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春ららら ~三人揃って春の日に~後編



店に到着しタクシーを降りた私は
お店の横側にある駐車場を確認した

もうすでにヤミデラ婆は愛しのタツ爺と来店しているようだ
ヤミデラ婆の車とタツ爺の車が並んで置かれていた

「あらやだ 同じナンバーじゃないの」

Y姐が呆れた声を出す

そう、これもヤミデラ婆のテクの1つで
まだ知り合って間もない頃に
タツ爺にヤミデラ婆が言い出したのだそうだ

「あなたとおそろいがいいの いいでしょう?」 と

そして勝手に新しい車に同じナンバーをつけてしまったため
周囲では爺さんが婆さんにせがまれて買ってあげたのではと噂された

齢80の女子力の高さよ!

見習いたいと全くは思わないが…

「これ、実は一緒に来てるんじゃないんだよ」

意地悪そうな顔でK婆が言う

事情をあまり知らないY姐はびっくりした顔でK婆を見る
えっ、そうなの?と問いかける顔に私も黙って頷く

そうなのだ

何故かヤミデラはこの店に行く日に
爺さんの家のすぐ近くに車を隠して待ち伏せている

ヤミデラの自宅は爺さんの家の反対側で
中央にお店があるような感じなのだから
店の駐車場で待てばいいと思うのだが

何故かヤミデラはずっと最初の頃から
早く出てタツ爺さんの家の近くで息をひそめ

爺さんの車が通るのをトタテグモのように待ち伏せている

タツ爺さんはハンコで押したような人なので
ほぼ同じコースを走るので待ち伏せも容易である

そしてその爺さんの車の後ろをついていくのだ

たまに他の車が入り込むと
狂ったような追い越しをしたり
歩道を走って割り込みをしたりしている

そのような血のにじむような努力の結果

爺さんが駐車した車の横へピッタリと
自分の車を寄り添わせて駐車する

そして爺さんにそっと告げる

「あら、偶然ね」


もっともその努力も、無茶な運転のせいで
爺さんにはばれており、
つくづく困ると周囲に言いふらされているのだ

哀れ、ベクトルの暴走した女子力よ


タツ爺の車のほうが少し前側に止まり
ヤミデラの車が若干後ろ気味に止まっている

「なんなのコレ、女は控え目にって事かい」

Y姐が気持ち悪いと呆れた声で言った
心底、ヤミデラへの嫌悪が現れた声だった

まあ、まあ、と店に促すと
二人は店に入っていった

無駄だとは思うが

「私はなんだったらここにいようか?」
言ってはみたが

おいでと引っ張られて連れ込まれた

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主要登場人物

【私】果哉屋叶子(カナリヤカナコ)

  ご職業は主婦という話の実際は何してんだか分んない人
  今回は噛まれてない

【婆】已寺絵巳子(ヤミデラエミコ)ストーカー婆

  資産家のタッちゃん(の、お金)LOVEのすがすがしい人
  ヤンデレとツンデレと妄想が酷い

【爺】埴虎成辰 (ハニトラナルタツ)通称 タッちゃん

  資産家故にターゲットされてるが、それ以上に優柔不断な人
  フニャフニャな人(自称糖尿体質)

被害者の会の面々

K婆(タッちゃん爺の店子・已寺に誹謗中傷されている)
Y姐(タッちゃん爺の店子・已寺に誹謗中傷されている)

ゲスト
兄ちゃん(タッちゃん爺の息子・あまり役に立たない)

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店内にはやたらに声の張った微妙な音階の歌が聞こえていた
マイクを握った背の低い 特徴のある髪型の


