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街中で妊婦さんに気づいたことはありますか?

「太っている私は妊婦と間違えられて、優先席をゆずられた」なんて話があるけれど、それはふくよかな人にも妊婦さんにも失礼だと思う。助産師をしていると妊婦さんは妊婦さんだとわかる。でも、私は高校生、ましてや看護学生だった大学生の時も、街中にこんなに“妊婦さん”があふれていることに気づかなかった

こういうネタが好きじゃない。

最近、あ、あの人妊婦さんだな
と後姿でなんとなくわかるようになった。
お腹の重さを感じているような歩き方。足をちょっと外側に出して少しがに股。なによりお腹を圧迫させないようなワンピースや、それに加えて足を冷やさないようにレギンスを履いていたり。
どうだろう、と近づくと、お腹が大きくなっていた李、バックにマタニティマークがぶらさがっている。
当たった、と思いながら無事にお産になりますように、と心の中で話しかけるようにしている。

意識せずとも目にはいるようになったからだろうか。
産婦人科で多くの妊婦さんに接するようになったからだろうか。
駅で、電車の中で、スーパーマーケットで、カフェで。
普通に買い物をしていたり、吊革につかまっていたり、小さい子を連れていたりする。
街中にはたくさんの妊婦さんがいるんだな、と思うようなった。

今回まとめたいと思った内容は2つ。
お腹に新しい命を抱えた妊婦さんは、仕事に行ったり、お子さんとお出かけしていたり、買い物をしていたり、街中にたくさんいて、普通に周りにいる存在だということ。
そして、お腹が大きいだけが妊婦ではないということ。

でも、正直なことを言えば、私は大学を卒業するまで、妊婦さんが街中にいると感じたことがなかった。
1回も思い出も、記憶もない。
高校生の時から女性の健康に興味があったし、看護学生のときには少しずつ助産師への憧れも抱いていた。
それでも、目に入ってこなかった。
正直、妊娠してお腹に赤ちゃんがいる人は、動くのは大変だから家で安静にしているのかな、産休もあるし、と思っていた。
そもそも、妊婦という存在を意識していなかったと思うし、その妊婦さんひとりひとりのお腹の中に新しい命があるということも実感がもてなかったのかもしれない。
今は、妊婦さんのお腹をみると、妊娠何週かな、と考えたり、重そうだな腰いたくないかな、とか、あの中に赤ちゃんがいるんだな、って愛おしく思えるのに。

きっと、普通の人は同じように思っているんじゃないだろうか。
妊婦さんに気づかないし、マタニティマークをみて、あ、と思うくらい。
お腹の中に新しい命を抱えていることまで想像つかないと思う。

私は助産学性になって、分娩介助に携わってから、分娩直前の妊婦さんのお腹の大きさや形、
そこから赤ちゃんが出てくるという場面を目の当たりにしてから
お腹の中で、肺、胃、腸、膀胱とたくさんの臓器を圧迫しながら、赤ちゃんを抱えた子宮が大きくなりお腹が大きくなることがイメージできるようになったと思う。

お腹が大きい=妊婦、ではないことも、正直知られていないと思う。
そもそも、妊娠してお腹が外面的に大きくなるのは
赤ちゃんも成長してきて、子宮も増大して腹部におさまりきらなくなる妊娠4.5か月くらいだ。
妊娠は10か月なので、折り返し地点。
実はそれまでの期間に、つわりは終わっていることが多い。
つわりは平均的に妊娠4週から15週、つまり妊娠1-4ヶ月におこりやすい。
その時期はまだお腹も大きくなく、症状があっても、見た目では妊娠していない女性と同じだから、街中や仕事場で苦労する女性も多いときいた。


妊娠する=体重が増える、ということは多くの人が知っているだろう。
でもそれは、いわゆる脂肪が増える肥満、じゃない。
赤ちゃんが育つのだから、赤ちゃんの体重や大きくなる子宮、胎盤、子宮の中の羊水だって含まれる。なんなら血液量も増加するし、母乳のために乳腺も発達する。
加えて、できれば増えてほしくないかもしれないけれど、母体としてエネルギーの余剰をもつためや子宮のクッションとなるために皮下脂肪も増える。
実際どれくらい増えるかというと、体重増加量の目安というものがあって
厚生労働省から「妊産婦のための食生活指針」というものが出されている。
妊娠前のBMIにもよるけれど、だいたい7-12㎏増加する。
体重増加の様子は人それぞれだけど、太ったね、というように全身に脂肪がついていくイメージではないと思う。
体の中で一つの臓器がむくむくと大きくなるのだ。
徐々に大きくなる子宮に、足元がみえなくなり、腰や背中への負担が大きくなり、胃、肺、心臓も圧迫されて動悸・息切れ・胃もたれしやすくなっていく。

妊婦は太る、とか、体重増加、という言葉を使うから
なんだかマイナスイメージにとらえられちゃうのかもしれない。

「太っている私は妊婦と間違えられて、優先席をゆずられた」なんて話に私が違和感を抱いたのは、妊婦=太っているというイメージを当たり前のように植え付けているから。
そして、まるでお腹が大きいから妊婦だと思われて、優先席をゆずられる、ということは、マタニティマークってなんだっけって感じで、おなかが大きいだけが妊婦じゃないと、まだまだ意識されていないのかも、と思ったから。

マタニティマークも、お腹が大きくなるまでつけない人もいるそうだ。
妊婦ということで嫌な目でみられたり、からかわれたり、優しくされたいからだろうとみ下される経験があるともきいた。

もっと妊婦が身近に、妊婦がいることが当たり前に思える社会になったらいい。
そしたら、街中にいる赤ちゃんにだって、当たり前に存在を受け入れられる社会になるんじゃないか。
こんなに長い期間お腹で過ごして、やっと生まれてきた命なんだ、と。

日本では、妊婦や、お産や、育児が
まるで社会の影、表にでない隠されたもののようになっているように感じる。

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