生きていたんだよな

「なんであの子死んだんだろう」
あーまただ。うっせぇよ。パシャパシャ
シャッター切ってんならそこらへんのタバコの
吸い殻でも拾っとけボケが。
群衆を横目でチラ見し、ボロボロのスニーカーで歩く。

22歳、坂本未冬。フリーター。だるい。
世の中だるい。むかつく。何にむかついてる?
世間だ。
今日電車でさりげなく触ってきたオッサン。
バイト終わりにさりげなーくホテルに誘ってきた
バ先の売れないバンドマン。ちなみにそいつは
金髪のロン毛。いつの時代だよ。そいつはいつも
社会に対する不満ばっかり言ってた。

こいつはそれらしいことを言うのがうまい。
大声で、まかない食いながら、たかが知れた
人生経験で社会のすべてわかったようなカオで
語る。こいつは自分に酔っているのだ。シラフでそこまで酔えるのだから下戸な私にはうらやましい。皮肉ではないが。

きけば、小学生の頃から嫌われていたらしい。
そりゃそうだ。ちなみに、いじめはする方が悪い。それはそうに決まってる。でも、人をいじめに至らせるには三つの段階があると思うのだ。まず一、「こいつはなんだか変だ」と思う。ニ、「こいつは自分に害を与える」と脳が判断する。三、脳が、自分にとって、こいつを集団から排除したら徳があると感じ、いじめという卑劣な行動に向かわせる。

ボーッとそんなことを考えながら、家に着いた。
バタンと大きな音を立てて閉めそうになったが、
一応大人なのでそっと閉める。

未冬は思った。人間は面倒だ。ハリネズミを飼おう。

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