ヤミデラ本人がこちらを向き、盛大にむせ込んだ


そらそうだろうよ いくらなんでも
こんな嫌な三連星のジェットストリームアタックは
予想すらしてなかっただろう

その顔を見ただけでもう今日のゴハンは要らないな
そんな事を考えていた


前に数回
タツ爺さん関連の情報を収集するために
この店主にはアタリをとっていたので
すぐに笑顔で対応された

「お久しぶりねどうしてたの?」

いやぁ、まぁ、、、と小さく声を濁したが

実は爺さんにあそこに行くなと言われてたので
行けなかったんですよと
これも本当の話ではあるが伝えた

店主は眉をしかめて

「そんなの関係ないのに・・・」

不愉快そうだった

ヤミデラとタツ爺はこの店は常連だったのだが
ヤミデラの店主への嫉妬が酷く他の店への移動があった

だがその店でも店主へ嫉妬があり
他の客とのトラブルもあって
またここに戻ってきていた

「私なんかまるきり無視されてるのよ
話しかけてもぜーんぜん」

店主は小さな声で言って

「気にしないでまた来てくれていいのよ」

そういうとお茶菓子の用意をしてくれた

飲み物は?と聞かれ

私はコーヒーで
Y姐はジュース

「私はビールちょうだい!」

K婆はニヤニヤ笑いながら言った

をいをい、頼むから暴れないでおくれよ・・・
祈るしかなかった

カウンターの一番隅で
二人並んだ爺とヤミデラ婆は
何故私達がここにいるのかを
全く理解できていないようだった

理解されても大変に困るのだが

珍しくヤミデラが店主に何かを耳打ちしている
店主は首をふるばかりで困った顔をしている

後で聞いた話では

あいつらは問題があってどこに行っても
問題を起こすから追い出せと言う話だったそうだ

いやまぁ、嫉妬して問題起こす人よりは
少しはましなのでは…?と笑うしかなかった


Y姐がいきなり

「私歌うわ」と曲を入れた

そして始まるイントロ

「祭」ですかwwww

サブちゃんww



バカっぷる二人の真後ろのステージで
Y姐が勇猛な太い声で祭を歌い上げる

やべぇカッコイイーーーーwwww




Y姐を睨みつけていたヤミデラがいきなり動いたと思ったら

両方の手で耳を塞いだ


なんと大人げないwwwwww


イイ感じに酒が回ってきたK婆も
一緒にステージでヨイショヨイショと踊っている

やばい、なんかすげぇ楽しくなってきたww

私は素で笑い転げている


そらそうよ 祭だからね!
ある意味間違っちゃいない


ヤミデラはひたすら石のように固まり
それでも去るわけにいかず
ただ黙ってカウンターで座っていた

店内はほぼ満員

そんな中

ただタツ爺だけが空気を読まずに5曲程歌っていた


心配していた揉め事も
このままなら安心かなと思っていた


Y姐とK婆は何をしにきたのか忘れているような有様で

二人で歌っては踊り そして大声で笑っていた

「歌わないの?」と店主に促されたが
引率なので、と断った

が、少しくらい歌っておくべきだったか
今の季節にあう曲はなんだろう

3人揃って 春の日に
3人揃って 春ららら

何か始まる・・・?


いやいや不吉な歌はよそう



結局閉店(3時頃)まで二人の婆は歌い騒ぎ
とてもとてもご機嫌に見えた


全員が店外に出て
私も先に出て店の駐車場とは逆のほうで
後の二人が出てくるのを待った

心配していたが二人はさっさと出てきた



安心するのもつかの間で
Y姐が出てきたヤミデラに近寄って話しかけた

「ちょっと、ヤミデラさん、エミコさんよ
私、あんたに話があるんだけどさ」

「私もあんたに話があるんだわ」


K婆も鼻息荒く近寄った

ヤミデラは予想していたのか
Y姐を突き飛ばすように押しやり
車に向かって小走りになった

ヤバイ。油断してたわ(汗)

慌てて追従すると

車の横にヤミデラが立ち
いつものように罵詈雑言を吐きつけていた
それにY姐が食ってかかったようだった

「だから、話があるって言ってるじゃん」

切れ切れに声が聞こえるが
手前の爺さんの車が邪魔でよく見えない

タツ爺はもう自分の車の運転席に座っている

タツ爺の横に止まっていた車の運転手が不安そうに
どうしたの?と聞いてきた

ああ、いや、実はあの二人は前から知り合いで
今回なんかちょっとトラブルあったようで
話を聞きたいってことだったみたいなんですよね
なんか電話も無視されてるとかで・・・

