時間切れ!倫理 44 孔子 概要
家族道徳
諸子百家の代表で、もっとも大きな勢力を持ったのが儒家。その創始者が孔子(前551生?)です。この時代の思想家は名前に子とついていることが多い。これは本当の名前ではありません。先生という意味でしたね。孔子の場合、本名は孔丘(こうきゅう)といいますが、尊敬されている先生なので、名前を呼ぶのはちょっと恐れ多い。それで孔先生、つまり孔子、と呼ぶようになってそのまま定着してしまった。
たくさんの国が争いあっている春秋・戦国時代です。ちゃんとした思想家であれば、この時代状況は心痛むはずです。戦乱でみんな苦しんでいるのだから、どうしたら平和にできるのかを考える。平和になることは、各国の君主にとってもありがたいことだよね。支配者は、自分が強者となって戦争を終わらせ、平和にしたい。
孔子が、平和を実現するために考えた方策は、家族道徳を基礎にして秩序の再建をはかろうというものです。どれだけ国同士が争っていても、また国の中で、政治家たちが権力を巡って争いあっていても、家のなかには秩序と平和がある。家の中でお父さんとお母さんと子供達がいる。これは争いあわず、仲良く暮らしている。
家の中で、仲良くできるのであれば、この家族道徳を家の外に広げていけば、やがては国に秩序が回復し、中国全体にも秩序が回復する。これが儒家の基本的な考え方。
儀式典礼
では、具体的にはどうするのか。秩序というのは、みんながきっちりとルール守って動くことから始まるでしょう。そこで、秩序を確認し、維持するためのものとして儀式典礼をすごく大事にします。
国のなかでは、祖先神を祭る祭式をはじめとして、様々な儀式がおこなわれます。この儀式を昔の伝統に基づいてきっちりと執り行うことを目指します。また、国と国との外交があれば、そこには外交儀礼がある。これも、古式ゆかしき伝統に基づいて執り行うことを目指す。とにかく儀礼を重視する。
この儒家の思想は日本にも入っている。僕らの普通の日常の中にも浸透しているので気づかないけども、例えば授業のはじめに、「起立、礼、着席」とやっている。なぜ立ち上がってお辞儀するのか。アメリカ映画やフランス映画を見ていると、こんなことは絶対にやっていない。生徒がわーっと教室に入ってきて、終わったらわーっと出ていくだけ。僕たちが「起立礼」をやっているのは、儒家の儀礼の考え方です。秩序をしっかりと守るために、授業のはじめと終わりにお辞儀をする。「よろしくお願いします」という気持ちを、腰を折る形でしめす。心の中でいくら「お願いします」と思っていても、それを外面にあらわさなかったら意味がない。だから、腰を折るという形で示す。これが孔子のいうところの儀式典礼です。
様々な儀式典礼をきちんと司ることによって、秩序を確認し、秩序を広めることができる。そう考えました。
生涯
孔子は魯という小国の生まれでした。一度は魯国の大臣になるのだけれど、国内の政治闘争に敗れて、魯国を出て諸国を放浪します。以後、政治権力の中枢に地位を得ることはなかったけども、彼の評判を聞いて、たくさんの若者が集まってきて、孔子に教えを乞うた。弟子たちは、具体的には、儀式典礼について学んだのだと思います。その弟子たちは諸国の役人として取り立てられていきました。したがって孔子は教育者というイメージが強いです。
【参考図書】
加地伸行 『儒教とは何か』 (中公新書)
宮崎市定 『論語の新しい読み方 』(岩波現代文庫)
宮崎市定 『論語の新しい読み方』 (同時代ライブラリー)
白川静著 『孔子伝』 (中公文庫BIBLIO)
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