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宝塚観劇記 宙組『Délicieux(デリシュー)!-甘美なる巴里-』

作・演出/野口 幸作

 野口幸作氏はとことん詰め込みたい人である。星組、北翔海莉さんの『ジ・エンターティナー』も氏でした。事実上のお披露目ショー(第一作が『ガイズ・アンド・ドールズ』でショーがなかった)は、あたかもサヨナラショーの如き仕上がりだった。宝塚文法では、あれはサヨナラショーの仕様です。でも、北翔さんと星組の魅力をたっぷりめせてくれたことは事実で、私のお気に入りの一つで、何回も再生している。
 とくに素敵な演出が、初舞台生102期を迎えるところ。紅さんが、「あしたの~エンタティナー~云々カンヌン」と、歌う声に迎えられながら、大階段を降りてくる102期生。初舞台生に対する愛情全開で、感動した。
 北翔さんの歌う歌詞の「ぎゅっとしてあげる」も、好評だったようで、これは雪組望海風斗さんのお披露目ショーでも使われたフレーズ。
 全体として、とことん盛り込んでくる。

 それは今回の『Délicieux(デリシュー)!』でも同様でした。
 押して押して、押しまくる怒涛の60分だった。
 コップからあふれるまで、水をそそぎ込みたいという、その感覚はよく分かるし、好きなスタイル。私が演出家だったら、こういうふうにやるだろうと思う。人間いつ死ぬかわかりません。これが、最後の演出機会だとしたら、やりたいことを全部やる。ちょっとここは息抜き場面とか、そんなものは不要。
 観客の私にしたところで、これが最後の観劇になるかもしれない。「すごかった~」と思って帰りたい。そういうことです。

 オープニングから大階段が出ている演出。ゴージャス、OK!
 真風涼帆さんが空中から登場、これ野口さん、好きだね。普通の登場では満足できないですね、OKです。
 そのまえに潤花さんが、一瞬にして現代娘からお姫様に早変わり。これは、宝塚で初めて見る演出。OK、OK!

 とにかく、押せ押せ。幕開きは怒涛の10分間。

 そのあと、芹香斗亜のマリー・アントワネットがでてくる。桜木みなとも女装だよね、で登場。 
 ここは、私の趣味ではない。男役の女装を、誰か観たい人がいるのだろうか。いつも疑問。これは内輪むけの演出だと思う。初観劇の客には全く無意味。芹香斗亜ファンはこういう彼女を喜ぶのかな。カッコよい男役姿を見たいのではないのか。違うのか?
 また、男役の女装場面で、娘役を使ってあげれば、一人でもたくさんの娘役さんに出番が広がるのに、といつも思う。スポットライトを浴びれば、輝く人がいくらでもいると思うのだが。

 初舞台生の登場は、やはり工夫をこらしていた。彼女たちが乗っているケーキは、マカロンタワーというらしい。新演出です。可愛かったし、楽しい場面でした。こういう工夫に、「愛」(宝塚御用達用語)を感じるわ。

 メモを取りながら観劇しているわけではないし、礼真琴ライブ配信を挟んでしまったから、あとは、よく思い出せない。

 最後に2点だけ。
 フィナーレで、芹香斗亜の歌に合わせて、真風涼帆と潤花のデュエットダンスシーンがある。そのあと、芹香斗亜も加わって、三人が横並びで踊る。こいう場面が私のお気に入りです。
 トップスターと二番手男役、トップ娘役の三人が、宝塚歌劇のミニマムエッセンスだと思う。この三人を、麗しく美しく見せること、それが私が演出家に最も望むことです。
 この三人のバランスがいいと、組全体に魅力が生まれる。
 芝居なら、ガチの恋愛三角関係が、三人を魅力的に見せる。『あかねさす紫の花』『我が愛は山の彼方に』みたいな。
 ショーで忘れられないのが、宙組の『ザ・レビュー'99』(岡田敬二演出)のオープニングの最後。姿月あさと、花總まり、和央ようかが銀橋で歌い継ぎ、最後は三人並びで捌けていく。この場面だけ、何回再生したか!
 ということで、フィナーレの三人の場面は、まさに私の好みに沿うものでした。

 2つ目。潤花さん、よいわ。彼女が登場すると、舞台が柔らかくなる気がする。Tによれば、単に好きだということらしい。理由なんかないわ。スカステにもどんどん出演させてください。以上。

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