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「日本の食文化」の課外フィールドワークを実施しました

 日本の食文化の特質と多様性を学ぶ「日本の食文化」(小林毅先生)では、開港以降の横浜の食を中心とする文化の歩みをたどる課外フィールドワークを実施しました。フィールドワークのコースは、ランチに山下町にあるホテルニューグランドで同ホテル発祥のナポリタンを食べるコースと、中華街の老舗料理店で中華街発祥のサンマーメンを食べるコースの2コースで、いずれもランチの後、元町商店街や山手地区の旧外国人居留地に点在するさまざまな食の足跡と横浜に残る異文化交流の痕跡を訪ねました。

(9月7日=「ホテルニューグランド」コース)

想像を超えた「ナポリタン」
 ナポリタンは第2次世界大戦後、ホテルニューグランドを接収していたアメリカ軍の将校がスパゲッティにトマトケチャップと塩コショウをかけて食べる様子を見た当時の総料理長、入江茂忠氏が独自のソースを使い、一つの料理として提供しようとして作り出されたものです。ナポリタンといえば、ケチャップを使うイメージがありましたが、ホテルニューグランドのナポリタンは、ケチャップを一切使わず、トマトペーストやトマトの水煮などのソースを使っているそうです。私の想像するナポリタンとは異なり、あっさりと上品な味でとてもおいしかったです。ホテルでの食事で普段の食事とは違う特別感も味わうことができました。ホテルニューグランドはシーフードドリアやプリン・ア・ラ・モード発祥の地でもあるそうです。

ナポリタンは館内のレストラン「ザ・カフェ」で提供されている

和洋折衷の館内
 ホテル館内の見学もさせていただきました。かつてフロントとなっていたフロアは西洋風の落ち着いた印象でしたが、よく見てみると、東洋風の照明や装飾が至るところにあり和洋折衷な空間であると分かりました。また、開業当時のタイルがそのまま階段に使われていたり、マッカーサーが使った机と同じ机が置かれていて、歴史を感じることができました。
 食後には山手地区の旧外国人居留地にあるベーリック・ホールやエリスマン邸、大佛次郎記念館などを小林先生案内のもと見て回りました。海外のような街並みで特にベーリック・ホールは立派なスパニッシュ様式の建物で日本とは思えない異国情緒あふれる建物でした。

歴史を感じさせてくれるホテルニューグランドの館内

日本最初のパン屋「ウチキパン」
 フィールドワークの最後に、日本最初のパン屋であるウチキパンに行きました。商品は売り切りとのことで、午後4時にはほとんどのパンが売り切れていました。名物であるイギリスパンを焼いて食べてみると、サクサクしているのに内側はしっとりしていて、何も塗らなくてもおいしいパンでした。

店の名物「イングランド」は、発酵にビールの原料となるホップから作った酵母を使っている

 今回のフィールドワークを通して、横浜のイメージが変わりました。横浜は常に発展していくイメージがありましたが、伝統を残すホテルニューグランドのようなホテルや洋館などが街中にたくさんあり、新しいものばかりではないと気付きました。また、ナポリタンやパン、アイスクリームなどの横浜発祥の食べ物を知り、横浜は日本の文化と海外の文化をつなぐ重要な役割を果たしてきたことを再認識することができました。
                  (国際文化交流学科2年 早川諒)

(9月14日=「ホテルニューグランド」コース)

2日間かかけて作られている「ナポリタン」
  ホテルニューグランドでは ホテルのコンシェルジュの方に館内を案内していただきました。歴史あるホテルニューグランドの建設された当時のお話や、現在のナポリタンがどのように作られたのかといった興味深いお話をお聞きし、横浜の街には古くから海外との交流があったことを再確認できました。レストランでいただいたナポリタンは茹で上がってから1日寝かせたこだわりの製法で作られていることを知りました。柔らかい麺と酸味の強すぎないトマトソースは優しい味を表現しているように思えました。

エレベーターホールにも随所に和のこだわりが見られる

貴重な体験だった「大佛次郎記念館」
  食後は元町商店街や山手地区を散策しました。私自身、横浜には高校生の頃から通っていましたが、見たことのない建物や初めて耳にすることばかりで、いつもの横浜の街並みが新鮮なものに見えました。特に、港の見える丘公園に隣接する大佛次郎記念館を見学できたことは非常に貴重な体験でした。ここでは私たち学生にはあまり馴染みのなかった大佛次郎という作家の生涯を知り、1人の作家がどのような暮らしの中でどのようなことを考えて小説を著していたのかを直に感じることができました。

大佛次郎記念館
大佛次郎記念館ではスタッフの方に大佛次郎の足跡を解説してもらった

 全体を通して、このフィールドワークは横浜の新たな一面を知ることのできるものになりました。横浜の観光地としては大観覧車や赤レンガ倉庫、中華街といった華やかな施設が有名ですが、今回散策したような落ち着いた街並みも横浜の歴史ある外交を感じられる名所であると感じました。このフィールドワークで回りきれなかった数ある西洋館や商店街なども横浜に通っているうちに訪れてみたいと思います。 
                    (日本文化学科3年 森美怜)

(9月8日=「横浜中華街」コース)

もともとはまかない料理だった「サンマーメン」
 このコースは中華街から元町・山手地区を回るコースでした。昼食で食べた「サンマーメン」は中華街が発祥と言われる麺料理で、漢字では「生馬麺」と表記され、生(サン)には「新鮮な・シャキシャキとした食感」という意味があり、馬(マー)には「上にのせる」という意味があるそうです。もともとは1930年(昭和5年)にまかない料理として考案された料理だと言われています。素朴な麺料理ですが、とてもおいしくいただきました。

「サンマーメン」は中華街が発祥の素朴な麺料理

食べるだけでなく見どころも満載の中華街
 続いて中国茶専門店で「東方美人茶」を飲みました。「東方美人茶」は、台湾で生産されている烏龍茶の一種で、発酵度が高いため紅茶に近い味がしました。「東方美人茶」という名前は、イギリスで名付けられた「オリエンタル=ビューティ(Oriental beauty)」をそのまま訳したものだそうです。その食べ物や飲み物の歴史、特徴などを学びながら食事をしたので、食の知識を深めることができました。
 お茶を飲んだ後、横浜中華街のシンボルとも言うべき「関帝廟」(商売の神様)や「媽祖廟」(海の神様)に続いて、「會方亭」という旧清国領事館跡に建てられた建造物のある山下町公園を訪ねました。山下町公園には、現在の横浜中華街の場所が日本におけるラグビー発祥の地であることを記した記念碑がありました。ラグビー好きの人はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

三国志の関羽を祀った「関帝廟」
山下町公園にある日本のラグビー発祥の記念碑

 横浜中華街には10を数える門がありますが、今回は南にある「朱雀門」から元町に向かい、山手地区の旧外国人居留地で現在は横浜市が保存している数多くの洋館を訪ねました。
 今回のフィールドワークでは初めて行く場所が多く、さらに行った場所の歴史などを学ぶことができ、新たな横浜の魅力を発見することができました。

旧外国人居留地を代表するスパニッシュ様式の建物「ベーリック・ホール」

                  (国際文化交流学科2年 森未咲)


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