分するならーって着物とかもね』

『うちの奥さん、ほらお茶とかお華やってたんで着物いっぱいあってね』


マテマテマテマテ マテマテマテ


『うちの旦那にはそんなの買ってもらった事ないから羨ましいわぁって』

『いい着物だわあって興奮して喜んだんでバッグとか草履もね』


おーーーーーーーーーーーーーーい 

待てwwwwww


アクセって、、、?


『ああ、亡くなった妻のね、真珠をいいわぁって持って行って 後指輪とかそういうのだよ』

『だってどうせ誰もつけないならねって私がタッちゃん(爺さんの事・仮名)に見せてあげるって』


待てってばwwwwwww

処理がついていかんwwww


『いつもね、喧嘩すごくするんだよ もう来るなって何度も』
『で、喧嘩したら気まずいでしょ?だから良い友達に戻って、って事で色々ね』
『あげたらしばらくは私もごめんねぇって言うからもういいよって』
『でもまた家に来ちゃって帰らないんだよね』

『で、また喧嘩さ』

最近はもう喧嘩ばかりなのでねと

力なく笑うお爺ちゃん

これはあかん案件や



「猫をね」

私が切り出す

『猫?』

「ええ、猫 野良猫 寄せて餌をやったらやった人が飼い主です」

『・・・?』

「だからね、お爺ちゃん、あのさぁ、寄せておいてそんだけ餌やったらそら居つきますわ」

『あー・・・でも私は帰ってくれ、帰ってくれって何度も言ってるんだよ』

お爺ちゃんは珍しく泣きそうな顔で答えた

野良猫に餌をやりすぎる年寄りの構図


そらぁ居ついて帰りませんわ(大汗)


「とにかくお互いの安心のために 
家族に電話しなくても番号は教えあっておいたほうが」


その押しの一言が

その後、 彼女に対し盛大にイエスマンだったお爺ちゃんの心に
不信の芽が小さく芽吹くきっかけの1つになった


=================================

最近婆ちゃんの姿見なくなったね
車も止まってないし、来てないっぽいね

そんな話を近くのおばさんらとした

どうも何かあって、お爺ちゃんの家には来なくなったらしい


でも完全に来ないのではなく、
何だかんだと理屈をつけてきてるようだが


『あのね、、もうねワクチン2回したんで、もうダンスで会おうって事にしたの』

仕事の兼ね合いでお爺ちゃんの家に行った時
彼はそんな説明をしてくれた

ああ、お年寄りはもう既に2回ワクチンをうちましたものね


『うん、それでダンスフロアも開いたしね』


店で会うほうがいいでしょうね 今後を思えば

『。。。それにね、やっぱり電話、全然教えてくれなくてね』


相手のお婆ちゃんの息子さん、もしくは娘さんの連絡先を
お互い交換しておこうよと話したそうだ

けれど彼女はガンとして受け付けず、
全く教えないどころか怒り出したそうだ


あー、やっぱりそうなんでしょうねぇ


『なんか僕には全く何も教えてくれなくて』

なんかお爺ちゃん、日陰の身みたいで
健全なお付き合いしてないみたいでいやですね それ


『うんうん・・・やはり信用されてないのかな』


お爺ちゃんは少しだけ寂しそうだった


『ああ、そうだカナコちゃん、僕ね、あの◎◎の土地のね・・・』


あ、はい あの土地の変更の件でしたら手配は終わってますが
一応念のため、息子さんのほうにご連絡行くようにしてあります


『そうか ありがとうね』


書類も作成してお兄ちゃん(上の息子さん)に渡してありますので大丈夫ですよ
たぶん今週中にはお返事が来ますから安心して下さい


『うん、わかったよ 頼むね』

やれやれ、なんとかなりそうだな

まだなんだかんだと通ってきてるようだが
これでなんとか形はつくだろう

あとは少しづつ距離を測れば・・・

笑顔のお爺ちゃんにほっとしてしばらく来れない事を伝えた
夏は本業が忙しすぎてそれどころではない

寂しそうな顔はしていたが、正直、彼ばかりを構うわけにもいかない

そこは長男の息子さんに頑張って貰おう


=================================

数日後

相変わらず婆さんの姿を見かけたという話は聞いていた
やはり一筋縄ではいかぬのだろう
でも回数が減ったのは良い事だ 

私はそう信じていた



あの日、午前中の仕事を終えて
家に戻ったのは2時少し前だったと思う

自宅に帰り、猫達の世話を終えて
さぁ着替えるかと言うところでチャイムが鳴った

ちょっと私の手が空いてないからと
旦那が出てくれたのだが

慌てて戻って来た


「なんだかわかんないけど、お母さんいるか?って聞いてる」

え、誰??


