健康診断でたまたま卵巣嚢腫が判明して人生初手術した20代女の体験記(前編)
先日、卵巣嚢腫の腹腔鏡下摘出術を受けました。
あの時のあんな感情、こんな痛み、それらは、自分のものだったことが朧げになっていきそうな気がするくらい、今おだやかに回復を感じられてます。
もちろんそれ自体はいいことなんだけど、完全に手元から離れぬうちに、書かなければ…!残さなければ…!という気持ちに追い立てられて、言葉を必死にたぐり寄せて、書いてます。
半分は自分のため。半分は、だれかのために。
いくつか注釈👇
この体験記は、自分が体験した出来事を感情メインで、(だいたい)時系列順に書き記しています。
もしこれから経験する方がいらっしゃったら、これはあくまで個人的な体験にすぎず、病院や先生、症状、個人による差があることを心に留めていただけたらと思います。
長くなりそうなので、発覚〜入院前/入院・手術〜退院後 に分けようと思います。必要な部分だけでもどうぞ。
意味ある?って目次もよければどうぞ。笑
発覚時
8月19日 何もないといいね
特に症状など感じていたわけではなく、なんとなく申し込んでいた市区町村の子宮がん検診。
1,000円を握りしめ、近所のクリニックで診察してもらった。
足ぱっかーんの椅子の上に乗せられて、カーテン越しの医師になんかの棒を突っ込まれてグリグリされるやつ。
私は前職の健康診断で経験したことあったのですが、結構びっくりするし、不快だし、精神的にダメージあるし、私は今だにしかめっ面になってると思う。
グリグリされながら、先生が「あれ、右の卵巣がかなり腫れてますね。このままそっちの検査してもいいですか?」と。
私「あ、そうなんですか?はあ?お願いします?」
先生の質問は私に対してでなく看護師さんたちに向けられたものだったようで、ざわざわしはじめ、何かの確認をして、また棒を突っ込まれてさらにグリグリ。(たぶん経膣エコー?)
椅子から降りモニターで画像をみせられながら、「右の卵巣が5-6センチくらい。MRI撮ってもらうことになると思うけど、その前に採血検査するので、1週間後にまた来てください」と。
正直画像をみてもなにがなんだかよくわからなからず、え、なんか面倒くさいことになったな…何もないといいけどな…と診察室では思ってた。
待合室に戻ると、徐々に不安な気持ちも湧いて来て、その時点で先生から明確な診断名を言われていたわけじゃなかったので、「卵巣 腫れてる」みたいな感じでずーーーーと検索してたと思います。
結局持って来ていた1,000円では足りずにお金がかかった。
とりあえず母には連絡。あとはその後の予定で会った人と、「卵巣が腫れてるって言われたんですよね〜」「え〜何もないといいね〜」みたいな会話をした場面を、なぜか克明に覚えてる。
8月28日 "たぶん手術"
1週間後、クリニックでの2度目の診察。
もともとの目的だった子宮がんの検査結果は異常なしとサラッと言われた。
この日もグリグリ入れられたけど、やっぱり変わらず腫れが6センチ弱はあるので、MRIをとりましょうとのことだった。
ここで言われたのが、「良性だったとしても、たぶん手術になると思います。」
この言葉、私にとってはかなりの衝撃だった。
先生は、良く言えば話しやすいラフな雰囲気なのだが、悪く言えば軽くて、自分としての「手術」に対する受け止めとの温度差にも困惑していた状態だったと思う。
ちなみにだけど、この心境に気づいたのは、しばらく経った後。看護師の友人に話をきいてもらってからだった。
当たり前だけど、先生にとっては何百何千とみてきた珍しくもない症状や治療で、医療者はそれを初めて知った時の普通の人としての感覚は忘れてしまうもの。でもその体はあなたのもので、これから向き合わなきゃいけないのもあなただから。本当は医療者は、その上で今そのことをきいたその人自身がどう受け止めているか、ということを注視できればいいんだけど。
というようなことを伝えてくれた。
どこかで、なぜか、「いい先生」だと思い込もうとしていた自分に気づいて、それだけでちょっと心持ちが変わった。
さてこの時の話に戻ると、
診察室で「何か質問ありますか?」「大丈夫ですか?」とサラっと聞かれても、いや全部よくわからないし何を聞いたらいいかもわからないし、でも細かい質問は山ほどあるし、でもそんなこと全部聞いてたらきりないし、病院は今日も混んでるし、と色々巡りすぎて「はい大丈夫です」となぜか強がってみたりする。
待合室に戻って、1人、死ぬほどネットサーフィン。
先生が言ってた気がする単語をやみくもに入れてネットサーフィン。
本当は気になってたあれやこれやをネットサーフィン。
これかな?……..これの可能性もあるのか……..
