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小説家「真山仁」を疑え

小説家の真山仁さんと教育者の荒木博行さんによる私塾「正疑塾」。
受講生は4月14日から7月14日まで4か月間のオフライン講座を通して「正しさを疑う力」を身につけていく。
voicyやFacebookなど限定的な事前告知だったにも関わらず、数日で定員に達したこのイベント。Day1からDay4まで全4回の記念すべき第1回が、先日、無事開催された。

参加者は、真山さんのファン、作品のファン、荒木さんのファン、荒木さんの元生徒、現生徒、そしてひょんなことから参加することになった僕、という構成だ。

講座の冒頭、イントロダクションとして荒木さんが自己開示してくれたのは自身が見た悪夢について。開催時間になっても会場に現れない真山さん。事前周知に不備があり会場が分からずたどり着けない受講生たち。主催者だからこそ体感する重圧は、何事もなく会場入りした真山さんと我々受講生によって無事に解放された。

続く真山さんの自己開示。本講座は13時から16時までのスケジュールだが、当初9時から12時までという案が出ていたそうだ。真山さんの生活リズムは、早朝6時まで執筆作業を行い、就寝。11時に起床。したがって9時からの案はあえなく不採用となったそうだ。「13時開始でも早いくらい」と冗談めかしていたのがとてもチャーミングだった。

講義に入る直前の荒木さんの言葉がとても印象に残っている。真山さんのイントロダクションを真剣な眼差しで聞き終えた我々受講生に対して、「これからディスカッションをしていきますが、おそらく多くの受講生は真山さんの話しをありがたい言葉として頂戴してしまう。リスペクトすること自体はとても良いことだが、リスペクトしつつ、問いを立てて欲しい。問いを立てて自分の知見を乗せて何でも聞いて欲しい。真山さんのことも僕のことも神格化はしないで欲しい。」

しびれた。

数秒呼吸を忘れた。

もしかしたら4か月間の講座の中で唯一の約束ごとになるかもしれない。
それだけ大切なメッセージであることが伝わった。

このレギュレーションはおそらく真山さんにとってもありがたかっただろう。

なるほど、こういうメッセージを最適なタイミングで発信できる人なのだな、荒木さんは。
元生徒や現生徒、ファンがこぞって参加したくなる理由の一部を体感することができた。

そんなファシリテーターが進行するDay1の課題図書は、文春新書『疑う力』真山仁。2024年3月19日に発売された本書では、日本社会が抱える諸問題を題材にした自由な議論を通じて正しいとされているものを「疑う力」を養っていく。

質疑応答の中で真山さんは取材におけるインタビューのTIPSをいくつも開示してくれた。僕も「西荻じゅん」というペンネームでライター活動をしているため、インタビューのコツを取材力の高いベストセラー作家から直接教えてもらえるのはとてもありがたいことだ。こういった思いも寄らないギフトをいただくことがあるので、ひょんなことから繋がっていくひとや出来事は、とても貴重で、自分にとっての財産なのだと心底思う。

ディスカッションの中で印象的な受講生の言葉を2つピックアップする。
1つは、インプットだけでなくアウトプットする際の自分の情報も疑う必要がある、という言葉だ。僕も日頃からアウトプットを前提にしたインプットを心掛けているが、この言葉であらためて自分が発信する情報に対する責任を感じることができた。
もうひとつは、書籍「疑う力」自体も疑って読む必要がある、という言葉だ。この言葉には、著者である真山さん自身も「その通りだ」とうなっていた。

有料のクローズドイベントであるためnoteには書けないことも多い。今回様々な理由で参加できなかった方も多いと思う。もしも2期が開催された際は是非参加していただきたい。その時、僕は事務局として学びのお手伝いをさせていただく。


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