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【本との出会い48】「手塚治虫の山」~手塚作品と山、登山のつながりに「ハッとする」読み応え。~

恩師から頂戴した書籍。
これまでも、貴重な歴史資料、山、世界史にかかる書籍などを頂戴してきたいが、マンガは初めてでしょうか。

手塚治虫と言えば、私の世代では「ブラックジャック」「火の鳥」など。
自然や登山、身近な山を題材にした作品があったとは認識がありませんでした。

マンガなら読みやすいと、ページをめくり始めましたが、10作品を読み切るには結構な時間がかかりました。
マンガといっても、そのセリフのひとつひとつ、描写の情景の細部まで目を向けずにいられなかったからです。

1.文庫版のマンガとして発刊された書籍の初版は2020年とは。

私がいただいたこの本は、裏をめくると初版の本でした。
発行は2020年の7月。

後ろを見ると、手塚プロダクションと「山と渓谷」社が共同出版したように見えます。

手塚氏が亡くなったのが、1989年。すでに30年以上の月日が経ちつつも、偉大な作家、偉大な作品はこうした形で私たちに大切な何かを語り掛け続けるものなのですね。

2.マンガの中身について

山、登山に関わる10作品の短編が綴じられています。
どれも、力強いメッセージを含んだ作品です。 

古くは私が生まれる前の作品も。偉大です、手塚治虫。

①昭和新山のおはなし

その中でも、「昭和新山」をテーマにした作品が妙に刺激になりました。
昭和新山と言えば、私らが修学旅行で北海道に行った際、集合写真を撮るまさに観光地の代表のような場所。

お土産屋、食事処もたくさんありました。

ですが、その成り立ち(いつの火山活動で山が発生したかなど)については、まったく記憶に残っておらず、この作品を見て知ったようなわけです。

「火の山」という作品は、火山活動による地殻変動、自然の変化などを記録しつづけた三松さんという方、その手伝いをした流れ者の男を主人公に、どういう自然現象を経て、その山が発生したのかを描いています。

時は、ちょうど太平洋戦争。
終戦とほぼ同じく、火山活動が終わり、「昭和新山」として誕生したと。

山を崩して、金に変える輩から山を守るために、三松さんが私財でこの山を買った話でした。

今の昭和新山はどうなっているのか。WEBで調べてみました。


かつてのように、火山活動による噴煙、蒸気などが近くで見れる観光地なのでしょうか。
戦時中ゆえに公表されることはありませんでしたが、地元の壮瞥(そうべつ)郵便局長であった三松正夫は、新山が成長していく詳細な観察記録を作製。これが今に残される「ミマツダイヤグラム」。
三松正夫は火山となって畑作ができなくなった土地を購入し、保全にも努めたのです。現在も昭和新山は三松家の私有地で、火山の誕生の様子などは「三松正夫記念館」に展示されているのでぜひ見学を。
ドラマチックな誕生をした昭和新山は、「日本の地質百選」に選定されています。
昭和新山は山麓から見上げるだけで入山は禁止
山麓には散策路も整備されているので、そこから見上げることになります。
麓にある「昭和新山美化センター」には、昭和新山ができる前とできた後の地形の立体模型があり、いかに広い土地が隆起したかがよくわかります。
また、山麓で行なわれる『昭和新山国際雪合戦』は北海道遺産に選定。

WEBより

三松さんの功績が、資料として展示される施設もあるようです。
そして、今も噴煙をあげているのだとか。
昭和にできた山を令和に訪れるというのもいいかもしれません。

②モモンガのムサ(動物を主人公にした手塚らしい作品からのメッセージ)

クスノキの大木で生まれたモモンガの成長を描きながら、狩猟をする人間との山を舞台にした戦い、山は、木は、誰のものかを問うメッセージがこめられていました。

山にも命があり、木にも命がある。命あるものには、魂がある。
そんな手塚氏のメッセージなのでしょうか。

3.なんと、「手塚治虫の○○」シリーズがあるではないか。

恩師からいただいたこの本だけでも、結構な驚きと興味深さがあったのですが、同様のシリーズでいくつか発刊されておりました。

ヤマケイ文庫。山の文庫の出版社なのでしょうか。

自然をテーマに分類した短編集として、見事なシリーズです。
1冊ずつ、買って読んでみようと思います。

この漫画たちは、書斎の本棚に並び、子供たちに読み継がれていって欲しいと思います。

最近、山の遭難、山の事故、多いように感じます。
装備の発達、情報の簡易性、グローバル化など、いろいろ要因はあるのでしょうけど、山への配慮、慎重さ、自然の怖さの学習など、どうも物事のとらえ方が簡単になっているように思えてなりません。

山にも命がある。そして、人が山を支配統率することができないし、山に入れば、山に従い謙虚に行動するよりないのでしょう。

そんなメッセージも含まれている作品だと思いました。







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