え、原因不明なの….?うざ。なんでかくらい教えてくれ。
骨盤に囲まれた臓器で症状がないので、ほとんどは検診か妊娠でわかる…私じゃんこれじゃん…..
すんごい元気なのに、なんにも痛くないのに、めちゃくちゃ不安なんだけど!!!どうしたらいいん!!!
もし手術となったら、良いパターンで入院1週間….20万くらいかかるの……(後々お金のこととか、書こうと思います。結局私は20万もかかってないよ不安にならないでね)
そんなの無理….仕事は?お金は?どうするんだろう……私……
ネット"サーフィン"というより、情報の波にのまれてみえない海の底に沈んでいくような感覚だった。
そして精算を済ませて病院の階段を降りたところで、暑さなのか精神的なものかわからないけど、「あ、これはこのままだと倒れるやつだ」とやばさ感じ、隣のドラッグストアのカウンセリングコーナーでしばらく座らせてもらって突っ伏していた。全然けろっと治ったけど、顔色が悪すぎたらしく、救急車呼ばれそうになりました。
家に帰ってからも、今まで感じたことのない不安が襲ってきて、思い出しては落ち込んで、しくしく泣いてというのを数日繰り返していたと思います。
これまで手術とかとは無縁の体で、なぜか自分はないと思っちゃってたけどあるんだほんとに、と何度も絶望したり。
連絡をとった友人に、検診やってえらい、見つかって良かったじゃないって言われて、そうとすら思えてなかった自分に気づいたり。
そのクリニックではMRIがとれなかったので、紹介された検査機関の予約をすぐにとり、検査までの間、色んな人の耳を借りながら、その大きな感情の塊が少しずつ自分の言葉によって切り分けられていった。
突然、自分の体の中に医学的にも理由がわからないという得体の知れない物体があるとわかった不安。
今は"体の一部"であるそれを、腹を開いて取り出さなければいけない恐怖と違和感。
そしてそれが産む臓器であり、未来を失うかもしれない失望感。
なんでこの若くて傷ひとつない体がなんとなく続く前提で物事考えてたんだろう。
ああ、これまでの人生楽しかったなあと、確率論的にはきっと死ぬわけでもないだろうに、これまでの沢山の楽しかったこと、お見舞いきてねと思う人たちと、好きな音楽を心に次々思い浮かべて、それらがもう自分の手に戻ってこない綺麗な過去のように感じて悲しくなって泣けてきて。
でも、もしこの先不幸なことしか起こらなかったとしても、これまでで人生の幸せの総量としては十分だったのかもなあって、悲観的なのか楽観的なのかわからないこと考えて。
言葉が自分の感情を掬ってくれることとか、周りの人に恵まれていることへの有り難さをめちゃくちゃ感じる期間でもあった。
9月2日 私かも、ってことだから
この日は予約した検査機関で、MRIをとった。人生初。
「MRIってめっちゃうるさいよ」という健康に生きてれば知らない豆知識を教えてくれた経験者がいたおかげで、この日はなんだか初めての経験するワクワクみたいな感情がちょぴっとだけあった気がする。
MRIで、造影剤も使って腫瘍が悪性かどうかを調べるとのことだった。
スマホでも調べられるデータ上では、もちろん良性の可能性の方が高いのだけど。
あと、MRIで悪性がわからなかった場合でも、実際に取り出して病理検査に回したら、かなり低い確率で悪性がわかるというケースはあるらしい。
話をきいた経験者の友人のうち1人はこのケースを経験していた。
確率が低いって、0ではないってことだから。いるってことだから。私かも、ってことだから。全然大丈夫ではない。
結果を待つ間、一番悪いパターンを覚悟していたほうがよいのか、きっと一番良い方のパターンだから大丈夫でしょって思っておくほうがよいのか、毎日毎日その自分的な結論は入れ替わっていた。
9月11日 先生に遠慮するくせ
MRIの結果をきくために、3度目のクリニック。
母親が一緒に結果をきくと2時間以上かけてきてくれた。
「MRIの結果としては、良性の卵巣嚢腫で、手術が必要です。」
言われた瞬間、あれだけ今の状態を受け入れられてきたのに、気持ちが言葉にできてきたのに、その想定も覚悟もしてきたのに、可能性の中では間違いなく良い方の結果だったのに、涙が溢れてきてしまった。
少しの間、声が出ずにぼーっと泣いていたので、隣で母が質問を重ねてくれてありがたかった。
私の体内にある腫瘍は、卵巣の中で、受精していない卵子が勝手に人の体を作ろうとして、髪の毛や歯、皮脂などのパーツを発生させてできたタイプらしい。なんじゃそれ怖すぎる。きもすぎる。
