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新・ドキュメント太平洋戦争~1941開戦 ~ こうした戦争分析は学校教育でも取り扱って欲しい~

12月4日(土)、5日(日)にNHK総合で放送された「NHKスペシャル」の番組が本当に引き込まれましたので、内容と感想を記録しておきたいと思います。

1.SNS解析のように当時の庶民の日記のキーワードを分析したという興味深い切り口

現代は、世の中でおきた事件、政治、国際問題、芸能、いろんな情報に対して「個人」という単位、時には匿名で言葉を発信しることができます。
ときには、その言葉が毒を持ち、ときには、でっちあげの情報まで、まるで真実かのように発信され、それが更に無尽蔵に拡散されていく恐ろしい時代です。

ですが、発信する側、追随する側からすれば、思いのたけを何らかの形で吐き出すことができて、精神衛生上は効果があるのかもしれません。

戦争に突き進んでいるとき、もしもSNSがあったなら、どういう道になっていったのか。戦争は回避できたのか。
興味深い考察です。

この番組は、多くの「紙」の資料。庶民の日記やメモ、軍人の日誌や手紙などのそれぞれの文書に書かれたキーワードが、開戦までの世の中や政治の動き、報道を経て、どのように変化するのかをデータ化分析して考察したという新しい切り口のドキュメントでした。


2.この書籍を読んだばかりだけに、引き込まれました「太平洋戦争への道 1931‐1941」

つい先日、読了し感想をnoteにあげたものです。
なぜ、日本は悲惨な戦争に突き進んだのか、その振り返りと分析をしっかりいないと、また間違いを起こしかねない、という歴史家たちの指摘です。

この番組は、この本から得た開戦理由や軍隊判断の状況と分析を読んでからだと、すごく頭に入ります。

何か大きなうねりのような世論、それを動かすメディア、当時は新聞とラジオくらいでしたから、その内容が真実と思い込むこと。
また、真実か疑念があっても、その疑念を表には出せない環境、ファシズムの台頭、などがあったのでしょう。

だからこそ、心の叫びを、何かに文章にして「書き留める」という行為が多かったのではないか、そんな気がしてなりません。

3.キーワード「エゴドキュメント」とは

エゴドキュメントあるいは自己語り史料とは、典型的には日記、自伝、回顧録、手紙など、著者自身について語られた史料の総称である。

番組の中に、幾度となくこの「エゴドキュメント」という聞きなれないワードがでてきました。

庶民の「日記」、軍人の「記録」など、いわゆる自分のこととして記録したものの総称でしょう。

このドキュメンタリーの趣旨は、「エゴドキュメントをデータ化した中でのAI分析と時系列の歴史的事象のクロス集計から、戦禍へ向かった自国の判断軸と大きな空気の流れを考察」したものだと認識しました。

4.これだけの資料、庶民の日記が残っていることの感動

番組中、主婦、学生、事業主、それぞれが書き連ねた日記や、メモ、それらに書かれた戦争開戦前後の言葉の傾向を分析していくことで、世論がどのように動いたのかを考察しているのですが、とても感心したのは次の2点です。

①庶民が書いた日記の「字がとてもきれい」

スクショで、少し見えづらいですが、大方の日記の文章は、ペンで書かれ、しかも万年筆ではないかと思われます。

当時、万年筆を使い日記をしたためる習慣が一般的にあったことに驚きであるとともに、ほんと主婦の方とか普通のお母さんが(言い方が失礼ですが)、とても達筆でいらっしゃるのです。

そう、驚くことではないかもしれませんが、今、手書きで日記なりなにかを記録している普通の方(文章を商売にしていない方という意味)ってどのくらいの割合がいるかな、と思えば、なんか感動なのです。

この時代の方、例えば私の母のことを思い出してみると、やはり字はうまかったし、何かにつけ、何かに「書いていた」ことが多かったように思えます。

今と違い、スマホもブログもない時代、気持ちを何かにつづっておくには、やはり手書きで日記を書くことしか手段はなかったというのはわかりますね。


②軍人や、徴兵された方の手紙や日誌などの文章力が知的

番組中には、将校が軍部で記録していたノート、帳面も資料として使われています。
多くは、博物館、図書館等に貯蔵されている貴重なものなのではないでしょうか。

当時、職務として当然のことだったのかもしれませんが、将校が考察していたこと、組織が動くことへの自分なりの考え方、のようなものがその資料に書き連ねられているのです。

その文章の「書きっぷり」が実に見事なわけです。

特に将校の文章力はすばらしいです。
そういった軍事訓練もあったと思いますし、参謀になる方は、基礎学力としてそういうものを見につけた方がなれる立場だったのかもしれません。

実は開戦には反対しているし、その危険性とか情報をどうか共有して欲しいという姿勢も見て取れます。
直で、それが意見として出ると、自分の身も危ない、そんな空気感もあったのでしょうね。

5.今、戦争の記録、証言から、私たちができること。やらねばならぬこと。

戦争を体験した方が、どんどん減少しています。
そうした方が、自らの命の限りが見えてきたなかで、ずっと抱えてきた戦争への思いや悲しみ、そして事実を自分の口で語り始めたのは、まだ10年くらいなのではないでしょうか。

戦後75年、開戦から80年たつなかで、もう戦争を決してしないように、体験者や遺族の方が多くを語り、物証となる文書を公表してきているように思えてなりません。

今、自分たちができることは、こうした番組を通じてでも、多くの現実と知識を得て、戦争の現実を知り、人に語り、そのことで今後決して戦争が起こらないようにする自分の役割を知ることなのではないでしょうか。

6.NHKの特番

NHKでは、開戦80年を機に、これまでの戦争関連の再放送を含めて大キャンペーンを実施しているようです。
年末年始にかけて、興味深い放送が連発されます。

7.こどもたちは、戦争をどのように学んでいるのだろうか。

私たちが子供の頃は、まだ戦争についてこういう番組は見ることができませんでした。

終戦から20年、30年という年月。体験者、戦地で戦った方も多く、そのあまりの悲惨さから、口をつぐんでいた方が多くいらっしゃったと聞きます。

そのため、歴史教科書にしても、戦争については、その発端や条約内容、年号や人物の暗記くらいしか内容はありませんでした。

歴史離れが顕著であること、多く指摘されていますが、当時の学校教育のせいでもあると思います。
その反動もあって、私たちの年代は、今になって戦争について多くを知ろうとする風潮になっているようにも思えます。

今のこどもたちには、ぜひ、このような番組を見せて、大局として戦争とそれに翻弄されつづけた国民の現実を知ってほしいなと思いました。




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