「なんか知らないおじさん、お母さんに代わってくれって」


は?

慌てて外に行くと
そこには涙目になったお兄ちゃん(お爺ちゃんの長男さん)がいた


え、どうしたの??


『おかあちゃんよ、俺悔しいよ』


え、え?待って、何があったの??


『アイツだよ、アイツ 已寺!アイツが昨日俺の家に来たんだ』


お兄ちゃんの家はお爺ちゃんのすぐ近くにある

だが、心の病気で気分が上がり下がりして混乱するため
必要最低限の事以外は私も行かないように言われている

ましてや已寺さん、あの婆さんは絶対に電話も訪問もするなと
お爺ちゃんから何度も何度も釘を刺されている


『俺さ、何度も帰ってくれ帰ってくれって言ったんだよ』

『なのにアイツ、私に話すまでは帰らないって言って俺を責めるんだ』

あの女は何を教えてくれって言うの?


『あの土地だよ この前電話がきたあの土地アレの話を聞きたいって』


え、あれはお爺ちゃんの代理でお兄ちゃんが受けるって
そういう段取りだったでしょう

『そう!!そうなんだよ!!だから話さないから帰れって言っても全然聞かなくて』


お兄ちゃんはかなり興奮している

ああ、これは病状に一番良くない

『おやじに言ったらおれはちゃんと言ったって言われて』


『俺もう、嫌だ、あいつを殺す 
もうなんでこんなにぐちゃぐちゃにされなくちゃいけないんだ』


『俺は知らない、もうやめてくれって言ってるのに何度も何度もしつこくて
俺の胸掴んで離さなくて 殴ろうかと思ったけど、ババアだし、でも帰らなくて』


『俺は精神病だから、鬱だから手帳あるから、もうあいつを止めるには俺がやるしかないって』

おおおおおおおおおおおおーーーーーおおおいいいいいいいい

やめて ほんとにやめて まじで まじでー!!


意味の分かりずらい事を延々と話すお兄ちゃん

これはまずい 本気でまずい


ヤミデラさんがしつこいのは良く分かっている

これはかなりまずい事になった

そうだ

「お爺ちゃんにその事は言った?言わなかった?」

大きな声でゆっくりと、お兄ちゃんの肩を抑えながら話す

「ちゃんとその話をした?以前から来ないでって言ってあった筈だよね」


『あいつ、最近俺のとこばかりくるんだ』


あー、ターゲット変えやがったな

病気の兼ね合いで季節の変わり目とかには
精神がかなり落ち着かなくなることもあり
お兄ちゃんを責めれば言うことを聞くだろうと思ったのだろう


『おやじには今朝話した』

そっか、よし よくいった


『あいつに対してすごく怒ってた』

そらそうだよ わしだって怒るよ


『なんで俺が なんであんな知らん奴に なんで、なんで、なんで』


お兄ちゃんの肩を抱いてぽんぽんとなだめる
盛り上がった理不尽への感情がどうしていいのかわからなくなって
いい年の男の目が涙でじゃばじゃばになっている

鬱の人にそんなこと一番しちゃいかん奴じゃないか


「いいか、兄ちゃんはちゃんとしてるんだ彼女が悪い」

「当たり前だよ 兄ちゃんはお父さんの仕事を守ってるんだ」

「彼女は関与していいわけがない 兄ちゃんは正しいんだ」


背中を叩き、息をちゃんと吸え 話す前にゆっくり呼吸しろ
そういうと彼はやっと泣き止んだ

『ごめん』

落ち着いたか?

