乗り越えられない。
元夫と最後に旅行に行ってからひと月以上が経つ。今朝、月々の養育費が振り込まれていた。何時間も話し合いをして、ちゃんと考えてほしいと言った甲斐虚しく彼からの返事はなかった。子どもたちと会うことをしないのであれば、養育費だけ一括で払って、縁を切ってほしい。「分かりました」そう言って頭を下げていた彼は、こちらの要求を飲むことをしないだろう。
心の支えがない。忙しくすることでしか埋められないが、忙しくすることで何の余裕もない。とりあえず、毎日歩く。どうにか食べる。泣くのを我慢する。書類書かなきゃ勉強しなきゃ、学校行かなきゃ。以前、出来ていたことが負担になっている。
うまくやるってなんだろう。絶不調でも人に言えない。大丈夫です、大丈夫です。精神科医にも言う。"大丈夫です、良くなりました"。
シャクナゲが綺麗。
退院したら、新緑の季節になっていた。葉桜から最後の抜け殻が降ってくる。庭のつつじも咲いている。今の家に引っ越してきた頃、庭の真ん中にはシャクナゲの木があって、春になると美しいピンク色の花を咲かせていた。
わんぱくな子どもたちが木に登り、ぶら下がり、しまいには折ってしまい、わたしのお気に入りのシンボルツリーは無くなってしまった。
写真にはよく撮ったから残っているけれど。
周りはわたしを支えようとしてくれている。長男の同級生のお母さんたちからよくLINEをもらう。「◯◯くん、なんであんなに優しいの。今日も息子が困っているのを声かけてくれて助けてくれたみたい。手、ケガしたみたいだけど大丈夫？」「泣いてたときに励ましてくれて、親は声かけられなかったからほんと助かった。優しいね」
母の感情の機微と共に育ってきた彼は、人一倍優しく、正義感が強い。わたしの入院中、すべての家事、弟たちの世話を引き受けてくれた。ありがとうとお礼を言うと、普段からやり方教わっておいてよかったよ、と母を褒める。
乗り越えられない、と思う。
自分ひとりでは。元夫を失った喪失感に日々心がやられているが、支えてくれる人たちがいる。こまめに連絡をくれる友人、気を配ってくれる職場の人たち。そして子どもたち。
もう無理だ、もう無理です苦しいですを繰り返して、大丈夫、いまは大丈夫。また無理になるかもしれないけど今は大丈夫。
とりあえず、仕事して、しっかり食べて、睡眠薬飲んでしっかり眠る。身体を取り戻そう。
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