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グリーンランドの医療

グリーンランドにやってきて1ヶ月が経ちます。
この1ヶ月はあっという間だったかというと、全くそんなことなく、むしろまだ1ヶ月しか経ってないかのかとびっくりします。

この1ヶ月はグリーンランドでの住まいや、職場、働き方に慣れるのに費やしてきた感じで、ようやく少し、業務のルーチンやスタッフのことを理解してきたとともに、「まだあと1ヶ月もあるのか…」と、ホームシックも絶頂を迎えております。

さて、今回はグリーンランドの医療について少しかいつまんでご紹介します。

グリーンランドの医療機関は歯科を除いて6つに分かれており、中枢となるのが首都ヌークにあるDronning Ingrids hospital (DIH)で、あとは各地域ごとに州の病院があります。
DIHでは中規模の緊急手術や治療は行えますが、大きな手術や専門的な治療が必要となる場合、患者さんはデンマークの王立病院に搬送されます。
州の病院では出産、整形外科などの待機手術が行われますが、首都ヌーク以外では、安定した医療スタッフの確保が難しく(特に麻酔科)、治療が確実に提供できるかどうかは、その時期にスタッフがいるかどうかで決まるようなところがあります。

ちなみに専門医は首都ヌークに数名いるのみで、眼科、耳鼻科、膠原病科、皮膚科などは、1年に1、2回のみ、デンマークから専門医団がやってきて、2ヶ月程をかけてグリーンランド全ての病院を回って治療を行います。

例えば、気候のせいかグリーンランドでは大人も子供も中耳炎、内耳炎の人が多く、特に子供でドレーン治療が必要であっても、耳鼻科医に見てもらえるのはなんと1年に1、2度のみ。その間はどうするかというと、対症療法、もしくは我慢です。
見て欲しい時にすぐに専門家にかかれる日本からすると、恐ろしいほどの医療の差です。

そしてデンマークでは一次医療はかかりつけ医制度によって行われていますが、グリーンランドにはかかりつけ医がなく、地域の診療所がこれを担うことになっています。
州によっては州都にある病院以外に、この診療所がだいたい1つありますが、町から離れた「集落」には、ごく小さな薬局のようなものがあり、診療所の代行をアシスタントと呼ばれる、いわゆる日本の准看護師のようなスタッフが行っています。

スタッフの配置については、州都の病院に医師2〜4名、助産師1〜2名、保健師1〜2名、看護師2〜4名、アシスタント5名くらいでしょうか。後は医療、介護の教育を受けていないヘルパーが数名います。

私はこの州都から離れた町、ナノータリックにある診療所に勤務していますが、人口約1500名の町と5つの集落を管轄し、医師1名(常勤ではない)、看護師1〜3名(常勤は1名のみ)、アシスタント4名、ヘルパーが4名という構成です。
(スタッフの数に〜と幅があるのは、医師と看護師はほぼデンマークからの派遣で賄われているため、時期によってその差が出るのです。)

グリーンランドで働いていて、何が一番デンマークと違うかというと、それはアシスタントの役割だと思います。
アシスタントはデンマークで言う看護師のような感じで、静脈注射と麻薬系の投薬以外、ほぼなんでもやってくれます。私の働く僻地の診療所では、看護師不足のため、アシスタントがほぼ日常業務を回している感じです。

ちなみに、グリーンランドには看護学校がないため、グリーンランドで働いているナースの半分くらいはデンマーク人で、残りはデンマークで教育を受けたグリーンランド人です。
日本でも、病院によってはやってることは実際そんなに変わらないのに、正看護師と准看護師では待遇格差があり、また、准看護師も自分達が下に扱われていると感じる「メンタリティ」の問題がありますが、グリーンランドのナースとアシスタントの間にも(少なくとも私が働いている診療所では)その軋轢はちらほら…。
職業格差だけでなく、デンマークvsグリーンランドでは、侵食者デンマークへの、植民地グリーンランドの人のメンタリティも若干加わって、なかなか根深いものとなっています。私はデンマークから来た日本人ということでそこまで軋轢には関わっていませんが。

デンマークとグリーンランドの「メンタリティ」についてはとても深いトピックなので、また後日、その辺りのことも色々考察してご紹介できたらと思います。

トップの写真は南グリーンランドの州病院。

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