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クリエイターエコノミー。今アメリカではどうなってる?

Kanako Honda / 本田 華奈子

はじめに

スタートアップへの投資を行っているDCMベンチャーズの本田です。

これまでMediumで記事を書いてましたが、日本ではnoteで記事を書かれる方が圧倒的に多い&Twitterとの相性が最高なので意を決してプラットフォームを変えました。今後思い立ったら記事を書いていこうと思うのでTwitterと合わせてフォローいただけたら嬉しいです。

この記事では米国で急速に盛り上がりを見せているクリエイターエコノミーについて書いていこうと思います。クリエイターエコノミーという言葉をご存知の方も多いと思いますが、今年に入ってから米国では毎週のようにリリース発表や資金調達ニュースが出ており急速に進化を遂げています。日本にもこのトレンドが来ることは間違いないと個人的には思っており、日本でこれがどう根ざして大きくなっていくか考えている中で先行してる米国の事例を調査してました。ただ一人で調べて考えても新しい示唆を得たり、思考を深めたりができないので、この記事で米国のクリエイターエコノミーへの投資トレンドや、主要領域について紹介し、同じくこの領域に興味を持たれている方とオープンに議論できたらなと思っています。7月29日にクリエイターエコノミーをテーマにオフィスアワーもやりますので、ぜひお気軽にご応募ください!

さて、本題です。

クリエイターエコノミーとは? Why Now?

クリエイターエコノミーとは、「コンテンツを生成/キュレーションしたり、コミュニティを運営したりする個人(=クリエイター)によって形成される経済圏」のことを指し、個人にとっては自身のスキルや情報発信等を収益化しやすくなることを意味します。Influencer Marketing Hubの調査では、クリエイターエコノミーの市場規模は$104.2B(≒約10兆円)と推測されており、今後更に成長していくと見られています。

何故いまクリエイターエコノミーが注目されているか?

インターネットサービスの発展により個人でも質の高いコンテンツを作りやすくなったこと、個人と個人が直接つながりやすくなったこと、物理的&心理的にデジタルコンテンツへの課金がしやすくなり、クリエイターエコノミーが発展する土台ができてきました。その上で、コロナによって消費者のオンライン消費が増えたり、雇用の悪化によってオンラインで収益を模索する人が増えたことで、モメンタムが加速しました。

コロナが収束したらクリエイターエコノミーは終わるのか?

意見が分かれる部分ではありますが、個人の考えとしては一定の揺り戻しはあるものの、クリエイターエコノミーの成長は今後も続いていくと思います。クリエイターが自身のコンテンツを収益化できるようになると、その流れは不可逆的であり収益化を辞めるというのは考えづらくなるからです。FacebookやTwitter等の大手プラットフォームからしてみれば、コンテンツはプラットフォームの要なので良いコンテンツを生成するクリエイターを囲い込むため彼/彼女らに価値提供するためのプロダクト開発を行い、さらにクリエイターエコノミーは成長していく、というのが考えの背景にあります。

クリエイターエコノミーへの投資トレンド

CB Insightsによると、2021年は6月4日時点で既に$1.3B(≒約1,300億円)もの資金がクリエイターエコノミー関連のスタートアップに投下されています。

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どういう領域に投資されているかと見ていくと、下記のようなイメージです。

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ロゴだけ眺めていても投資されているコンテキストを理解できないので、下記では主要3つのカテゴリについて少し深堀りをしていきます。

主要領域について

①オンライン講座サービス

この領域で投資されている企業は大きく2つに分類されます。オンライン講座を構築するためのソフトウェアオンライン講座のマーケットプレイス

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前者のオンライン講座構築のソフトウェアの中でも、all-in-one platformに位置づけられるKajabiと基本機能を提供するTeachableやThinkificがあります。Kajabiは直近評価額が$2Bと他2社と大きな差があり、この差分の主な理由はマーケティングの思想をどれだけプロダクトに入れ込んでいるかという点にあると思います。

Kajabiは、CEOのKenny Rueterが息子3人のために作った水遊び用のおもちゃを近所の人達にほしいと言われたので、作り方をシェアをするためにオンラインツールを2010年に作ったのが始まりです。当初はシンプルなツールだったが、「コンテンツを販売できるようにしただけでは売れない」と実感し、リード獲得できるように簡単にランディングページがつくれるKajabi Megaphoneをリリース。しかし顧客が感じている課題をを深ぼって理解していくと、ランディングページとオンライン講座構築ツールだけでは足りなく、顧客があらゆるサービスをつなぎ合わせて使っていることを知ります。2015年にそれまで使っていたツールを閉じて、今のKajabiをリリース。2010年からの5年間で累計GMV$500Mのプロダクトを閉じ、学びををすべて取り入れた形で一からやり直す勇気と実行力には敬意を表さずにはいられません。新しいKajabiはその後フォーム、アナリティクス、メール配信、顧客セグメント等あらゆる機能を追加し、また他マーケティングツールとの連携も容易にさせていきます。創業から約10年間自己資金で事業を伸ばし続け、2021年5月に$550MをPost $2Bで調達。直近数値では年間GMVは$1.5Bにまで拡大しているとのこと。プロダクトの進化をみて分かる通り、Kajabiはオンライン講座を本業として本格的に取り組んでいるユーザー層にハマっているプロダクトであり、他サービスと比較しても価格が若干高いのが特徴です。

Kajabi等がクリエイターに対し価値提供しているのに対し、後者のオンライン講座のマーケットプレイスは、クリエイターと一般ユーザー両方に対して価値提供している点が大きく異ります。クリエイターが簡単に質の良いコンテンツを提供できるようプロダクトを開発するのはもちろん、同時にユーザーに対しても選ばれるプラットフォームを作る必要があります。