『うん』

そか よかったな

『家に帰るわ』

うん、 なんかあれば電話してくれな

『うん』


複雑な気持ちでお兄ちゃんを見送って戻ったら、
玄関に旦那が携帯を持って立っていた


「どした?」

なんか携帯に何度も電話が来たみたい
そう言って彼は携帯を渡してくれた


「なんかお兄ちゃん、例のババアの事でやられて
精神的にあかんになってたみたい」


可哀想にな・・・そう話しつつ携帯を見ると
お爺ちゃんからの着信が数件入っていた


「! なんかあったんかな」


すぐに行ったほうが良いという旦那の言葉に甘え


「悪い、すまんけど行ってくるわ」


携帯と家の鍵だけを持ったままで爺ちゃんの家へ行った

それが今日、旦那に会う最後とも知らずに



「カナコですけど!呼びましたか?」


『ああ、カナコちゃん、すまんね』


見ると兄ちゃんもそこに座っていた
また興奮しては切りがないので
席を外すように伝え、一旦家に戻って貰った


『困ったね』

それはこっちの話ですよ


『うん、、すまないね』

お兄ちゃんがうちに来た事や
ヤミデラさんのせいでしつこくされて
精神的にさらに変になっている事や
どう考えても

彼女の関与は度が過ぎているんじゃないかと言う話を伝えた


『実はそのことで』


お爺ちゃんはその事でヤミデラとまた喧嘩をし、
あれ程言ったのにお兄ちゃんを責めた事を問い詰めたらしい
けれど相変わらずの状況で


『あの女はダメだ どうせまた来る』

今までにない程かなり怒ってる様子を見せた

うーん、、、、

これは二人とも引導を渡さないとダメなのかもしれない

正座しなおし、お爺ちゃんの顔を真っ直ぐ見


「いいですか」と但しをつけて話をした


まずは今は私とお爺ちゃんだけなので
二人の関係について本当の事を話して下さいと言う


「身体の関係はあったんですよね?」と


そうするとお爺ちゃんは小さく『ウン』と答えた


ただ、本当に糖尿患者であって性行為はしていないが


家にやってきた彼女が

【ああ、肩がこるの 下着が安いせいかしら】 と

ブラジャーの紐をいじって見せたそうだ

【奥さんは安い下着なんか着なかったんでしょう?】


奥さんは胸が小さい人だったのと和服を着る人だったので
僕はブラジャーなんてものを見た事がないんだよと
笑って冗談で流したら、、、


彼女はブラウスをはだけてブラジャーを見せ

【ほら、こんなになってるの、触っていいわよ】

彼の手を持って行ったそうだ

そして2回目は

亡くなった奥さんのブラウスを分けて欲しいと言われて
家の寝室の箪笥から出そうとしたら

【どんなのがあるか見せて頂戴】

と入り込んできて


【あら、こんなに素敵なのがあるのね】 と言ったと思ったら


すっとベッドに横たわり

ブラウスを脱ぎ棄てて 

【裸で帰すわけにはいかないでしょう】

と言って胸やお尻を触らせた と


『ほんとにその2回だけだよ 僕もそういうのはダメだと思ったし』


思ったし?


『それにあとから喧嘩した際に 親類とかに言いますよって言われたから』

言いますよって?

自分から爺さん誘って置いて? やられそうになったのぉーって?

『うん、それを何度も繰り返したら友達になれないと思って』


はい、ありがとうございました

お爺ちゃん、あなたそれ


立派なハニトラですよwwwwwww


ハニートラップwwwwwwww


なにしてますのんwwww


笑いたくなるのをこらえて


「で、前にお金10万だか渡したってのは聞きましたけど、どうせそれ以上なんでしょ?」


『うん、10万づつ3回かな 最後が◎月X日で 日記に書いてある』


「はい じゃ日記出して」

『ええっ』

「じゃ、もうこの縁はなかったことに」

立ち上がろうとする


『出すよ カナコちゃんならいいよ』

お爺ちゃんは速攻で日記を持ってきた

この彼女の名前と数千円の続きは?


『それはダンスの会のお金ね 僕が払ってる』


ああ、なるほど

で、これがその3回渡した30万円ね


『そう』


他にあげたものはない?


『家内の洋服とか、、着物?』

バッグもあげたって言いましたよね?もう全部言ってもいいんじゃないですか

『ああ、うん、あと勝手に部屋についてきてアクセサリーも・・・』

どんなのですか?


『指輪とか、、宝石?ネックレスをあげたら偽物だって言われてね…』

あれ、奥さんのもので偽物って珍しいですね


『そうなんだよ 高かったはずなんだけど、で、どうせならって鑑定してもらいに』


はい?


『あの大きな公園のとこの宝石屋に行って鑑定してもらおうって彼女が言って』


で、鑑定されたと   偽でした?


『うん、残念だけど偽だって言われてね で、その場でこれいいわねって』

マテ  その場でコレって、、、まさか?

『ウン、 5万の本真珠のネックレスを買ってあげた』


うぉおおおおおおおい  

何してんだよwwwじいさんwwwww


『他の真珠は大きい粒で本物だって言われてそのまま持って行った』


・・・・


『なんかそういうの上手いんだよね』


・・・・


『で、前に、あの量販店あるじゃない?デパートみたいな』

ああ、ありますね


『あそこの1階に花やさんがあるって聞いてね』

ああ、ありますね


『いつも旦那さんの仏壇の花をそこで買ってるから付き合ってって言われて』

すごく嫌な感じがしますね(苦笑)

だってあそこ、真横あれでしょアレ


『そう、そこで花見ないで、横にここにも宝石あるのよーって』

はい!きたーこれきたー! 宝石やきたー!!!


