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富士山に登ったはなし①


13年前、富士山に登った。


結婚二年目だったか、子どもはいなかった。
なぜ登るような流れになったのかは覚えてないが、その頃、元夫と色々なところに旅行に行っていたように思う。

夫婦で富士山頂を目指した。
その頃のわたしはCanonの5D markⅡが相棒で撮ってはブログに載せるのを楽しみにしていた。写真が本当に生活の一部だった。

真夜中に家を出て、高速で登山口を目指す。今はどうなっているのか分からないが、当時、須走登山口は、路肩に車を停めてそこから入り口まで歩いてのスタートだった。

須走ルートは、最初緑豊かななだらかな道を抜けていく美しいルートだった。
写真を撮っては歩き、写真を撮りたい時に止まる。あとからこの休憩多めのゆっくり登りのおかげか体調も崩さず登れ、先にさっさと登っていった元夫は7合目を過ぎたあたりから高山病にかかる。

何合目だったか、風景を撮っていたら突然、山小屋のおばちゃんにすごい剣幕で怒られた。

「写真を撮りに来たのか、山に登りに来たのかどっちなんだい!?」


そのあとなんだか打ち解けたが、この言葉はずっとそのあとも刺さり続けた。
カメラを持たないと山には登らないだろうし、山がなかったら写真を撮らないだろうし。

写真はなくてはならないものだった。


その後、登頂し、高山病にかかって動けなくなった元夫を引きずりながら抱えて、暗闇の中を戻ったのは人生の中でも一番疲れた経験だった。
そのとき数多く撮った写真も、外付けHDの破損で今はもう残ってないが
「アンセルアダムス目指してるんですか?」と訊かれるような美しい風景写真だった。


写真と共に生きる覚悟のようなものをこの時の富士登山では教わった。
ただ、あまりにキツかった下山が、富士山には一生に一度登ればいい、二度と登らないと思わせた。


SIGMA DP1 Merrill



②に続く。

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