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前期試験をやってみた① ー緊張感も時には悪くないだろうー

リーディングワークショップはリラックスと選択の責任が同居する授業です。今回は、その真逆の取組。緊張感とテストです。

RWの中だるみの対策として考えた取組でしたが、生徒の実際を再確認する機会となり、私自身が学びをもらう授業となりました。

きっかけ

RWをやっていて、生徒の前に現れるハードル。それが「レターエッセイ」。彼らにとって馴染みのないこのアウトプットメニューは、失敗を恐れる優等生ほど手が出ない。

生徒はみな、読みの絶対量を増やすべく読んでいくのだけれど、いつしかルーブリックの存在も忘れ、目的意識を薄れさせてしまう生徒もチラチラ…。読みふけること、ダラダラ…。もちろん、すべては授業者の力量不足に端を発しているわけですが。

しかし、このままではいけません。まずは生徒に、今の学習RWで身に付ける力が、具体的に使える場面を体験してもらうことが必要だと感じました。

そこで、前期試験というスタイルで、記述式のパフォーマンステストを実施しました。これが、なかなか面白かったので、記事にしたいと思います。


テスト公開!

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例えば、こちらは国語1年生(光村図書)の教科書に出てくる「星の花が降るころに」という物語を読んで行う記述用プリントです。「シンクシート」と呼んでいます。

10年くらい前に文科省の研究指定校にいて、そのころ学んだPISA型を意識して作っています。流行りませんでした?クリティカル・リーディング。そのころの学びを今、ドリル的に活用できそうだと思っています。(これについては、またいつか書きます。)


「シンクシート」の基本形は、

1 背景の確認

2 情報の正確な取り出し・・・〇✖クイズにして参加しやすく!さらにヒントにもなる内容にしておき、子どもたちの持つテキスト情報の平準化を狙います。

3 解釈

4 熟考 評価   他 問題の発見 課題の解決 など

5 振り返り  自分の考えの強化や更新の場面を作ります

※「クリティカル・リーディング」「クリエイティブ・リーディング」なんて表現を使うこともあります。他にも「クリエイティブ・シンキング」なんて表現もあります。

1年生の教材ですが、手始めにということで用意しました。一度学習した教材を1年ぶりに全く違う授業から読んでみて…生徒から漏れたつぶやきは「これって、こういう話だったんだ…」(笑)。

銀木製が人物の成長を象徴していて、人物自体も成長している、成長していく…。下を向いてばかりいた主人公が、途中から上を向き始める。

今年になって学習した「比較」「関連付け」「根拠ある推測」などのスキルを使うと、去年全く見えていなかった物語が、突然立体的に見えたようなのです。(生徒の話では、前年度は、解説型の授業だったそうです。)

そして、その気づきを書くための型として「三角ロジック」を使うと、あらあら、筆が進む(笑)。

教科書教材以外にも


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1年生にはスウェーデンの作家ウルフ・スタルクの「青い雌牛」というお話を読んで、「比較」の基本から復習して考える「シンクシート」を用意しました。裏面もあります。

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どっちの先生がいいかを問う問題です(笑)。生徒は、こういうの大好き。ふだん公に言いにくいことを、根拠をもって語る試験です。


振り返り①

手始めに、物語教材から始めた前期試験。読みのスキルが必要だ!ということを、どの子も実感できたようです。ほぼ、私の目的は達成といっていいでしょう。

ところが、意外な副産物として(というか、予測しないでどうする!)子どもの反応から改めて気づきをいただきました。

それは、ウルフ・スタルクの「青い雌牛」で顕著だったのですが、課題になった物語をうまく理解できない生徒が数名いたことです。彼らの「シンクシート」のパフォーマンスは低いものでした。ある子は「えっ?えっ?どういうこと?」と、かなり戸惑っていたので、一度、全員の記述の手を止めて、「友だちとわちゃわちゃ相談タイム」を設けました。

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座っている子が、友だちから説明を聞いています。周りの三人は身振り手振りを入れながら熱心に解説していました。それでも座っている子は「シンクシート」の最後の問いに「この話は面白いと思えなかった。全く話が頭に入ってこなかった。」と答えました。

教科書教材にも同じことが言えるはずです。人には理解できる/理解しやすいものと、そうでないものがあり、それは個々によって異なるのです。それを教科書というもので強制して教え込み、理解度を定期テストで一方的に学力として測れば、結局はテストが得意な人が得をすることになります。公正な状況とは言えません。

新指導要領や世の流れが「個別最適化」に動く今こそ、複数の機会の提供や、選択肢のある学習を展開し、公正な評価を得ながら子どもが成長する環境を整えるチャンスだと強く感じているところです。

ということで、次回は前期試験②として、論説のパフォーマンスについて書きます。果たして、物語は苦手という子どもをカバーできるでしょうか?

また、「友だちとわちゃわちゃ相談タイム」もバージョンアップされます(笑)。ご期待ください。相変わらずの、走りながら考える授業です。

最後までお読みくださってありがとうございます。

注)「前期試験」という形式にしていますが、実際は読みのスキルの活用場面として行い、生徒自身が自分の課題に気づく時間として運営しています。後日、形成的評価の場面もご報告予定です。


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