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ショートショート:「朝焼けの人。」



【前書き】

皆様、お久しぶりです。
カナモノです。

今日も初心に帰り、想いのままに書いてみました。

少しの間でも、お楽しみ頂けていることを願います。


【朝焼けの人。】

作:カナモノユウキ


《登場人物》
・僕
・この人

明け方の街は、その騒がしさが嘘の様に静かで。
太陽の上がり切ってないその空は、深い青から遠くの淡いオレンジ色になっていく様子が綺麗に見える。
夜更かしをした目に空が映るとき、何とも言えない孤独感すら薄まるほどだ。
僕が態々明け方のコンビニに行くのはその為だ。
その時、必ず帰り際通る橋の上で会う人がいる。最初は会釈程度だったけど、今は軽い雑談をするぐらいの仲になった。



「おはようございます。」
「あぁ、おはよう。今日も早いね、いや…遅いねか。」
「そうですね、僕はこれから寝るんで。」
「今日も、朝ご飯はコンビニ弁当?飽きないのかい?」
「何か、同じものでも全然食べれるんですよね僕。あ、同じものを食べ続けられる人って依存体質なんですって。」
「そしたら君は、この時間に依存しちゃってるのかな。」
「あぁ…、そうかもしれないですね。」


この人がお兄さんなのか、お姉さんなのか、毎日その印象はバラバラで。正直よく分からない。
当然、素性も分からない。不思議とそんなことどうでもいいと聴く気にならなかった。
ただ会って話せるだけで十分だったし、この明け方の空の様な気持ちよさがあったから。
この人は、会うと必ず教えてくれることがある。



「今日は、午後に雨が降るよ。多分夜までずっとだ。」
「じゃあ、明日のこの時間も雨ですかね。」
「いや、この時間は晴れてるよ。ちゃんと、コンビニに出かけられるさ。」
「なら良かった、また会えますね。」
「君は買い物だけじゃなく、この時間も楽しみにしているんだね。」
「当たり前じゃないですか、僕はアナタにも会いに来ているんですから。」
「変わった人だね君は。」


この人の天気予報は外さないし外れない、晴れると言えば必ず晴れ。雨と言えば雨だし、天気雨すら言い当てる。
時間も場所も、量さえも言い当てるほどだ。凄い事なんだけど、何だかさも当然のように話すから驚かなくなった。
それにしてもやっぱり凄いとは思う訳で、だから僕はこの人を〝朝焼けの人〟と呼んでいる。



「そろそろ朝焼けだ、今日のは綺麗だぞ。」
「毎日、綺麗ですよ。この空も、朝焼けは特に。毎日違う空に、毎日違う朝焼け。」
「君はよく分かっているね、同じ空なんてないことを。」
「アナタを見て居たら、何となくそうなんだろうなって思って。」
「ハハハ、私を見てか。それは嬉しいね。」
「また明日の朝焼けも、楽しみです。」


朝一番の光が差し込み、眩しさに目がくらんだ一瞬で、いつもこの人は消える。居なくなるんじゃなく、消えるんだ。
きっと、この人が見える人は少ないと思う。理由は分からないけど、何となくそう思うからだ。
仕事を辞めて、心の病で苦しむ僕の目に映る不思議な幻覚なのかもしれない。
だけど、この人はきっとそういうものではないとも思うんだ。だって、この人は言うんだ。



「曇りでも雨でも台風でも、朝焼けはその上で赤々と昇っている。きっと君の心も、朝焼けが見えていないだけさ。」


僕の心の雲を見透かした言葉が、この朝焼けの様に僕を照らしてくれた。明日も、僕は朝焼けの人に会いに行く。


【あとがき】

最後まで読んでくださった方々、
誠にありがとうございます。

僕も最近、朝焼けの時間にちょこっと散歩するんですが。
やっぱりこの時期の空は綺麗っすね。

歩いてるだけで気持がイイ。

おススメですよ、朝の散歩。

では次の作品も楽しんで頂けることを、祈ります。
お疲れ様でした。

カナモノユウキ


【おまけ】

横書きが正直苦手な方、僕もです。
宜しければ縦書きのデータご用意したので、そちらもどうぞ。


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