と説明していたところで
ヤミデラとY姐、それにK婆の声が一層騒がしくなった

たぶん罵倒してるだろうヤミデラの声が
一層高くなった時に


私が話してたお客さんとその助手席の女性が

「ギャー」「危ない!!」

と大声を出した


見るとヤミデラの車は何故か少し前へ出ていて
本人のドアも半ドア
そして後ろのドアが開いていて
車体の下に潜り込むように
Y姐がひっくり返っていた

「こいつ、Yさんが車に乗ろうとしてたのに
いきなり車を発進してYさんを落としたんだ」


すぐそばで見ていたK婆が興奮して叫んでいた

Y姐はここで話す事じゃないと言われ
じゃ、移動して話そうやと
開けてあった後ろドアから入ろうとしたら
そうしたくないヤミデラが
自分のドアも閉める前に車を急発進させ
その結果Y姐が勢い良く地面に転がり落ち
したたかに頭や足や腰を打ち付けたようだった

ヤミデラの車のタイヤのすぐ横にY姐はひっくり返っている


「なにやってんのぉよぉおお!!!」

私も思わず叫んでしまった

ヤミデラはいきなり車を降りると
車のすぐ脇に転がったY姐にむかって

「なにやってるじゃねぇよ!」


と吐き捨てるように言って

すぐ車に乗り込むと
車のすぐ横にひっくり返ったY姐を起こしもせず
車を発進させた

「ギャァアアアア」

足が痛かったのか、タイヤに引かれたのか
Y姐が転がったままでうねった


「ちょ、おま、なにしてんの!!」

駐車場から出たところで
いったん止まったヤミデラの車に近寄り

これは駄目だ、このまま行けば
問題になることもある ひき逃げの可能性もある
ちゃんと戻って、話をしなさい

なにしてんのと一気に話しかけると


ヤミデラは窓をあけ

「うるさいブス!この豚!デブ死ね」


いつものように私を罵倒して
さらに車を発進させた

そしてもう一度車を止めたと思ったら
シートベルトをして
そのままスピードをあげて走り去った


これはえらいことになった(汗)
どうしよう、救急車?か??と思っていたら

タツ爺が転がっているY姐に目もくれず
声すらかけずに車を運転して走り去った


ちょっとぉおおおお
あんたら何してんのぉおおお!!!!!


なんなのこのバカっぷる
もぉおお、、、、


K婆はご機嫌だった顔も一瞬で固まり
ひたすらにY姐の足をさすっている

新品で今日おろしたばかりだといっていた
白いジャージが泥だらけにされている
両膝もすりむいており
両靴もがっちり踏まれたようだった

先ほど私に話しかけていた客も
唖然としてY姐の移動を手伝ったり
救急車呼んだほうがと話している


Y姐が
「警察、警察呼んで」
と私に言い


ぇー。。。またあの人がらみで
警察に言わなきゃだめなん??と思いつつも


そうせざるを得ないわなぁと
警察に電話をした



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そんなに時間も経たずに警察がきて
車の相手は知っているのか等々聞かれた

私は家の周囲に隠れている
ヤミデラの写真を日ごろから良く撮影しているので

「この車でこのナンバーです」と差し出した

警察のほうでヤミデラへ電話がついたようだったが
なかなか承知せず、ヤミデラは戻ってこなかった
警察官はしばらく彼女に電話をかけていた
が、甲高い彼女の言い訳の声が漏れて聞こえていた

ひき逃げと言うか、いくら事情が事情でも
ひっくり返ったままの人間の安全も確認せず
無事を確認もしないままで走り去る行為は
傷害事件扱いになりかねないと言う事だった

だから近寄って、戻ってと言ったんですけどね
倒れた人へも暴言しか吐かない有様でと警察に話した

警察の車両はどんどん集まっていて
覆面も入れると7台程が集まっていた

やだわーオオゴトだわぁ(汗

20分以上経っただろうか
ヤミデラが車を運転して現場に戻ってきた

何故かその後ろを

タツ爺も自分の車で現場にやってきた



くそ爺なにしにきやがったんだ こんにゃろうが
そうは思うがそのままいうわけにもいかない


あーあ、また警察か、
いや、今回は私、まったくの傍観者のようなものなので
全然OKだろう、 よし、よしよし、セーフセーフw


そう思っていた時だった

少し離れた場所に車を止め
4~5人の警察官に囲まれたヤミデラが

大声で言い放った


「あいつ、あいつが、
乗りこめ乗りこめって煽ったんですぅ!!」



そのアイツとさされた指は確実に私のほうを向いてた

ちょwwwおまwwwなにしてまんのwwwwww


もうなに、この春の冤罪祭wwww

シール10枚集めたら参加できるの???お皿もらえるの?

