生活保護を受給しながらギャンブルをすることの問題点

生活保護制度によって、扶助を受給しながら、その金銭を使ってギャンブルをする受給者がみられます。このことについて、何が問題なのか考えてみましょう。

そもそも生活保護制度とは

そもそも生活保護制度とは、日本国憲法第25条に書かれている、国が国民に対して「健康で文化的な最低限度の生活を保障する。」ための制度です。

また、生活保護法1条には、「国が生活に困窮する国民に対し、必要な保護と、自立を助長することを目的とする」とうたわれています。

さらに、厚生労働省のHPを参照すると、生活保護制度は「資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度です。」とあります。

このようにそもそも生活保護制度は、健康で文化的な最低限度の生活ができない人たちを支援する制度です。

そのため、ギャンブルは生活保護で受給したお金の使い道として認められていません。

生活保護受給者がギャンブルをしたいなら、保護費から使うのではなく金融機関でお金借りるほうがいいのかもしれません。

生活保護を受給しながらギャンブルをすることの問題点

それでは、なぜ生活保護を受給しながらギャンブルをすることに問題があるのでしょうか?

どんな特性があるのかなどを見てその問題点を考えてみたいと思います。

ギャンブルとは何か

ギャンブルとは「より価値のあるものを得ることを目的に、自分にとって価値あるものを危険にさらす行為」とされています。

日本ではギャンブルは一般的には違法ですが、公的に認められている公営ギャンブルというものがあります。

それらは正式には公営競技と言われており、競馬、競輪、競艇、オートレースの4つがそれにあたります。

また、パチンコ・パチスロは国内法では遊技とされていますが、公営ギャンブル同様、賭博性が高いため、今回検討する場合にはギャンブルと同様と考えます。

ギャンブルの特性

ギャンブルには、「偶然に財産的利益を得ようとする欲心」、言い換えれば射幸心を煽るという特性があります。

そしてギャンブルをすることによって得られる射幸心の興奮と適正につき合っている間は適正な娯楽となるわけですが、それが習慣化し、より強い興奮を求めて多額の金銭を掛け金にするようになるとギャンブル依存症になる可能性があります。

ギャンブルをすることの問題点

法律で認められている公営ギャンブルや国内法では遊技とされているパチンコ・パチスロをすること自体は違法ではありません。

前述したとおり、適正に射幸心と付き合い、適度な掛け金で楽しむ限りにおいては娯楽として問題はありませんが、その頻度や掛け金が度を越えたものである場合はギャンブル依存症の疑いがあります。

そのことで返済計画が成り立たない借金や無計画な資産の売却などをして掛け金を作り出すようなことをしている場合にはギャンブル依存症である疑いは非常に強いと考えられます。

このように、ギャンブルはその射幸性ゆえにギャンブル依存症を生む可能性があるという問題があります。

生活保護を受給しながらギャンブルをすることの問題点


そもそも、自身では生活保護は健康で文化的な生活ができない人に対してその不足額を扶助する制度なので、その受給した金銭からギャンブルの掛け金を捻出すること自体への理解が一般人には得られにくいという側面があります。

生活保護の扶助は当然税金から支払われるので、簡単な構図から言えば、税金がギャンブルに支払われているということになるからです。

一方で生活保護受給者の文化的な生活の側面から考えると適正な娯楽としてのギャンブルは認められるのではないかとの考え方もできます。

しかし、そもそも自己の収入(収入がない場合も含む)では生活が成り立たないことから生活保護による扶助を受給しているのですから、娯楽として充てる掛け金の額も限られるのではないかと考えられます。

このことから、度を越えた掛け金でのギャンブルを行っている場合には、ケースワーカーや自治体の職員から指導や指示が行われることになります。

ギャンブルによる収入を申告しない場合の問題点

ギャンブルの結果によっては、当然収入が得られる場合が想定されます。

しかし、その収入を申告しない場合が見受けられると言われています。

これらの収入は、本来適正に報告がされ、その分は生活保護の扶助額から差し引かれるべきです。

しかし、一般的にこのような申告は適正に行われていない場合があると言われています。

生活保護を受給している者は、収入について報告する義務があります。

これを行わない場合には、不正受給として扱われ、場合によっては告訴される場合もあります。

収入を報告しなければいけないのは、ギャンブルで得た収入に限らず働いている場合でも同様です。

働きながら生活保護を受給する問題点については、下記を合わせてご覧ください。

厚生労働省の調査の実態

厚生労働省の調査によると2016年度中に自治体が生活保護受給者に対し、パチンコ等を行うことに対する助言や指導・指示を行った件数は3,100件でした。

そのうち、最も多かったのは「パチンコ」(79.4%)の2,462件で、約8割を占めています。

次いで、「競馬」が243件(7.8%)、「宝くじ・福引」が132件(4.3%)と続いています。

また、ギャンブルでもうけたと申告があったのは464件で、合計金額は4億260万円でした。

内訳をみると、「宝くじや福引」が215件(3億8675万円)で最も多いという結果でした。

ギャンブルでもうけた場合、収入として申告する必要がありますが、申告をせずに不正受給した金額は3,056万円に上っています。

厚労省は「社会常識の範囲内でパチンコなどすることを一律に禁止することについては、慎重な検討が必要」としています。

まとめ

生活保護は健康で文化的な最低限度の生活を送るための支援の制度ですので、その受給した金銭で過度にギャンブルをすることには問題があると考えられます。

また、ギャンブルで収入があった場合には、適切に収入として報告すべきです。

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