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外科の道を選択した理由

前回は外科医になって、爆走していたが故に初心を忘れてしまい上司の一言により気付きを得ることが出来た話をしました。



今回はそもそもなぜ外科の道を選択したかを書きたいと思います。

実は、私は父も祖父も叔父も兄もみんな外科医という環境に生まれました。手術の話だったり、血生臭い話でも食事中にみんなで平気で会話をする家庭です。自身が外科を選択するのは自然だったかもしれません。

でも反対にどれだけ大変な科であるかを知っている兄は私が外科を選択するのは反対しました。

「外科に進んだら結婚できないぞ。女性としての幸せを得ることができないかもしれないぞ。大変だぞ。」

と兄に言われておりました。

実際に国家試験に受かった後に、初期研修医としてまずは色々な科を回ります。私が勤めていた大学病院は色々なコースが用意されており、私が選択したコースは最初の一年は決められた科を回り、その後2年目は数ヶ月マイナーな科を回った後に自分の好きな科を回ることができる自由選択コースというものでした。

最初の1年はメジャーな科である内科と外科を回ります。内科は細分化されており内科の中でも色々な内科で研修します。この内科で経験したことはまた後日書きたいと思います。

さて、初期研修医1年目に外科を2ヶ月研修しました。当時、初期研修が始まった当初、私は将来外科に進む気はありませんでした。

「興味はかなりあるけれど女だし、無理だろう。」

外科で研修する前から大学病院一ハードであることは知っていましたし、自分が求められることはないだろう、務まるわけないだろうと思っていたのです。

医学生の時受けた外科の講座はやはり面白く、内容がすっと頭に入ってテスト勉強が全く苦にならないくらい好きではありました。でも働くとなると別物だと思っていたのです。

さて、前任者の同期から申し送りを受けて外科での研修開始です。

正直、

「嫌だ…」

かなりナーバスになっていました。

朝は早くて夜は遅いし、男社会の中で自分がチームの一員として務まるのだろうか…

噂通り、病院一朝早く、夜遅い。

休憩できる時間は朝、昼、夜の食事の時と夜の回診が終わってカンファレンスの準備をする前のみ。

そう。朝、昼、夜と病院で食事をするのです。朝はカンファレンス後または手術に入る前、昼は合間、夜は食べられる時は隙間時間に。昼はほぼカレーを頼みました。飲めるからです。5分で終わる。いつ呼ばれるか分からないので少しでも早く食事を終えるようにしていました。

そんな生活をして自分なりに一生懸命働きました。仕事が上手く出来ず叱られることも多々ありましたが、仕事を覚えていくと楽しくなっていきます。徐々にチームの一員として上司たちが扱ってくれるようになります。上司も色々なことを教えてくれます。

そして、感じたこと。

「やっぱり面白い!」

チームの一員になって患者さんに対応していくうちに、


手術中に癌をごっそり取り除くことができる素晴らしさに感動し

「自身の手を使って患者さんの悪いところを直接取り除くことができるんだ!」

手術をして元気に退院する患者さんの姿を見て、

「なんてやりがいのある仕事だろう!!」


あとは夢中になるだけでした。

しかし期間限定の研修と半永久的に続ける仕事とは違うものなので、本当にやっていけるのか試すために初期研修2年目に外科を4ヶ月選択することにしました。それで実際に勤めることができたならば将来進む科の一つとして考えようと思ったのです。

初期研修2年目。どんどん魅力に引き込まれていく自分がいました。

2年目になると仕事もできるようになってきていますし、しかも執刀させて貰えることも増えてきて、チームとの関係性も強固になっていき自分の立ち位置がより明確になってきました。

やりがいをとても感じ、どんどん自分の手を使って患者さんの病気を治したい、積極的に治療に参加していきたいと思うようになりました。

もう他の科を候補としてあげることすらない状況になり、

「外科に進む」

と決意しました。

振り返ると、男尊女卑の流れはある程度ありましたが、有難いことに私が直接お世話になった上司たちは私を『女』として扱うのではなく一個人として扱ってくれ、私自身もその気持ちに応えたいと思い、時に『女』だからと小言を言われた時は「何くそ!」と見返してやると思い、必死に一つずつ一つずつ仕事を着実にこなすように努力しました。ハードな状況でもチームの一員として自身のするべきことをしっかりと行っていきました。

この一つ一つの積み重ねが信頼へと変わっていったのではないかなと思っています。

「一歩一歩」を大切にすることにより関係性は構築でき得ることを実感した経験でした。

なので今でも

「一歩一歩」

は大切にしております。


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