やめて欲しいわぁ・・・


ヤミデラは鼻息も荒く、
「私は被害受けただけなんですぅう」
しおらしく構えている


そして

「いきなり車に乗り込んできたので
凄く怖くなって、そのまま去ってしまったんですぅ」

と話したらしい


へぇ、暴言吐いてる時間あったのにね?



だが証拠がないだろうと踏んでいるのか
いつものヤミデラの「アタシ被害者なの」劇場は止まらない

現場に残ってくれた客も2回止まったことなどを
証言してくれているのだが

アイツが乗り込めって煽ったとヤミデラは勝ち誇っている


以前もこいつ、自分で勝手に地面転がって
あいつに転がされたんですぅうーって言ってたもんな
あーはいはい、またその手ですか・・・


でもね、ヤミデラさん、



私、実はね


あなたとY姐が揉めだした時に
何かあったら困ると思って



携帯の録画 押してたの




声だけでも拾えるといいかなって

最初は画像を下に向けて地面撮ってたんだけど



あなたがひっくり返ったY姐さんを転がして
暴言吐くとこは撮影されてたの



その前後から撮影してたから


私が乗り込めなんて言ってるとこ
全然なかったのwwwww


大体言ってないしね

そんなわけで私、無罪放免だったの


ごめんねぇwww



諸々の写真
タツ爺とヤミデラ婆の車の並んだとことか
普段かくれんぼしてる婆さんの車の写真とか
たくさん資料あってすごく早く終わってるの
あなたが現場に戻ってきたときは
実はもう殆ど終わってたの

ごめんね、用意周到で

これもあなたが何度も何度も
私に絡んできて陥れたりしてたから
だからこんなになったんだよと
教えてあげたい

教えないけど★


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解散して家に戻ってきてから
K婆の家に電話したら出ないので
心配して暗い中見に行ったら
Y姐の家でK婆とお兄ちゃん(タツ爺の息子)が
今日の反省会を繰り広げていて

ヤミデラ婆が現場から逃げて
なかなか現場に戻ってこないと思った時
実は爺さんの家の前までやってきていて
「なんで助けてくれなかったの」と
タツ爺の顔を引っ掻いてたそう
ちょうどそこでお兄ちゃんが
それを見たそうなんですが
何があったのかもわからないので
そのまま放置して自分は他所に行ってたと言う話でした

たぶんそれからヤミデラ婆は現場にしぶしぶ戻り
記述のようになった次第のようです


Y姐の怪我は膝を擦りむいたのですが
実は膝に人工関節が入っているので
明日以降、病院で詳しく検査するようです
幸い痛みはさほどないと言う事で
そんなに酷くならずに良かったです

そしてタツ爺の家の前の
他人のアパートの駐車場に(よく無断で停めている)
ヤミデラ婆の車が止まってたりして!と私が言ったら
みんなで見に行こう見に行こうと言う話になって
そちらに向かって歩き出して
何気に 20メートルくらい行ったトコで

なんとなく後ろが気になって振り返ったら

Y姐の家の角の窓のとこに人影が見えて


ん???と思ってダッシュで追ったら
思い切り走って車に乗り込み逃げ去る

ヤミデラ婆を見てしまった
(婆はそのまま逃げた)


つまり、私達がやってた反省会に
ヤミデラ婆が聞き耳たててたと言うおまけが・・・




婆100まで ストーキング忘れず・・・

もうねぇ 

春って人を狂わせる季節なのねぇと

みんな春のせいにしようと話し合って終了


*今回は噛まれずに済んだのだけが幸いでした*


そんなお話

おしまい

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