僕の「電カル」奮闘記 その6

富士通が「一体型」を撤回!

RXは、僕が期待した一体型ではなかったものの、すでに契約は済み、クリニックでの診療も始まっていました。こうした段階で、別の電子カルテに乗り換えるのは現実的ではなく、もうRXを使うと決めた以上は、バグをなくして使いやすいソフトに修正してもらうしかありません。

そこで、富士通との初回の面談のときに、のちに「定例会」と呼ばれる意見交換の場を設けてもらうようにしたのです。定例会では、僕が見つけたバグを伝えて、それに対して富士通が回答するという手順で進められました。

僕が使い方を勘違いしていたもの、設定を変えれば改善するものもありましたが、もともとの仕様でできないこと、技術的に未熟なものもありました。そして、バグもかなりの数に上りました。

バグに関しては、その場で解決できないことも多かったため、いったん富士通に持ち帰ってもらい、次回の定例会までに報告してもらうという流れが定着。定例会は、2011年4月から月1回のペースで行われるようになり、バグの修正や技術的な見直しをしてもらうようになりました。

少しずつ、RXは使いやすいソフトに変わっていく兆しが見えてきましたが、どうしても納得がいかなかったのは、富士通がRXを「一体型」と呼び続けていたことでした。

そこで、9月14日に行われた定例会で、僕は、「一体型になるまでの間、販売中止にしたらどうですか?」と提案をしたのです。

これまでの話し合いで、「真の一体型」とはどういうものかは、彼らも認識を改めてきたようでした。そして、RXは「一体型」ではないことも、認めざるを得ない状態になっていました。

RXは、「一体型」ではありません。それを、「一体型」として販売するのは、モノづくりをするメーカーとしての信義にもとる行為と言えます。

そして……。

この日の長い話し合いの末、富士通はとうとう、「一体型」という表記を取り下げることを了承したのです。

「印刷物はすぐには変えられないが、ホームページの表現はすぐに変更する」と約束した通り、9月27日にホームページを確認してみると、「一体型」の表記が削除されていました。

定例会が始まってから半年。ようやく、ここまで漕ぎつけることができました。

でも、これで終わりではありません。僕は、「一体型」の電子カルテを期待して、RXを買ったのです。早く、RXを「真の一体型」に修正し、使わせてほしい。そして、改めて「一体型」を名乗ってほしい。そうした思いから、定例会はその後も続けられ、新たに見つけたバグを僕が伝えて、それを富士通が修正するといったことが続けられました。

改善すべきことがあまりにも多いので、指摘した不備や改善への要望を富士通はリスト化し、それをいつまでに修正するという工程表まで作ってくるようになったほどです。最終的には小さいものも含めると100項目を超えました。

定例会では、たんにバグの報告だけではなく、「こうしたら使いやすくなるのではないか」といった提案もさせてもらい、実装されたものもあります。

たとえば、患者さんの家族を紐づけして、診療中に家族のカルテも参照できるようにしてもらいました。このおかげで、診療中にご家族の相談をされても、素早く確認でき、家族カルテの内容をドラッグ&ドロップで簡単に記載できるようになりました。

この紐づけ機能は、その後、無償ですべてのユーザーに配布されるようになり、他のクリニックでも好評だったと聞きました。余談ですが、富士通がRXの後継機種として発売した電子カルテ(HOPE Life-Mark-SX)の宣伝資材には、この家族カルテの紐づけ機能のことが書かれています。

こうした提案をしたのは、RXがモデルチェンジして「真の一体型」になるときに、いいものになって欲しいという願いがあったからです。使いやすくなってユーザーが増えれば、開発費用を投入できて、よりよいソフトになる可能性があります。そうなれば、RXを使う僕やスタッフにもメリットがあります。

だからこそ、2010年に発売されて、まだ半年しかたっていなかった当時は、このことを公にしにくい思いもありました。電子カルテは、一度、導入すると、そう簡単には乗り換えられません。そのため、開業を考える医師は、導入する電子カルテを慎重に選びます。RXによる医療事故は困りますが、もしも「RXはバグだらけらしい」という噂が立ったら販売不振になって、サポートが手薄になってしまうのではないかと恐れたのです。

でも、今はRXをとりまく状況も変わっています。RXは、今でも現役で使用されていますが、すでに販売は終了しています。後継機種のSXが出た今なら、当時の不具合について書いてもRXの販売への影響はありませんからね。

また、定例会は開発者の方々が、実際に診療中に医師がどのような使い方をするかを知るいい機会になったのではないかとも思います。技術者は電子カルテの開発はしても、それを使って診療することはありません。だからこそ、定例会では、実際に診療の現場で電子カルテを使う立場から、「僕たちは、こうやって電カルを使う」「こうなると使いやすい」ということを、真剣に提案させてもらったつもりです。

そして、定例会でこうしたやりとり行うなかで、富士通は「RXの後継機種で一体型にする」ということを約束してくれたのです。

RXは,今後、「一体型」になる。そしてよりよくなる。僕はそう確信していました。

気がつけば、開業から5年が経過。その間、月1回の富士通との定例会も続けられました。遅かったスクロールもましになり、変な動作もなくなり、いくつもの提案を採用して頂きました。末端ユーザーの希望が直接開発の方々に届くのは画期的でした。おかげで当初、悩まされたRXはずいぶんと使いやすくなりました。もちろんそれは、僕や事務スタッフも使い方に慣れたということもありますが……。

そして、電子カルテも、サーバー買い換えの時期がやってきました。


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