あるあるの説明らしいんだけど、ブラックジャックのピノコはこの腫瘍がモチーフになっていると先生が言っていたが、全然ピンとこないわ笑えないわ、そんなポップに説明してくれるなというなんだか惨めな気持ちになった。
そしてそれが7センチ弱くらいになっていてかなり大きいらしく、ほっとくと破裂したり捻転したり、歳をとると悪性に変異する可能性もあるので、早めに摘出する必要があるとのことだった。
手術としては、私も母も事前に調べて知っていたが、悪性が疑われるものではなさそうなMRI結果と年齢的に、今後の妊娠の可能性を見据えて卵巣ごと摘出するのではなく、卵巣は温存し腫瘍のみを摘出する方法があるとのこと。
そして、腹腔鏡下手術という、大きくおなかを切り開かずに1センチ以下のいくつかの小さな孔をおなかに開けて、カメラや長い手術道具をおなかの外から操作して行う手術を勧められた。
この手術は、開腹手術と比較して痛みが少なく、術後の社会復帰も早くでき、傷も目立ちにくいという特徴がある。
そしてこれまで受診していたクリニックは手術ができるところではないので、大きな病院の紹介状を書いてもらうことに。
実は初回の検診の時からここまでの間に自宅を引っ越していて(このことがわかる前から決まってた)、手術後の受診も見据えて、このタイミングで今の家近くの良い病院を紹介してもらうよう、看護師の友人からアドバイスされていた。
なのでそれ自体はそういうものだとわかっていたのだが、「宛先空欄では紹介状を書けないので、今パパッと調べてもらえますか?そのエリアだとすぐに思い当たる病院がないので。」と言われて戸惑う。
(え、自分の体にメスを入れる病院をパパッと調べる……?)
戸惑いながらスマホを取り出すも、すかさず母が困惑をあらわにしながら「そんなすぐには調べられないと思うんですけど」と言ってくれた。
そうそれ。私のこの先生に遠慮するくせ、なんなんだろう。
「そしたら調べて決めてもらって、遠いでしょうがまた次回紹介状を取りにきてもらいましょうか…?」とB案を提案されるも、母娘共々再びどうしよう….という雰囲気に。
良い病院の尺度も、つい最近知ったこの腫瘍に知見があったり手術法ができる・得意な病院を調べる方法も、なんにも持ち合わせていないのだ。
結局、一度待合室に戻って先生の方で少し調べてもらい、紹介状を書いてもらった。
家に帰って紹介された病院のホームページをみたりしたけど、やっぱりその紹介をそのまま受け取っていいか不安だったので、看護師の友人2人と、研修医の友人、叔母の麻酔科医の友人にとりあえず意見をきいてみた。
みんな各々の見方を伝えてくれたが、私が受ける手術の症例もそれなりにあり、悪い噂もきかず口コミもよさそうなど、一様に信頼できるのでは?ということと、一度診察を受けてみてあわなければ、別の病院で紹介状を書き直してもらうこともできるので、と伝えてくれた。
紹介を受けた病院の、手術外来の予約を自分で電話してとった。
9月21日 実感はないけど覚悟は
この日は、紹介を受けた病院をはじめて受診。
のちに執刀を担当してくれた先生がMRIの結果をみながら話をしてくれ、手術の日程まで決めた。
その後は手術前検査ということで、尿検査から血液検査、心電図などなど、3-4時間くらい病院の中のいろんな科をぐるぐるしながらひとしきりの検査をした。(母、長時間付き添いありがとう。)
フルコース検査は疲れたけど、なんとなく病院の雰囲気を感じられて、少し安心もできた日だった。
この頃には、実感はないけど覚悟は決まってきていた。
私の中では、"経験者"の存在も大きかった。
知っていて連絡をとった人もいれば、連絡をとってそうだったの!と知った人もいれば。
結構、みんな言わないだけで婦人科系の手術をしてる人は多いなと感じた。
本当に今までなんもなかったのが奇跡ってくらいで。
彼女たちの生の経験談も話をきいてくれる姿勢も、なにより彼女たちが今元気に、普通に生きているという事実に、救われた。
その中にはもっと痛い辛い思いを経験した人もいて、その人生の一部を共有してくれることが、そのまま私に力を授けてくれているように感じられて、そのことがあって、私は今これを書く大きなモチベーションになっている。
次のnoteは、入院・手術〜退院後編になる予定です!
追記)後編書きました!
とんでもなく大作になってしまいましたが、よろしければのぞいてください汗
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