『なんか宝石屋って上手いんだよね、彼女にどんどん勧めててね、で』


(ただ呆れている)


『あら、こんなのいいわねぇ、ほしいわねぇって言うんで…』

えーと、それはこの、V月U日の 

「ダイヤ買う」 ですかね


『そう、ダイヤの指輪買ってあげた 』


気のせいですか、これ、、値段、、、14万8000円って読めるんですが


『そう、セールで30万のダイヤが半額だからって・・・』

キャッシュで?

『そう 現金だよ僕はいつも』

・・・・・・・・・


「ひとつ言っていいですか?」

『はい、何を?』

「おい 爺ちゃん、いっぺん殴らせろ」



『ええっ』

「色ボケにも程があるわ 何してますのんよ(怒)」


このコロナ禍の折、もし、死なないまでも
意識不明の重体にでもなって意思表示もできなくなったら


真珠のネックレスは婚約の印で


ダイヤの指輪は結婚の印って言われたら

あんたどないしますのんと


『あ』


でしょー

ばかばかしすぎてなんか声も出ない


でもそれも1ヶ月くらい前に色々言われたのもあって
思い直して、家に来ない事やその他で適切な距離を保つようにしてたと


あげてしまったものはもういいから

もう楽しい思い出だけにしよう 

そう何度も言ったという


「あんなシワシワの乳出すだけで

そんだけ貰えるならそら諦めないわwwwww」


『おい、おい、その事は息子には!!』

見るとお兄ちゃんがこちらに向かってくるのが見えた

あ お兄ちゃんがまた来ましたね

「じゃ、この事はここまでにして・・・どうします?」

『どうしますとは?』


「彼女、ここで切るのは切れるんですが、、、どうしたいです?」


不安そうな息子さんの顔を見てお爺ちゃんは諦めたように言った

『もういいんだよ もう私の制御の範疇を越えた』


「もう来なくなったら寂しくなってまたより戻したりしませんか?」

おやじ!!目を覚ましてくれ!!と騒ぐお兄ちゃんのオデコを物差しで叩く


「あんたちょっと黙ってなさい」

はい とお兄ちゃんは飲み物を飲んでいる

よしよし いい子やw


『前も言ったように僕の範疇を越えたと思う 
もうあげたものはいいから 

もう僕のビジネスや家族には触れて欲しくない』



「再確認ですよ 彼女とは婚約の意志もなにもないですね?」

『請われたので色々あげたり買ってあげたけれど、そういう制約ではない』


わかりました

「じゃ、昨日のことに関して彼女に電話して引導渡してください もう来るなと」


『聞かないと思うよ』

「聞く聞かないではなくて意思表示が大事なんです」

「はっきり言った経験あるないは違ってきますから」


『ちょっとそのへんは・・・カナコちゃんが僕の代理として言ってくれないか?』


「ぇー恨まれるの嫌ですよ」

お兄ちゃんもそれがいいそれがいいというので

またオデコを物差しで叩く

「うるさい 黙っとけ」

はい とお兄ちゃんは小さくなっている


「じゃ、納得するとしないとにかかわらず、電話だけはします」

簡単な委任状を書いてお爺ちゃんに手渡す
頼んでもいないのに

お兄ちゃんが証人として署名している


「さて、私からの電話に出るかな」

ヤミデラさんと書かれた電話番号に電話をかける
以前彼女が私の携帯にかけてきたのを保存してあったものだ


意外や意外にも彼女は3コール程で電話に出た


【はい、ヤミデラですが?】


「ああ ご無沙汰しています、お爺ちゃんのところのカナコです」

「覚えておられますよね?」


【ええ で 何か用なんですか】


おやおや、何かお急ぎですね(笑)


「今お電話大丈夫ですか?」

【何なのよ】

おやおや(笑)


