ヤギさん迷子

土曜日の昼下がり。

かんは坊やを抱えて、散歩から帰ってきました。
すると、どこからか、なんだか聞き覚えのない低い音がします。

え゛え゛え゛え゛え゛ー

「ん?なんの音だろう?草刈機かな?」
行く時はこんな音しなかったような…
見ると向こうの空き地で草刈りをしています。

でもあの音ではないみたい。

え゛え゛え゛え゛え゛ー
また音がします。

見ると、向かいの家と家の間に真っ白いヤギさんが座って鳴いていました。

「ヤギさん、いるね!」
「どこから来たのかな?」

しっかり首輪がついて、繋がれている様子。

「今日だけ預かっているのかしら?」
そんなことを思いながら、2人は珍しいヤギさんを見てウキウキしながら、家に帰りました。

夕方、遊びに出ていた兄やを迎えに
また、かんと坊やは出かけていきました。

います、います。
さっきと同じ、お向かいさんの家と家の間に、真っ白いヤギさんが。

「ヤギさん、いるね。」
「近くに来てるね。」

さっきは奥の方にいたのに、ずいぶん手前、道路の近くまで来ています。

はて、あの紐はこんなに長く伸びるものかしら…と不思議に思いながらも、2人はそのまま兄やを迎えに行きました。

走って帰ってきた兄やと合流して、すぐに聞きます。
「ヤギさん、見た?」
「見た見た!」

そんなことを言いながら家の近くまで来た時!

なんと、ヤギさんが道路を渡っているではありませんか!
首輪から長く伸びた紐の先に杭がついています。

大変!杭が外れて逃げてきたんだ…
でもどこから来たのかしら?

こちらが慌てるのもお構いなしに
ヤギさんは隣の空き地で呑気に草を食んでいます。

どうしよう、このまま放置して遠くに行ったり、車にぶつかったりしたら!

とりあえず、紐を握りしめました…
この空き地にいる間は大丈夫。

はて、でもここからどうしたら。

坊やと兄やは大興奮!
脱獄、脱獄!と大騒ぎ!
脱獄じゃなくて、脱走だから!!!

ちょうど通りかかった赤ちゃん連れのお母さん。

「私どのお宅のヤギさんかわかります!」
と走って伝えに行ってくださいました。

なんと、近くに飼ってるお宅があるとは知りませんでした!

でもこれで一安心…
と、思ったのも束の間。

「そのお宅、今お留守みたいで…」

がーん!
帰ってくるまで、ここでヤギさんの番をするの…?

「ちょっと私、とりあえず父を呼んで来ます!」
とそのお母さん。

ヤギさんはこちらの心配も、なんのその。
またスタスタと道路を渡って、別の空き地に移動します。

結構な力です!
無理やり引っ張って怒ったら怖い…
とりあえず持っていた紐から手を離して、ヤギさんを自由にし、その後を追いかけます。

ヤギさんは呑気に、空き地で用を足しています…
たくさん草、食べたもんね。

そうこうしていると、たくさんのご家族を連れて先程のお母さんが戻ってきました。

杭を打ち込むためのハンマーをもった、たくましい男性(先程のお母さんの父上)に紐を持ってもらい、ぐいぐいとヤギさんをお家に連れて帰ります。

集まったご近所さんの後ろにかんと坊やと兄やも続いて、ぞろぞろとヤギさんのお家まで向かいます。

こんなに近くで飼っていたとは…

ちょうど留守にしていた飼い主も戻って来られ、無事引き渡し完了です。

どうやら、近くで草刈りをしてたから、草目当てで脱走してしまった様子。

数時間自由だったのに、半径数百mにずっといて、空き地の草を食べるか座っているかだったおとなしいヤギさんで助かりました。

びっくりしたね、お家がわかってよかったね、と口々に言いながら、それぞれお帰っていきましたとさ。

めでたし、めでたし。


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