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「みんぱく映像民族誌」でバーチャル・フィールドワーク

勝手にプロジェクト化の趣旨説明

深夜に新しいプロジェクトを立ち上げます。
題して、「みんぱく映像民族誌でバーチャル・フィールドワーク」。
ここでの「みんぱく」とは、人を泊める施設のことではなく、
大阪府吹田市万博記念公園に位置する国立民族学博物館の略称です。

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万博の、太陽の塔の裏に位置しています。
イマイチわかりにくい写真しかありませんでした(笑)。
※5月6日まで休館中です(再開日は暫定)。

「みんぱく」には、約60人の常勤教員と、そのほか多くの非常勤研究員
が所属し、文化人類学や民俗学、民族音楽学、言語学などの分野から
世界中の人間文化について研究を続けています。
博物館でありながら、研究所であり、大学院生も指導している
日本でも珍しい大規模な研究機関です。
現在カミノは機関研究員(非常勤)としてここに勤務しております。
ただしこのnoteでの発言はあくまでカミノ個人の考えに基づくものです。
充分にご理解ください。

さて、そんなみんぱくでは1974年の創設以来、
世界中の多様な文化を映像で記録し、紹介する取り組みがされてきました。
そうした映像の、学びの場での利用を促進するために
2010年よりDVDシリーズ化されたのが「みんぱく映像民族誌」です。

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みんぱく映像民族誌 DVDシリーズ(全37集)
現在はコロナで休止中ですが、平常時は研究・教育目的での
利用に対しては貸し出しのサービスも行っています。
来館すればブースで視聴することができます。
詳しくはみんぱくのサイトをご覧ください。

世界の情勢は日々どんどん変わっています。
いまのコロナの状況を見ていても、
明日には天地一変しているような地域も少なからずあるように思われます。
そんななか残念ながら、祖先から受け継がれた生活の知恵や
儀礼、芸能が、変容したり消えてしまうことも多々あるでしょう。
そんなときに映像記録が持つ力はさらに大きいものに
なっていくといえます。

文化人類学、民俗学を学ぶ者にとっては、
フィールドワーク(現地調査)は欠かせません。
しかし今のコロナの状況では本当に出かけられない。
今こそ聞き取らなければならないことがある、
今しか見られない現場がある(コロナ除けの行事など)、
今記録に残していかなければ、刻々と変わる状況を
誰がどうやって後世に伝えるのか?と思うと、
戦場カメラマンのように現地に出向きたい気持ちになるのですが、
私の調査対象はお年寄りであることが多いので
今はなおさら堪えなければならないと思っています。

先輩方は今の時間に執筆活動に臨むよう叱咤激励して下さいますが
日々新たな発見に出会うことのできる「フィールド」を
走り回っていた者としては、正直、出かけられないことを
ポジティブにとらえるのはかなり辛い事です。

そこで、「みんぱく映像民族誌」を使って
新しい土地に出掛けたような気持ちになって発見や疑問を得る
バーチャル・フィールドワークを始めてみることにしました。
37集あるDVDを片っ端から見て、
目に映るもの耳に入る音を書き取り、
発見や疑問をたくさん得て、
その巻を担当したみんぱくの先生、もしくは関連分野の研究者を
メールで質問攻めにする(笑)。
そして、関連書籍を探して読む。
映像民族誌の作り方も、人のものを見させてもらうと大変参考になります。

実はこの勉強方法、大学院の受験のときにもやったことがあるのです。
そのときはビクターの『世界民族音楽大系』
日本の伝統芸能(どこから出ているシリーズか失念しました)
韓国KBS製作の『韓国の美(한국의 미)』
『韓国再発見(한국재발견)』というVHSのシリーズを
片っ端からそれこそ何十巻と見ました。
(今思えば『新日本紀行』を見ておけばよかったな)
見るだけでは忘れるので、ノートにクロッキーとメモを取りまくる。
そうするとまるで、その土地に行ったかのように記憶によく定着します。
以前ドキュメンタリーの映画監督のもとに通って、
韓国シャーマンの儀礼の生データを延々と見せてもらったこともありました。
そのときとったノートは宝物です。

実際のフィールドでもそうですが、映像ではとくに、
人は「見えるもの(見たいもの)だけ見ている」と言います。
前提となる知識やその分野への興味関心が無ければ、
映像に映っていても見えてこないものがあります。
二度三度見るうちに、目からうろこが落ちるかのように
見えてくるものの姿があることもあります。音もそうです。
映像からは嗅覚・味覚・触覚を得ることはできませんが
手元で絵に描いていると、なぜか少し感じられるような気がしてきます。
どこまで映像のなかに没入できるか。挑戦してみます。

そんなわけで、noteのこのプロジェクトでは
「みんぱく映像民族誌」の鑑賞ノートを紹介していきます。
コロナ明けで通常通り再開した暁には、ぜひ直接みんぱくに
足を運んで展示や映像をご覧ください。

<続>

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