「実は昨日、あなたがお兄ちゃんのところに行ったことに
お爺ちゃんがかなりお怒りでしてね

何度言ってもお約束が出来ないようだし

もうお友達としてもやっていけないと」


【嘘よ! 私はお兄ちゃんのとこなんか行ってないわ 嘘ばっかりよ】


実はお兄ちゃんの隣人さんには証言を貰っている
夜に彼女が来て揉めていたと話を聞いている


【だいたいね、お兄ちゃんは嘘ばっかり言うの お父さんと私をね…】


「あー、えーとですね、お爺さんから 委託されたのでお伝えします

同じ女性で顔見知りなのでそのほうがダメージ少ないだろうと


お爺さんはもう二度と家に来ないでほしいと言ってます
再三にわたってお願いしてきましたが 何も伝わらないようなので
もうあなたに理解を求めるのをやめるそうです

ただの顔見知りに戻るので今後ダンスなどであっても
ご挨拶はしますが

それまでとお思いくださいとのことです」



【嘘よっ!!!! あんた、あんたが、、

何の権利があって、、、】


「言いましたでしょう、今目の前にお爺さんがいましてね

私、代理を頼まれたのです

あなた、やりすぎたんですよ ご理解ください」


そうだそうだーと叫ぶお兄さんをまた物差しで叩き
黙らせる


【あんたなんかに言われてもね!それにあのお兄ちゃんはズル病で!!!】


「それはあなたが診断することではないですし、専門家ではないでしょう?

それに今後、こちらに勝手においでになった場合には

お爺ちゃんは弁護士をたてて
接見禁止を出してもらうと言っています


警察云々になる前に諦めた方がよろしいかと思いますよ 

今回は本気だそうですから」


【うるさい!あの人は何度も何度も弁護士弁護士っていうのよ!!!】


「もう、宜しいでしょう?十分して頂いたじゃないですか 引き際というものがあるのでは?」


【うるさい、デブ、ブス、おまえなんかに言われたくない、
お前やきもちだろう!!もういい!!お前の話なんか聞かない】


「あーそうですか、でしたら、、、」


あ、切れましたね


再度コールしなおす 出ない またコールする 出ない


お爺さんに出ませんねと言うことで家の電話からコールして、貰うが
たぶん彼女は無視しているようで出ない


ふむ、困りましたね


今後、こう来たらこうしてください 
こう言われたら こうしてくださいのざっくりとした説明をする


その際にお兄ちゃんが

『あいつ、、、おやじの家の

合鍵持ってるかもしれない』

と言い出した


実はそれについては既に数人から
彼女がカギを開けて入っていくのを見たと
証言を貰っていたので打ち合わせをしていた

鍵を預けた事もないが玄関に置いてあるので
持ち出して合鍵を作る可能性は0ではなかった


あの女性ならやりかねないと思う部分もあった


まずはチェーンをしてもらう事と
彼女が来なくなったら即、鍵を取り換えてもらうべきだと話した


お兄ちゃんはそうだよおやじ と珍しく良い仕事をしていた


その時だった

リビングの大きな窓の向こうを見た事のある色の車が通った

やっぱり来たか(笑)

そう思った


お爺ちゃんの家の前は公道とは言え、細い市道で
大きな道と違い用事のない人は通る必要性のない道路だ


その道を彼女の車が通って行った

ゆっくりとこちらを見るように

カフェカーテンで邪魔されて灯りをつけてない中までは見えなかっただろう


「あ、あれはたぶんまた来ますね 

敷地内に入ったら私が対処します」


お兄ちゃんを自分の部屋に戻し、

何かあったら連絡をすると言い含めて戻した


それから約5分


お兄ちゃんが戻ったのを確認するように彼女の車が入ってきて
いつもの場所に停車した


そして彼女は降りてきて黙って玄関を開けた 鍵はかかってない

瞬間、彼女はまたドアを閉め、車に戻って行った

あ 私の靴を見てあいつ戻りやがった


そう思って家から出ていき


車の窓を叩いた

「えーとヤミデラさん
 こんにちは!

来るなって言われてると言いましたよね?」


婆さんは窓を半分だけ開けて怒鳴り散らした

【うるさいブス!

お前に何か用はないんだよ 帰れデブ】


「奇遇ですね、 私もあなたなんかに用無いんですよ 
来ないでって言われたので来ないでくれます?


