【小説】マザージャーニー / つきる秋 5
本作は2020年「News Picks New School 大友啓史×佐渡島庸平『ビジネスストーリーメイキング講座』の6ヶ月間で作り上げ、kindleには販売中の小説です。
この6ヶ月間は私にとって、転機となる半年間でした。知りたかった学び、出会いたかった仲間、本当に楽しく作品と向き合い続けることができました。
本作を完成させるにあたり、大友啓史監督、株式会社コルク 代表取締役 佐渡島庸平さんはじめ、同じ受講生の仲間たち、運営スタッフのみなさま、そして新たなチャレンジを応援してくれた夫より、多くの助言をいただきました。
note用に少しだけ微修正してます。
ぜひご覧くださいね。
↑はじめからはこちらより
↑こちらに全話まとまってます
今日だ。
全ての稲刈りが終わった。
終わった途端、秋の冷たく、長い雨が続くようになった。お父さんやケンさんはお米の乾燥や出荷準備で、作業場にこもるようになった。刈って終わりではない。雪が降るまでにと、まだまだ忙しそうだ。
私は部屋を簡単にそうじした。
旅の終わりは、農業を始めたあの日と同じように、と体操服に着がえた。
鏡に映る自分を見て、今になって初めてお腹部分に縫い付けられていた名札の縫い目が、ガタガタだったことに気付いた。お母さんがいた痕跡。
こんなとこにも、がんばってるお母さんはいたね。
「大谷双葉」と書かれた名札を、指でなぞった。
「双葉……」
春、雪解けでどろどろの土から、泥まみれになりながら芽を出す双葉。その美しいこと。泥まみれでも、美しくて、強いんだよ。
名前の由来を調べる宿題が昔、あった。
お母さんは隣に座って、「双葉」と書かれた漢字をなぞりながら教えてくれた。
私は、鏡に映る自分に向かって、にっと、口角を上げてみた。
***
お母さんの農業日記を手に、そのまま雨降る外に出た。
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