ティッシュタイム0

がんでもステージに立つイノマーさん。『ティッシュタイム・フェスティバル2019』

こんなにあのライブは何だったんだろう?
と考えるライブはなかった。

間違いなく、
自分史上最高の思い出となったライブ。

がんのステージ4で
声の出ないボーカルがステージに立つ。
そんなライブ、ふつうないでしょう?

ティッシュタイム4

ティッシュタイム・フェスティバル2019。
オナニーマシーン結成20周年、感謝祭。

共演は
銀杏BOYZ、ガガガSP、
サンボマスター、氣志團。

オナニーマシーンのボーカル(&Base)、イノマーさんは
去年7月、口腔底がん発覚。
9月に舌を全摘出。

今年7月再発して、がんのステージ4。
放射線治療をがんばった結果、顎骨壊死。

ショックすぎるね、
イノマーさん…

ティッシュタイム9

でもイノマーさんは
書くことも仕事。
歌うことも仕事。
がんでも書くし
しんどくてもステージに立つ。

表現者としてプロなことを
心の底から尊敬してやまない。

「オノチン(Guitar)、やっぱすげーな。ふつーじゃない」
という声がライブ後に聞こえて
ほんとそうだなって思ったけど

がんのステージ4のイノマーさんが
ステージに立つこと自体が
ふつうじゃない。

イノマーさんがステージに立たざるを得ない場を作ったり
また一緒にやろ〜!っていう共演者みんなも
ふつうじゃない。


生命が輝いている瞬間だった。

ふつうだったらメゲてしまいそうなのに
なぜイノマーさんはステージに立ってるのだろう?

イノマーさんと共演者をみて
有名であることの極意というか宿命、
みたいなものが伝わってきた。

ティッシュタイム15

私は1番目に出演した銀杏BOYZから
すでに涙が止まらなくって
泣いてたら前にいた人がどうぞって
場所を空けてくれた。

思いがけない親切に驚いて
恥ずかしかった。
自分もこんなふうに在れるか
問われてるみたいだった。

銀杏BOYZの余韻がすごかったので
2番手のガガガSPのライブは見ずに
会場の外で過ごした。

サンボマスターは
みんなが歌う場を作ろうとしていた。
こういうライブの形もあるんだなって
圧巻だった。

個人的にはサンボマスターを聴きたかったけど
お客さんやイノマーさんは
うれしかったかな。

氣志團のボーカル翔さんは
MCでずっと笑わせてくれて
こんなときでも滑らない
エンターテイメントに感動だった。

かなしいときでも
笑いはたいせつな要素かもしれない。

ティッシュタイム・フェスティバル全体に
笑いがあるのも
ちょっとしんみりする場面も
ほんとうに味わい深かった。

ティッシュタイム0

オナニーマシーンのライブは
イノマーさんがいのちを削って立つライブを
見のがしたくなくて
ずっと目をあけてみていた。

ティッシュタイム16

ぶっちゃけ立っているのでやっと。
ベースが重い。
目は見えないし、
先日、のどにチューブを入れる手術をしたため、
基本、声は出なくなってしまった…。
それなのにステージに立つ。

正解かどうかはわからない。
でも立つ。
やりたくねー(笑)。
でも、やるんだ。
がんなのに。


by イノマー

ライブ後手渡された
イノマーさん手書きフライヤーには
こう書いてあった。

そうだよね イノマーさん。
ほんとうはステージなんて
立ちたくないよね。

立ってなくても
そこにいるだけで十分だよ。
と言ってあげたかった。

なんだかかなしい気持ちにもなった。
って言ったらイノマーさん
かなしむかな

でも
声が出ないと聞いていたイノマーさんの
言葉が伝わる瞬間を
皆でもくげきした時は
最高だった。

「みんな、オイラが何て言ってるかわかるの?」
「うれしい〜」
「笑ってよ」
というイノマーさん。
ひまわりみたいな笑顔だった。

ティッシュタイム22

気道が腫れて
呼吸も苦しいイノマーさんは
酸素ボンベ吸いながら
MCして
唄って
ベース弾いて
すごかった。

天使か妖精みたいだった。

イノマーさんの言葉が聞き取りづらい場面では
オノチンさんがギターでノイズを入れた。

ギターにかき消されても
しゃべりつづけるイノマーさん。

がんばれないと思ったとき
私はこの日のイノマーさんの姿を思い出したい。
自分の限界を超えられる気がする。

ティッシュタイム17

共演者に囲まれ
しあわせそうにみえるイノマーさん。

銀杏BOYZ峯田さんは
「イノマーさんかわいい」って
何度もいったよ、って。
なんだか救われる気持ちだった。

峯田さんはどんな姿になっても
イノマーさんを肯定してくれるね。

ティッシュタイム18

すぐには、よくわからない。
なにか奥底からこみあげてくる。

食べるものにこまらず
息をするのもこまらず
満ち足りた暮らしをしている私たちに
強くうったえかけてくるなにか。

かなしみのようなものを通して感じられる
こみあげてくるなにか。

イノマーさんを見て
がんは怖い、と思うけど
イノマーさんを取り囲む世界を
美しいなぁとも思う。

イノマーさんを見て
かなしくなったり
笑えたり
泣けたり
カッコいいと思えるいっぽう
怖かったり
それでちょっと混乱してしまって
なんて言っていいかわからない。

ティッシュタイム・フェスティバルは
ふくざつで奥行きがあって
すぐにはよくわからない。

そういうライブだったから
今も引きずっている。

峯田さんはいざという時のために
ライブ前日に
心臓マッサージと
人工呼吸の勉強をしていたそう。

イノマーさんは今生きているけれど
もしかしたらライブ中
何かあったかもしれない。

そういう不安定さをふくみこんで
心の奥底にうったえかけてくるような
切実な世界。

体はやせほそって
顔はパンパンで
気道もはれて狭くなって
息苦しいイノマーさんが
共演者と会場のみんなで
一緒に歌う。

暗いけど明るい、
ふしあわせだけれど
しあわせを感じさせるような
祈りにも似た世界だった。

ティッシュタイム21

本当にすごい。

この日あの場にいた人は
イノマーさんの姿を忘れないで
いつかはげまされるのだと思う。
私も。

ステージに感傷もあることは
そりゃあ、がんの人がステージに立っているのだから
仕方がない。

ステージにいること自体、
恐ろしい辛抱強さを見せてくれているイノマーさん。

せつなくも
美しいステージに脱帽だった。

ティッシュタイム20

豊洲PIT出口に向かうと
すっかり夜になった東京。

ティッシュタイム・フェスティバルの協賛
TENGA 箱ティッシュをもらって
現実に上手く戻れない気持ちで帰る。

イノマーさん 大丈夫かな。
みんな 日常に戻ったかな。

私は二、三日、ぼんやりから
ぬけられなかった。

なにしろ衝撃的だった。
これまで
がんの人のライブなんて
みたことなかったから。

想像を絶する世界。

ドラマや映画みたいだけれど
ドラマや映画みたいに
イノマーさんに
救いがありますように。

ティッシュタイム、つづいてね。
イノマーさん、生きてね。

イノマーさん手紙

「今日は来てくれて ありがとう(涙・嬉)。」
by イノマー

イノマーさんからのこの手紙。
ほんと最高。

たくさんの人がイノマーさんのことを知って
何か感じるものがありますように。
→イノマーさん日記

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