【うるさい、お前なんかに言われる筋合いない!!】

「困りましたねぇ、じゃお兄さんも呼んで話し合いしますか 嘘なら」


ドアに手をかけると彼女は慌ててカギをかけた

【うるさい デブ!!死ねばいい】

彼女は私に車をぶつけるようにして
思い切りハンドルを切って道路に出て、
一時停止もしないまま逃げて行った


その際に私の左足を軽くタイヤで踏んで


「糞婆ア、危険運転だぞあいつ」


爺さんの家に入って報告し、色々な段取りを進めていたら
爺さんが概算を出して欲しいと日記のコピーを渡してきた


「このほかになにかありましたか?」

『あちらの家を直したのと、ガスボイラーを交換したのと・・・』


総額大体400万くらいか 

あぁ 美味しい商売だねぇ


ただ、車のカーポートをねだられた際には 返事をしなかったと
間の抜けた笑顔で言われたときにはあきれるしかなかった


いや、それもう あかんやつですやん(笑)


では一度戻りますが、きっとまた来ますよあれ と言うと


『来ないと思うよ』 とまだ優しい事を言ってた


いや、あの手は来るよ 絶対に


既にもうお爺さんちに来てから2時間半が過ぎている
あたりは暗くなり出している


家を出て  いつもは向かない方向を何故か向いた


見えずらいが、 大きな車の影に 小さな車が隠れるように止まっていた

エンジンはかかっているが、ライトはついていない


「彼女だな」

瞬間にそう思った


私や兄さんが帰ったら即座に家に入り込み
爺さんをまたどうにかしようと思っていたのだろう


1つ 深呼吸して 思いきり大きな声で近づいて行った


「あらあらあら、こんばんわぁ! ヤミデラエミコさーん!!

どうしたんですか? さっき言いましたよね? くるなーって言われましたよね?」


車はライトもつけないままで急発進してそのまま突っ込んで来た

「うわあぶねぇ」

横に避けるも ちょっともたついたら危険だった

と、思った瞬間 白いバック灯が見えた


「こいつ本気かよ」


バックで突っ込んできて、電柱にぶつかりそうになり
あわてて彼女は前進で逃げて行った


「あっちゃー、、、」


そらぁ憎いだろう

あれだけのお金がある
あれだけの自由があった

もうちょっとでもうちょっとだったのに

おまえのせいで


絶対そう思ってるよなぁwと

慌てて兄さんに電話をし
彼女がもう一回きた事を告げる


『そんなの放置しておけばいいんだよ』

チッ、なんだお前、また物差しで殴るぞw

お爺さんの家に戻り、彼女がまたきた事、
このままでは危ないのでどこかに移動したほうがいいと
伝えると


『そこまでやらない女だよ~』


なんだこの親子は(怒)


一応、カギとチェーンをかけ戸締りし寝てくださいと伝える


「私はこの車庫の影で見てます
たぶん彼女はもう一度来ます

車で道を通る分なら問題はないですが


もし、玄関フードに入ったら
警察呼んでいいですか?」



『うん、わかった、その場合はいいですよ』


言質を貰ったのでそのままお爺ちゃんには家にこもってもらう


万が一、ガソリンでもかけて焼かれても困る

最悪、このまま朝までここかな・・・

うっすらと霧があるのかしとしとと水分で身体が濡れる

5時越えたか・・・

喉渇いたなぁ・・・


何度か彼女の車っぽい車が通過していったが
立ち寄ることはしなかった


確実に彼女だ と判明したのは2回程度だった
が、通過するのみだったのでそのまま見送った

それから10分後

車の音がして、、、今度はお爺ちゃんの家の前の道路で止まった

「やっぱあのやろうきたか!!!」


と、蔭から見ると

 
止まっていたのはババアの車ではなくて
お兄ちゃんがどこからか帰って来たようで
ご機嫌で車の中で電話をしている


あんにゃろぉをwwww 

物差しでぶん殴ってやりてぇwww


兄さんが家の前にいるし、これは来ないかもな

そう思ったがどうせならもう少し待つか 雨は止んでいる

その5分後、、、


『なにすんですかやめてください』


兄さんの声だ


【・・・・・・】聞き取れないがババアの声だ


あいつ、どこかに止めて歩いてきたんだ!!


どうやら兄さんの車のドアを開けて兄さんを責めたらしい


で、兄さんともみ合いになっている

【・・・のよ!なんで・・・】

兄さんは泣き出しそうな声で叫んでいる
『やめてくださいいいーーーー

誰か 誰か助けてくださいー』



しゃーねぇ出るかー

ババアの後ろ側の
離れた場所に車が止まっているのが見えた
エンジンはかかっている


「おい!アンタ! 何べん同じ事言わすんだ 

来るなって言っただろう!」


大声で言うと彼女はお兄ちゃんの袖を放して
小走りで車のほうへ戻ろうとした

それを途中で遮り彼女に向き合って話す


「あのねぇ、あんたさぁ

本人が嫌だって言ってんだもん もうだめでしょ」



【あんたなんかにねぇわかんないのよ!!

