書評『事例研究行政法[第3版]』

曽和俊文ほか編著『事例研究行政法[第3版]』日本評論社・2016

初学者おすすめ度:★★★☆☆ 星3
既習者おすすめ度:★★★★☆ 星4

本書は、行政法の問題集です。2021年に第4版が出ていますが、私が取り組んだのは第3版ですので、まずは第3版について書評を書きたいと思います。

第1部、第2部、第3部と別れていて、第1部が基礎的な内容の問題、第2部が行政の主要な領域ごとの紛争についての問題、第3部が総合問題という内容になっています。問題の長さは、問題ごとにばらつきがあるので、一概には言えないですが、予備試験から司法試験の範囲内にはおさまっていると思います。

以下、第1部、第2部、第3部それぞれについて詳述します。
第1部をやれば、処分性·原告適格·裁量という超重要論点は一通り触れられるので、まず第1部を答案構成しながら読むのがおすすめです。予備試験の過去問と本書の第1部で予備試験は何とかなると思っています。
第2部もやれば、出題可能性のある論点は一通り触れられますが、それぞれの問題が感覚的には予備試験から司法試験ぐらいの長さであり、決して短くないので、結構一周するのは大変です(私の主観かもしれませんが、大変でした…)。そのため、予備試験、次に司法試験の過去問をやり、余力があればやった方がよいという位置付けにしておくのがおすすめです。
第3部は、ヒントは載っているものの解説は載っていないので、手をつけておらず、何ともいえないです。解説が載っていないので、効率的な学習という観点からは、第3部に取り組むことはおすすめできません(じっくり行政法に取り組みたい方には、うってつけの題材なのかもしれませんが…)。

私が本書でありがたいと思ったのは、コラムです。本書の問題は、執筆者が法科大学院で出題·採点した問題がベースになっているようで、学生の答案についてのコメントがコラムとして記載されています。このコラムでは、学生の間で見受けられる間違いについて詳しく説明されていますので、受験生が気を付けるべきポイントが分かりやすく示されています。


私の本書の使い方について説明すると、1年目は、予備試験の過去問と並行して第1部をやって予備試験を受けました。その他に問題演習はしなかったものの、予備はBだったので、本書の効果は十分にあったのではないかと思います(第1部をやるという範囲では取り組めたという経験と、第2部以降もやり抜くのは大変と感じた点を考慮して、初学者おすすめ度は3に設定しています)。

ちなみに、その後、第2部もやりましたが、自分の取り組み方の問題か、自分の中では、1年目ほどの伸び率はなかったです(1年目で詰め込んで勉強したのにBを取れたことで、その後は行政法にウエイトを割かなかったからだと考えられ、本書のせいではないです)。以上のような経験から、第1部をまず優先してやることを強くおすすめします。

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