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「2050年は江戸時代」が現実味を帯びてきた。


「最初のうちは刷新でも何でもなくて、きわめてゆっくり進行したから、みんなはただの経済的な景気の波の一つぐらいに思っていた。ところが実際はそんななまやさしいことではなかったのだ。もう、もとのような世の中に戻れないことをみんなが納得してあきらめるまでにも、五年以上、十年近くはかかったと思う。変化の意味をみんなが理解して、逆らわず積極的に受け入れようとする、いわゆる大刷新時代になったのはその後のことなのだ。」
「2050年は江戸時代」(講談社文庫 石川英輔著)より

この一節を読んだ時、私は今回の新型コロナウィルス感染症の一件がこういう状況につながるのではと思わずにはいられなくなった。「2050年は江戸時代」は、物質主義が行き詰まりを迎え破綻し、省エネ・完全リサイクルの江戸時代に戻った日本を描いた小説。大量に捨てられた自動車の山からエンジンを取り出し、それを売って村の経費をまかなうというセンセーショナルなシーンからこの物語は始まる。(アルミニウムなどの金属が、軽工業などに使えるため高く売れる)

書かれたのは1998年。50年ほどの間に日本がこれだけ変化してしまうなんてSFの世界よね、と少し前の私なら感じただろうけれど、コロナ騒動の今となっては、一気に現実味が帯びてきてしまった。

今、かつてないほどの転換期を迎えているのは間違いない。「数カ月後か1年後くらいには、またこれまでのような日常が戻っているかもしれない」というのはもう淡い期待でしかないないように思う。「もう、もとのようには戻れない」という事態を、どう受け入れ、どう備え、その中で自分たちには何かできるのか。常に問いながら日々を過ごしていきたい。


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