アタシとタッちゃんの仲はね!!】


叫んでいる兄さんを無視し、小さな声でババアに告げる


「あのですね そのタッちゃんが話したんですよあなたとの仲を
全部全て 一切合切」


【えっ】


「あなた やりすぎたんですよ そんな シワのめりこんだ乳見せるだけで
宝石だー真珠だー もうたくさんでしょう? 欲かいちゃいけないですよ

お爺ちゃん、もうそれは要らないっていってるんですから 

あとは消えてください」


【うるさいうるさい、

お前なんかに何がわかるの!!】


ああ、この人ダメな人だ



「じゃ、もうお二人の間だけじゃ済まないレベルまで行ってるんで
ご家族交えて話しましょうか 

あなたここを既に何度も歩いてるでしょう 

さっきも通った そうでしょ?」


【おまえ、何の気してるんだストーカーか!!】

わーwストーカーにストーカー言われちゃったよwww


「で、もうそれで納得してくれないならそうするしかないですよね」


【うるさいうるさい!!  

タッちゃーーーーん!! タッちゃーーーん!!!】


うわー叫び出したよ(汗

しょうがないなぁ


「もういい加減にしてください ヤミデラエミコさーん

ヤミデラさーん、もうね、あなた色々バレてんですよ」

そしてババアに小声で言う

「あのね、あなた、自分のお母さんが

知らない爺さんにシワシワおっぱい触らせて

何十万も何百万相当のものもねだってねだって


そんな売春婦みたいなことしてたって言われたら

息子さんどう思うでしょうねぇ

公務員さんだって聞きましたけどね 聞こえ悪くないですか?」



【息子の事をなんでお前が】


と言ったと思ったら


ババアの右手が見事に私の顔に当たっていた


あっ、殴られたわっていう考えと同時に

「あれ、こいつ、人殴るの躊躇しない人なんだな」

とそういうのを考えていた


普通 場慣れしてない人は
どんなに腹が立っても
他人を殴るのは躊躇する


だけど彼女は真っ直ぐに躊躇いもなく私を殴った


「はい!おにーちゃん、警察 電話して」

傍らで見ていただけのお兄ちゃんに指示する

自分の携帯もワンクリで警察にかかるように
ポケットに入れている

ババアの追撃で
右目に親指を入れられたので視界がおかしい


こいつやっぱり素人臭くない 暴力に慣れている


【お前ら頭おかしいわ】


言い垂れてババアは走って車に逃げようとしたが


「はいはい、話し合いしてからね」

と私が車のドアの前に立って邪魔をする


このまま逃げたってどうせ戻ってきて揉める


ならとことんまで揉めたほうがいい

どうせこの人は納得はしない

そう思える


警察が到着するまであと5分?

そこまで逃がさなければなんとか

大声で騒ぐ婆さんだがあまり人は出てこない
私だってそんなの聞こえたら出たくはない

『はい!はい!はい!●条●丁目の!!はい!』


兄ちゃんの声が聞こえる

だが、それ、住所間違えてるぞ(汗


通報だけしたら、後ろからでもババアを抑えてくれればいいのに

お兄ちゃんは電話で手一杯なようだ

『カナコちゃんっ!!カナコちゃんっ!!』


「うるせぇなんだー」


『いまっ、今けいさつくるから!けいさつ!!くるからー!!

