【マザージャーニー】めぐる、冬 1

本作は2020年「News Picks New School 大友啓史×佐渡島庸平『ビジネスストーリーメイキング講座』の6ヶ月間で作り上げ、kindleには販売中の小説です。

この6ヶ月間は私にとって、転機となる半年間でした。知りたかった学び、出会いたかった仲間、本当に楽しく作品と向き合い続けることができました。
本作を完成させるにあたり、大友啓史監督、株式会社コルク 代表取締役 佐渡島庸平さんはじめ、同じ受講生の仲間たち、運営スタッフのみなさま、そして新たなチャレンジを応援してくれた夫より、多くの助言をいただきました。

note用に少しだけ微修正してます。
ぜひご覧くださいね。

↑はじめからはこちらより

↑こちらに全話まとまってます



ヨワオのことばを思い出した。

『ずっとねむくて、ねて、ねて、そしたら起きれるようになった』


……ほんとだ、ねむくて、ねむくて……


―ママ、今日、となりでねてもいい?

―ママじゃないよ。もう恥ずかしい年齢だから、私のこと、お母さんって呼びなさい。



遠くからは、かすかにお父さんの声が聞こえたが、私は暗くて深い眠りの沼に沈んでいった。


薄目を開けると、白い天井と、蛍光灯が見えた。体中が痺れるように痛かった。

まぶたが重くて、また目を閉じた。



それを何度かくり返した。
ある時は、真っ暗だった。ある時は、白い光の中だった。
何度目かで薄目を開けた視界の端に、お父さんが見えた。



「双葉!」

お父さんは私にがばりと覆いかぶさり、顔をのぞき込んだ。

「双葉!」


お父さんの顔が歪んで消える。
ここがどこで、いつなのか、分からなかった。

何回か夜を越え、朝を迎えた。あんなに家にいなかったお父さんが、いつもそばにいる気配がした。日ごとに私に繋がれていた管が減っていった。



そしてやっと、状況が分かってきた。分かってしまった。


「……ああ……」


世界がゆがんでく。


「お母さんに……会えなかった……」

私はお母さんに、拒絶されてしまった……。死ねなかった。お母さんに会えなかった。目の端に、熱い液体を感じた。

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2,030字

■この航海はどんな旅? 言葉の力を通じて、争いのない、心うごく世界を作る道のりを共有する、「好奇心と…

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