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20180311 吉本超合金

三月に気付けば猫が寄り添って
まだ知らぬ春の暮らしのあることを
春光にパンをちぎって安心す
ひかりとはあかりなのだと三月に
誠実を推し量るよな桜餅

昨日放送された『IPPONグランプリ』を流しながら書き物を諸々片付けている。芸人たちによる大喜利対決である。わたしも大喜利をいつかやってみたいと思ってしまう。今2回目を観ている。芸人たちの発想力、瞬発力。緩と急を巧みに使う。こちらまで呑まれてしまう。

さて『吉本超合金』という番組を皆さんはご存知だろうか。テレビ大阪と吉本興業の合同制作で、1997年から1999年まで放送されていた。出演はFUJIWARAと二丁拳銃。1999年からはFUJIWARAの2人となり、『吉本超合金F』とタイトルを変え2002年まで放送された。毎回様々な企画で日曜の深夜を笑いで包んだ。ゲストはサバンナ、野生爆弾、バッファロー吾郎、陣内智則、中川家、フットボールアワーなどと、今をときめく芸人たちがとんでもなく身体を張っていたバラエティ番組だ。グラフィックデザイナーの原田専門家が手がけた番組ビジュアルもお洒落でかっこいい。

企画は例えばこんなふう。全身タイツ姿の FUJIWARAと二丁拳銃が、難波の街に繰り出し一般人に牛乳を飲ませて、面白いギャグを見せて牛乳を吹かせる『超合金牛乳ファイト』。4人が出資した10万円を持って、そのうちの1人が青い鳥となってお金を持って逃亡、その資金でやりたい放題する『超合金幸せの青い鳥を探せ』。謎の男の指令を聞いて4人がそれを執行する『超合金秘密指令』。どれもなかなか破天荒だった。

いつしかの『秘密指令』でFUJIWARAの原西孝幸が、『頑固な主人で有名なラーメン屋に入り「マズイ!」と言って逃げろ』という指令を見事にこなしていたのを今でも覚えている。確かお店にモザイクもかかっていたから、おそらくはじめはアポなしだったのでは…。本当に「マズイ!」と言ってダッシュで逃げて、あの足の早かったこと…。

惜しまれながら放送終了した『超合金』だが、昨年秋から大阪で活躍する若手芸人・アキナをメインに迎え、『吉本超合金A』として新たにスタートした。昔の『超合金』ファンとしては少し不安がよぎった。あの頃の自由極まりない企画の数々は、今は実現できないものも多いだろう。特に一般人を絡めてゆくものなんて、どこまでできるのだろう…などと余計な心配をした。

余計な心配は、要らぬ心配だった。先日放送された『坊主超合金』。アキナの山内文和をはじめ坊主の芸人4人と、一般人がゲームをして、芸人に勝てば1万円を進呈、負けたらその場で一般人だが容赦なく坊主にするという企画である。新世界のおじさんと対決し、おじさんが負ける。芸人がおじさんの頭をその場で刈る。芸人がおじさんに鏡で坊主姿を見せると、おじさんは「まだいけるやろ!(もっと刈れるだろう)」と突っ込んだ。芸人は「そっちかい!」とまた突っ込む。おじさんは完全な一般人。遠巻きから笑っている奥様が画面端に映る。

別日に放送された『極寒スポーツ超合金』では、ちゃらんぽらん冨吉の司会のもと、アキナをはじめとする芸人たちが極寒のテレビ大阪の屋上で(見るからにとても狭い)オリンピックを模した競技を繰り広げる。タバスコのかき氷をリレーで食べて食べた量の多い方が勝ちとか(これ画面がとてつもなく汚かった※褒めています)、裸で氷のコースを滑り待ち構えている白ブリーフを履くというリュージュみたいな競技とか(これもまた画面が※以下略)。状況はめちゃくちゃで、まためちゃくちゃ低予算なこともよくわかるところもじわじわ受けてくる。ニッポンの社長・ケツによる妙に上手い大会テーマソングや、妙に高揚しているちゃらんぽらん冨好の空回りっぷりも絶妙だ(超褒めております)。久しぶりに心から笑った。元気が無くなったらこれを見ようと思って、録画を残している。

わたしはテレビが大好きだった。バラエティだけに限らない、ドラマや音楽番組や情報番組。わたしたちが最も身近である映像媒体で、その時の最先端を、最先端にいるものたちに託して魅せる。テレビは格好良くて魅力的なもである。そう放送の世界に憧れて、飛び込んだものだ。

テレビが好きだったわたしだけれど、最近は少しそれから距離を置いている。キャッチーさばかりが推し量られ、ともすれば虚実のような番組がある。辟易する。虚実はやらせだとかいうことではなくて、こういう感じでしょうとマーケティングしただけの番組があまりにも多いのではということだ。SNS全盛時代、創り手よりも新しいものを見つけて発信している人たちがいる。それに乗りかかってもいるものだから、テレビ、本気なの?って思ってしまう。あるものの面白さだけじゃなくて、新しいことを自ら探さなきゃ。

わたしが働いてきたテレビ番組制作会社には、本気の人たちがいたし、今もいる。しかしその本気を貫くと、様々な状況と戦うことを強いられる。新しいことをテレビで実現するのはとても難しい。わたしは現場を離れたが、今でも応援している。

わたしがお笑い番組をどうしても好きなのは、そこに芸人たちの本気が如何にしても介在するからである。1秒でも多く画面に映る。自分の印象を残す。輪だけではなく、個の熱意がある。そこで作り手が「自由にやっていいよ!」という最高の舞台を与えると、かれらは輝く。

『吉本超合金A』、とっても面白いので観てください。テレビ大阪にて日曜日深夜0:35分に放送されているので、月曜が憂鬱で眠れない夜にはかれらと一緒に笑いましょう。

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