現代版桃太郎 生誕編 第五話

そこには、大きい木箱が2つ。小さい木箱が一つあった。木箱の周りには白い花が並んでいた。両脇には鮮やかに彩られた植物。なぜかその下に名前が書いてある。大吾。いや全員の見覚えのある名前だった。

入り口には裕人とその家族の思い出の写真が飾られていた。生まれて間もない頃、3人で遊園地に行った写真など、どれも微笑ましい。

しかし周りを見渡せば、黒い服を着た人しかいない。裕人は明るい性格のはずなのに

二度目の別れ

通夜当日、大吾はまだ裕人がこれからいなくなる事も、まだ知らずに、ただ母のいう事を聞いていた。意味も分からず黒い服を着せられた瞬間

『やだ!いつものトーマスの服がいい!!』

裕人に会える。裕人が好きなトーマスの服を着ていこうという気持ちがあった。

無邪気な裕人とは別に母は悲しんでいる。大吾は大切な人を二度も失っているのだから

裕人がいる場所に、隆也と明は先にいた。二人の顔は大吾とは違って暗い顔だった。

大吾『隆也!裕人は!!遊ぼうよ!』

隆也『もう裕人とは遊べないってママが言ってた』
明『裕人はもう大吾って呼べないんだよ』

泣きながら大吾に話す。ここで大吾は裕人について少し嫌な予感がした。すぐに母親を呼び、外に出た

大吾『またバイバイするの?』
母は泣いていた。そして頷いた。

母『何も言ってなくてごめんね、、大吾は一度別れを経験してるから、、』
大吾『もう会えないってこと??』

大吾は一つの小さい木箱に向かって走り出す。ここで初めて、裕人が死んだに気づく

大吾『裕人!!!!ねぇ!!起きてよ!!!』
パニックになった大吾は、木箱を強引に開けようとする。しかし簡単には開けられるはずもなく、大吾は崩れ落ちる。明と隆也が駆け寄るが大吾は返事もしなかった。

午後6事、通夜が始まった。母親と共に尚香を済ませた。すると母親は献花の名前をみて手が震え出す。

『岐阜県知事 池田桃太郎』

大吾『え?パパいるの?』

母親すぐにトイレに駆け込んだ。

母親『あいつ、、女にまで手を出しやがった上に、、首にしたはずの秘書になぜ!!まさか、、もしそのまさかだったら、、』

大吾『なんでパパは今日いないんだろう、、』

翌日、大理石に囲まれた空間で、三つの木箱が開いた。あの重い扉の向こうへ。あそこからは二度と裕人の姿は出ない。隆也、明、大吾、その他園児は一度裕人の顔を見た。蓋は閉じられ、重い扉に木箱は向かっていく。ただそれを大吾は見つめることしか出来なかった。扉は開く。ゆっくりと ゆっくりと

裕人は重い扉の向こうへいった。この世からの旅立である。

『それでは、、合掌』

大吾にとって、大切な人が二度、失った瞬間だった

あれから三年達ち、大吾、隆也、明は幼稚園を卒業する。

卒業式で、大吾が甘えていた先生が名簿を読む時、無いはずの名前を全ての園児を読み終えた後。

『高橋裕人』

強い口調でいい、裕人の卒園証書はなぜか大吾が受け取った。

入学式

明、大吾は同じ小学校に入学した。一方隆也は親の影響で愛知県の小学校に受験で合格。いつか大吾、明も隆也に追いつこうと約束した。

二人は同じクラスだった。席は隣。担任の先生は若くてかっこいいが、裕人に似ている気がした。しかも苗字は高橋。二人は目を合わせた。

二人の予感は的中した。入社式後にもかかわらず二人だけ呼び出された。

高橋先生『改めて。俺は担任の高橋賢太!よろしく!ま、実ははじめましてというよりは、、』

『てか二人、同じ幼稚園だよね、しかもどこかで見たことある気がするんだけど、、』

明『岐阜第一幼稚園だよ!』

先生『あー、、高橋裕人って知ってる?』


                    続く


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