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トカゲのイメージが覆された日

私がトカゲをこんなに好きになったきっかけは、保育園児の時にミクロネシアを旅してからだ。
それまで北国育ちだった私は、小さなカナヘビとミシシッピアカミミガメ以外の爬虫類をろくに見たことがなく、「なんか小さくてひんやりしたやつ」以上の感情は持っていなかった。無機物と同じ存在だった(無機物をこよなく愛してる人には申し訳ないけれど)。
しかし、南の島で見たトカゲは、何という種類のトカゲだろう、チューブから出したままの絵の具のように鮮やかな緑色で、当時の私が両手で持つのがやっとなくらいに大きくて、今まで見ていた爬虫類は何だったのだろうと衝撃を受けた。友達になろうとして父や私が捕まえようとするも、彼らは目にも止まらぬ速さで木を駆け上がってしまった。こんなに足が速く、きれいな色で、心の通じなさそうな生き物が同じ地球上に生きていることに、生命の神秘を覚えた。
と同時に、手の届かないトカゲを追うのは潔く諦め、泳ぐ時と食べる時と寝る時以外のほとんどの時間はヒキガエルのような巨大なカエルを捕まえるのに専念し、ひんやりとして柔らかい爬虫類や両生類の感触の心地よさを知った。
その時間が原体験となって、今でも私はトカゲを見ると強敵を前にした時のように胸が躍り、カエル(特に大きめなカエル)を見ると捕まえて愛でたい衝動に駆られるのである。

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