頑張れー!!』


うわぁ、、、一番されたくない応援だよ

そしてどんどん自分の車のほうへ戻って行ってしまう 電話しつつ


わーwww泣きたいwwww


なんでわしがこのババアと 絡みあわなあかんねんwwww


【どけ このデブっ!!おまえなんかな!!嫉妬か!!】


わー、おばーちゃんお口わるーいw


「嫉妬ねぇ、嫉妬しますかねぇ? だってそんな身体張って
終戦当時じゃあるまいし、、、、

パンパンみたいな真似しなくても食えますしねぇ


いやいや、ヤミデラさん、あなた
前に◎◎っていう歌声喫茶でも

二人のお爺さん相手に頑張ってたんですってねぇ

そして △っていうお爺さんきたとたんに そっちに乗り換えて、

二人にばらされて、◎◎出入り禁止扱いになったんですってね 

いやー大変だねぇ」


「あなたがXXショップに売った着物、 過去の写真と合わせて既に特定してましてね
大したお金にならなかったって、お兄ちゃんに口すべらしたでしょう

あれ探すの大変でしたよー 

でも、結局、和装バッグも草履もセットで売ってバレましたけどね


思い切りの笑顔で言う


「私ね、あなたに一切約束してないんですよ 

だから 黙ってないんです わかります?」



【ぎゃぁああああああああああ】


婆さんは私が避けれないと悟るや否や

いきなり奇声をあげ叫び出し、自分の髪をかき乱し、
地面に転がってごろごろ転がりだした


【助けてぇええええええええころされるぅううーーーーころされるぅうう】

【助けてぇええタッちゃーーーんっ殺されるぅううー】



その間私は両手をあげておどけてタップダンスを踏んでいる


「はいはい、何かしました?されたんですか?ボケたんですかそうですか」
「色ボケが神経のほうまで行ったんですか大変ですねぇ」


色ボケと言われた瞬間に
すっくと立ちあがり何かを握った婆さんが
ざくざくざくと私のお腹を刺した

いてぇwwwwwww


手を掴んだままで見る

ヘアピンか(汗


手をねじってピンをその辺に投げる
ピンなのか破片なのかよくわからないが
それは手から転がってどこかへ消えた


私を押しのけて、なんとかして車内に逃げるためか
何度も私に詰め寄ってきてTシャツをねじる

左手にはさっきの日記の束を持ったままなので使えず
右手だけで彼女をさばくが
つねったり足を蹴ったりそれはそれは大変元気だ


【どけっ、このくそデブ どけっ】


「うるせぇ鳥ガラ シワババア」


【なんだってぇ このブス】


「はいはい、パンパンババアwww
シワシワオッパイ爺になめさせたんかwww
今日も売春ごくろうさまでーすwww
ゆすりたかりで必死ですねーwww」


ああ、思ったままに言えるのって素敵



【お前だって似たような事してきただろう!!】



「すいませーん育ちだけはいいものでーw

あなたみたいに人の枕探ししなくても食べれたんですぅー
やだー、息子さん、売春婦の子ですかぁ?大変ですねぇ~」


思い切り嫌な口調で煽ってあげる



【ぎゃぁあああああああ】


ババアが獣のような声をあげたと思ったら

右腕に直接がっぷり噛みついて

私の足をガンガン蹴っていた


この時、一番先に考えたのが

このババアがゾンビだったらアウトだなって事だった

何を考えているのか・汗

うわ、これ腕の肉持って行かれるわって思った瞬間
左足で蹴っていたので右足を軽く足払いした

そしてババアはコロンと横になり


そのまま地面で駄々をこねるように転がりまくった


【たすけてぇええええーーーころされるぅううー】

【骨が折れてたてないぃいいーーー】

と叫び出した


ああ、はいはい、反撃が気に入らないんですね
でもあなたのなさったことの100分の1程度ですよ

呆れてげらげらと笑った


暗い路面にふいに光が見えた


あ、車が来たのか

まずいな

このままでは彼女が車にはねられる!


と思ったらそれはパトカーだった

警察官が2名程降りてくるのが見えた


やっときたか とほっとした瞬間

骨が折れて立てないと言ってた彼女がすっくと立ちあがり


【おまわりさぁあああん、こいつが犯人ですうううー】

捕まえてぇえええーーーー!と叫びつつ走り出した


警察官にしなだれるように掴みかかる婆

【あいつがあいつが犯人ですぅうー】

大げさに泣いた風を装い声をふるわせる

「なにいうてんのや糞婆が」

『そうだそうだ、カナコちゃんは被害者だぞ!』

お兄ちゃん。。。君今まで何してましたん(汗


はいはい、

ここじゃお互いに話が聞こえますのでと

3人はそれぞれ少しづつ離れた場所に引き離され

話を聞かれることになった


『カナコちゃんはな!ばあさんをこう、カッコよく、ころがしてー』

なんか後ろから撃たれてる気がする(汗

爺さんの家の前は道路封鎖がされ

パトカーの数は6台を越えたようだ

一番見たくないエレクトリカルパレードの中で

興奮してる兄ちゃんが見える



じゃ、取り合えず署へ と移動を促されたが

なぜか目の前にあったのはお兄ちゃんのボロ軽だった


ホワイ?何故に? これで署に行けと?

なんで??あのかっこいいパトカーじゃないの?


聞けばお兄ちゃんが

『カナコちゃんは俺が連れて行きます!責任もって!』


と言ったらしい

くそ余計な事ばっか言いやがって

野次馬になっていた近所の婆さんに
取り合えず旦那への伝言を頼む


「わかった、あんたの嫁が乱闘になって警察に連れてかれたっていうね!」


なんだよ、このへんには後ろから撃つやつばっかかよwwwww


警察に向かったが、、、

そこはさらにカオスな世界だった




以下更新を待て(有料記事・なわけない)

続く


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