ネットワーク効果が効くマーケットプレイスモデルはwinner takes allになりやすいので、一見同じようなプラットフォームに見えるが、どの企業も微妙にカテゴリを分けています。クリエイターのネームバリューやスキルセットで差別化しているところもあれば、最近a16zから調達したMavenはCohort-based courseという講座のスタイルで差別化を図っています。

教育系コンテンツは基本的に一度消費したら再度見ないので、ユーザーは常に新しいコンテンツを求めており、クリエイター側も新しいユーザーが入ることで自身のコンテンツが消費されやすくなります。なのでマーケットプレイスモデルとの相性は良く、そのカテゴリでのwinnerになれると強いです。しかし一方でクリエイターが育てば育つほど手数料を払わずに済むよう、Kajabi等を使って直接ユーザーとの接点を持ってプラットフォームから離脱する流れもあるので、マーケットプレイスとして永続させるためにリテンションは重要な指標の一つになってきます。そういった意味でMavenは、同じ講座を受ける人たちが同じ環境下/期間で学べるような講座設計にしており、離脱率が一般的に高いとされている教育においてインタラクションやコミュニティ形成をすることで修了率を高め、高い顧客満足度を通して高リテンションに寄与しようとしているように見えます。Metafyは、DCMがシードで投資させてもらっているゲーム領域での会社でまだまだこれからですが、面白い投資仮説を元に投資しているのでどう成長していくか楽しみな会社です。

②クリエイター向けサブスクサービス

クリエイターがファンから直接資金を得られるプラットフォームは、スタートアップだけでなくFacebookやTwitter等の大手プラットフォームが今年に入って追加機能を通して参入し競争が激化している領域です。大手プラットフォーム各社は、クリエイターがより魅力的なコンテンツを生成してもらうことでユーザーの可処分時間を最大化しようとしていたり、マーケティングチャネルとしてだけでなくそのあとのトランザクションにも関わろうとしていたり、とにかくこの半年〜1年のの動きが激しいです。2021年は各社にとって一つ大きなターニングポイントとなるのは間違いなさそうです。

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ファンからサブスクの形式でマネタイズを可能にしている代表的なスタートアップだと、Patreon、Substack、Onlyfansがあり、各社それぞれ、5-12%、10%、20%のtake rateで収益化しています。クリエイターにとってプロダクトのUXが最高であることはもちろん大事ですが、稼げる場であることはそれ以上に重要なので、TwitterがSuper Followで$50,000の収益を上げるまではtake rateは3%しか取らない戦略は特に新しいクリエイター獲得の観点ではハードな戦いになっていく思います。また、PatreonもSubstackはまだTop数%のクリエイターしか本業にできるレベルまで稼げていないとのことで、今後この領域は新しいクリエイターを獲得していく&ミドルクラス層を育てていく戦いになっていくと予想しています。ファンはクリエイター自身に紐付いており、プラットフォームへのロイヤリティは決して高くないのでクリエイターに選ばれる理由づくりが肝になります。ソリューション自体は国境を容易に超えやすいので、日本では海外勢のプラットフォームが選ばれるか、あるいは国内のサービスが隆盛するかはまだ様子見な状況です。後者の場合はローカルならではの形でコンテンツが生成/消費されるものだとよりvalue propositionがユニークで国内サービスが成長する源泉となっていくと思います。

③クリエイター向けAdminサービス

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本業として活動するクリエイターが増えれば、彼らをサポートするAdmin系の領域への投資も増加するのはわかりやすいトレンドだと思います。既に当たり前のように存在しているB2Bソリューションがクリエイター向けになかったり、クリエイターが感じる課題がB向けとは少し違ったりと、ちょっとした違いにフォーカスしてプロダクトを投下することでモメンタムを作っている印象があります。またクリエイターはクリエイターでも、どういうクリエイターかによっても訴求している価値が異なっているのが個人的に面白いと思いました。Stir Moneyは大手プラットフォームで主に収益を得ているクリエイターが管理できるサービスな一方で、Mighty Networksはプラットフォームに依存しないクリエイター向けに訴求しています。クリエイターエコノミーといっても色んなタイプなクリエイターがいて、特にお金の流れをみていると多くのユーザーにリーチしたいタイプなのか、特定ユーザーに色んな形で価値提供して収益を得たいタイプなのか等が見えてきます。まるっとくくってみてしまうとと各サービスの本質的な価値を見落としやすいなと調べながら思った次第です。「誰の何の課題を解決したいか?」を念頭に情報に触れていくのは大事だなと改めて思います。

この記事で触れられませんでしたが、Admin領域の企業見ていると特に決済周りの企業が多く、Adminとは別にFinancingのカテゴリもMarket Mapにあることを考慮すると、金融領域は今後更に資金が投下されている先になるのだろうと思います。

まとめ

長くなってしまいましたが、多額の資金がクリエイターエコノミーに流れているのをみると、当然のごとく挑戦の数が増え、比例して成功/失敗の数が増えるので、まだまだ領域は進化していくと思います。どういう進化になるか想像していくのはすごくワクワクします。この記事を通して、読者の方が漠然として理解していたクリエイターエコノミーについて少しでも解像度が高まりましたら嬉しいです。こういう市場調査やCEOのインタビューを通して、企業が爆発的な成長を遂げるコンテキストを理解し、投資する際の自分のconvictionを高めるのに繋げていくことが大事と思っています。冒頭にもお話した通り、自分でoutputをしてそれに対し色んな意見や考えを聞き、議論し、初めて自分の思考が深まっていくと思うので、「フランクに議論しても良いよ〜」という方いましたら、ぜひDMください!よろしくお願いいたします!🙇‍♀️


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Kanako Honda / 本田 華奈子
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