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宝塚観劇記 星組『ロミオとジュリエット』1

ふたつの瞳に星が輝く

今更の観劇記だが、配信でB、大劇場でAを観て、そして今日Aのブルーレイが届いた。良い機会なので、溜め込んでいたことを書かせていただきます。

ひとつめの瞳~有沙瞳

乳母は重要な役である
ロミジュリ初演以来、しばらく乳母役は演技の方向が定まっていないようだった。奇矯なメイクの乳母もあった。
方向を定めたのは、星組再演時の美城れんの乳母である。
美城は、優しい愛、ジュリエットを包み込む愛で、あの素晴らしいソロ曲を歌い上げた。以来、彼女はファンの注目を集め、ポジションを上げて大きな役を任されるようになったのは周知の事実。
今回の有沙瞳。彼女が乳母役だと知ったときは、正直なところかわいそうに思った。娘役の役が少ない演目だから、音波みのりや小桜ほのかさえ役がつかない。乳母でも仕方がないかと思ったのだが、開けてビックリ玉手箱!(古いなあ)
有沙瞳は乳母役を、準主役の位置におしあげてしまった。美城れんとはまた別のニュアンスで乳母を捉え、美城れんを超えてしまった。

スケールがちがう
ひとことで言えば、大きく強い愛。
彼女のソロを何回聞いても、本当に涙がでるのよ。もう、泣くのが恥ずかしくなくなった。
ソロの前に、乳母がロミオを探しにモンタギューの縄張りにやってきて、若者たちにからかわれるシーンがある。この場面で有沙瞳の乳母は終始ニコニコしている。クラスのやんちゃ坊主を「よし、よし」している女性担任の感じである。ここですでにスケールが大きい。やんちゃなモンタギューたちを包んでいる。
そして、あのソロにつながるのである。大きな愛でジュリエットを、客席を包んでいく。
なんと力強く、しかも繊細な歌唱であることか!

手のひら返しにも納得
ロミオが殺人事件を起こしたあと、乳母は急にパリス伯爵との結婚をジュリエットに薦(すす)める。この手のひら返しが唐突で、これまでの公演では釈然としなかったのだが、今回はこれが納得できた。手のひら返しの前に、キャピュレット卿(ジュリエットのパパ)がジュリエットを叩くのね。これを乳母は見ていて、考えを変えたということがわかった。
乳母の大きな愛は、パパも包んでいたのよ。娘を叩いてしまったパパの苦渋の思いを知って、気持ちがパパに行っちゃたことが見て取れた。感情の変化を納得させる有沙の演技力は相当なものだと認識した。

乳母役がロミジュリの質を決める
美城れん以後、乳母役が非常に重要な役だということが認知されたが、今後、ロミジュリをやるときには、乳母は演者にとって最もやりがいがあり、かつまた怖い役となるだろう。美城れんと有沙瞳が、これだけの演技と歌唱を見せたのだ。
乳母が劇の出来を左右する。少なくとも私は、乳母の出来で判断する。ロミオやジュリエットなどスターが演じなければならない役ではなく、しかも男役でも女役でも演じられる役だから、誰にでも開かれている。実力派ジェンヌさん、チャンスだよ!

ちなみに私は紅さん時代のショーで、客席降りしてきた有沙瞳さんとハイタッチしたことがあるのだ。エヘン!

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