書評『基本行政法判例演習』

中原茂樹『基本行政法判例演習』日本評論社・2023

初学者おすすめ度:★★★★★ 星5
既習者おすすめ度:★★★★★ 星5

昨日1月13日発売の本書を早速購入しましたので、さしあたっての書評をしたいと思います。

本書の中身について、レイアウトや内容については、日本評論社がツイートしているので、こちらを参照してください。

https://twitter.com/nippyo_law/status/1613094324480405505?s=20&t=Hku09Td5-7oRkDLAELtWaQ

私は、以下の3点が特に魅力的だと思いました。
①参照条文がついている
事案を読むうえで必要な参照条文の載せ方が司法試験·予備試験っぽいです。百選や行政判例ノートでは参照条文を自分で探さなければならないというのもあり、参照条文が事実の隣に載っているだけで格段に読みやすく感じました。行政法は、事例で用意された個別法を解釈する作業が必要になる科目なので、参照条文がついていることで個別法に触れやすくなるのはとても大きいと思います。個人的には、①~③のうち、この①が特にイチオシ要素です。

②基本問題がついている
まず基本問題に目を通して、軽く自分の頭で考えてから判旨を読むと、問題集的に使うことができます(基本問題には解答もついています)。基本問題は事案分析の思考の補助線としても機能するものなので、いきなり判旨を読んでもいいと思います。
正直、発売前は、「判例演習ってどういうこと?判例集じゃないの?」と思っていましたが、判例集でありながら問題集的でもあるので、まさに判例演習でした。
ちなみに、基本問題の他に、関連問題というのも用意されており、発展的な議論も記載されています。

③判例間のメリハリがついている
論点ごとに、判旨の読み方や解説がしっかり書かれている判例がある一方で、判例チェックの欄の判例は数行でコンパクトにまとまっており、メリハリがついている。百選だと、全部の判例が同じ頁数を割かれており、一見するとどの判例が特に重要なのか把握することが難しいので、判例間でメリハリがあるというのは、学習者にとってありがたいポイントです。

基本行政法のシェアが高いこともあり、今後の行政法判例学習の新しいスタンダード教材になっていきそうな一冊です。

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