見出し画像

#24『ジラフとアンニカ』から学ぶゲームデザインの引き出し(3)「隠しアイテムの注意点」

記事は遊んだゲームから、一つのアイデアに注目してゲームデザインの実例を勉強していく連載記事です。

ゲーム開発のプランナーやプログラマー、これからゲーム制作を志す方へ向けて、アイデアのインプットのための引き出しとなれば幸いです。

前回:#23『ジラフとアンニカ』から学ぶゲームデザインの引き出し(2)
「視線誘導のオブジェクト」

前々回:#22『ジラフとアンニカ』から学ぶゲームデザインの引き出し(1)「Webコミック風のイベントシーン」

ゲームの紹介

『ジラフとアンニカ』は、メルヘンチックな絵本のような世界で、猫耳の少女アンニカがふしぎな島を探検する、3Dアクションアドベンチャーゲームです。

画像1

ジラフとアンニカ / atlier mimina

本作は、不思議な島に迷い込んだ主人公のアンニカが、島中を探検したり、島の住人たちと会話したりしながら、謎を解いていく冒険モノです。

3Dアクションゲームですが攻撃やバトルなどは無く、ダンジョンの奥にいるボスとの戦いもリズムゲームとなっており、見た目どおりの優しい世界感が特徴です。

隠しアイテム「ねこ絵」

『ジラフとアンニカ』では、ゲーム中に収集要素があります。
それは、「ねこ絵」と呼ばれる隠しアイテムを探してコレクションすること。

「ねこ絵」はダンジョン内の宝箱や、マップ上のちょっと見つけづらい位置などに隠されていて、集めるとちょっと嬉しいアイテムと交換してもらえます。(ゲーム進行にも一定数が必要)


「ドラゴンクエスト」シリーズをご存知の方であれば「ちいさなメダル」を想像してもらうと分かりやすいでしょう。

こういった隠しアイテムを集めるのは、宝探しのような楽しさを生み出すことができます。

「ここは何か怪しい……?」と思ったところに狙い通りアイテムが隠されていると気持ちいいですし、思わぬところで隠しアイテムを発見したらそれはそれで予想外の嬉しさがあります。

ドラクエの「ちいさなメダル」を探したことのある人は、街中のタンスや壺がどれもお宝の眠った宝箱のように見えてくる、という気持ちが分かるのではないでしょうか。


隠しアイテムを探さないと気がすまないプレイヤー

ただし、この楽しい宝探しにも気をつけるべき副作用があります。

「隠しアイテムを見つけると得をする」ということは、逆に言うと「隠しアイテムを見逃してしまうと損をした気になる」ということ。

アイテムの取り逃しを気にしないプレイヤーであれば良いですが、中にはアイテムをコンプリートしたい、絶対に取り逃したくないというタイプも居ます。

そのタイプの人からすると、常に隠しアイテムがないかを注意して進めることになります。街や建物にあるオブジェクトは隅々まで調べ、隠し通路がないかチェックし、ダンジョンの分岐は漏れなく探索する。

このように、楽しかったはずの宝探しがいつの間にか義務感に変わってきてしまい、最終的にはゲーム上のストレスになってしまうことも考えられます。

「ねこ絵」のヒント

本作では、そのような問題への対策が取られています。
(製作者がそういう意図で配置したものかは分かりませんが)

「ねこ絵」が隠されている場所の近くには、「こっちにアイテムが隠れてますよ」というヒントマークが地面に表示されています。

画像2

「ねこ絵」のヒント

プレイヤーはこれを見て
「あ、この近くに隠しアイテムがあるんだな」
となるのに加え、逆にこのヒントが無い場所に関しては、
「ここは多分探さなくてもいいんだな」
と判断して遊ぶことができます。

(本作では全ての「ねこ絵」に対してこのヒントマークがあるわけではないので、完全ではないかもしれません)

このように、適切なヒントを出すことで無闇に探し回らせないようにする親切さは大事でしょう。

他のゲームでの隠しアイテムのヒント

他のゲームではどのような事例があるでしょうか。

ドラクエシリーズでは、「とうぞくのはな」「レミラーマ」という特技、呪文が登場します。

そのフロア中にある隠しアイテムの残り個数が分かったり、隠されたアイテムの箇所が光って場所を教えてもらえるというものです。

これによってアイテムを取り逃すのが我慢できない人は、特技を使うことでアイテムをコンプリートすることができますし、このフロアにもうアイテムが無い、と分かれば安心してゲームを進行できます。


他のゲームでは、そもそもマップ上にキラキラとしたエフェクトが表示されていて、最初からここにアイテムがあると分かるようにしている場合もよくありますね。

意外なところに隠されてた!というドキドキ感は無いですが、ストレスなくゲームを進行させるのが現代のゲームのトレンドかもしれません。

こういったプレイヤーに無駄な行動を取らせないための工夫は隠しアイテムに限らず、
・RPGで入れる家 と 入れない家
・壊せる壁 と 壊せない壁
・何かメッセージがある本棚 と 何もない(飾りの)本棚

などを、視覚的に差別できるようにしておくというものもありますね。


考えてみよう

あなたの開発しているゲーム、構想しているゲームで、プレイヤーが「あるかもしれない」と探してしまうことで、ストレスになってしまう要素はないでしょうか。

隠しアイテムを配置する場合には、アイテムがあると分かる、または「ここには無い」と分かるヒントはどのようなものが考えられるでしょうか。
アイテムを光らせておいたり、視覚的な差をつける。
取り逃しに気づけるアイテムやスキルを用意する、など。

また、そもそも最初から隠しアイテムなど置かないのであれば、ゲームの説明やNPCにその旨を明言させてもいいかもしれません。(メタ的ではありますが……)

他にも、入れる扉と入れない扉が同じデザインになってしないでしょうか。通行不可の道が、あたかも通れそうに見えてしまっていないでしょうか。

プレイヤーに誤解を与えそうな表現になっていないかも、確認しなおしてみましょう。

プログラマーの視点

本作のようにヒントマークをマップに配置するとか、例に挙げたように開く/開かない扉を分かりやすくするといった表現上の問題は主にプランナーやデザイナーが気をつける領分だとは思います。

しかし、ドラクエの「とうぞくのはな」のようなスキルは、特殊なプログラム実装が必要になるためプログラマーの視点が必要となります。

こういった問題はプログラマー側から解決案を提案するなどの心がけがあると、より一層ゲームのクオリティを上げられるのではないでしょうか。


皆さんも一緒に色々とアイデアを考えて、より良いゲーム作りのための鍛錬を積んでいきましょう。

本記事がゲーム制作をする皆さんのインプットに役立てば幸いです。


本連載の趣旨については下記記事をご覧ください。


他の連載記事はハッシュタグ「#ゲームデザインの引き出し」からどうぞ。

(※本記事中のゲーム画像は、「引用」の範囲で必要最低限の範囲で利用させて頂いています)