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WiDS -Women in Data Science- その熱狂

WiDS - Women in Data Science -  の活動を知り、その意義に共感し、日本での活動をし始めて1年になりました。WiDSはジェンダーに関係なくデータサイエンティストを奮起させ、教育し、この領域の女性をサポートすることを目的とした活動です。ちょうど先日、WiDS Tokyo@YCUの第4回目のワークショップが終わり、新たなる活力も得たこのタイミングで、私がこの活動を知ってからのことを少し振り返りつつ、WiDSに思いを寄せる理由について綴ってみたいと思います。

WiDSそして横浜市大:小野先生との出会い
2018 年8月に横浜私立大学データサイエンス学部の夏のオープンキャンパスに伺った際、学部長の岩崎先生から「女性のデータサイエンティストのイベントをやりたいと言っている先生がいる」と、小野陽子先生をご紹介いただきました。そこでWiDSの取り組みについての詳細を聞き、その意義に深く共感しました。

小野先生は横浜市大データサイエンス学部で唯一の女性准教授です。私もデータサイエンティスト協会のスキル定義委員として、データサイエンスを活用したビジネスを起業家として行っている(2019年現在、間違いなく数少ない)女性としての立場が有り、すぐに意気投合し、この活動を進めていこうということになりました。

女性×データサイエンス×キャリア
この頃はちょうど起業して2年が経った頃で、ぼんやりと「最近やたらと女性からの相談が多いな」と感じて居た頃でした。相談に乗って欲しいという方たちからは、下記のような相談が寄せられて来ていました。

- 分析者としての今後のキャリア形成に不安がある
- データサイエンススキルを獲得したいが、何から手を付けて良いかが分からない
- 何が自分に向いているかが分からない
- おすすめの講座や学習方法を知りたい
- 民間の講座が高額すぎて受講できないがどうすれば良いか
- 受講するための時間を作ることができないが効率的な方法は無いか
- 理系バックグラウンドでないため学習に億劫だがやりたい
- 勉強会に行きたいが過去の経験から男性参加者ばかりの場に行くのは億劫
...などなど。

不思議なことにALBERTに所属していたときは、こんな相談はほとんど受けたことはありません。しかし私が大きな組織から離れたことで「相談しやすくなった」ということがあったのではないかと推察しています。また、私自身が独立してみて実際どうなのか? を聞きたいというニーズも多いのではないかと思っています。そして、私がHR部門の課題解決に特化してデータの利活用に取り組んでいるということも影響があるかもしれません。

皆さんのお話を伺っているうちに、課題の背景には女性特有の「働きづらさ」が影響しているなという気づきがありました。特にこの職種の領域はそれが顕著に表れやすいのかもしれない。そう考え始めた頃にWomen in Data Scienceの活動を知り、私は”自分はこの領域でのジェンダーギャップについて真剣に考える必要があるな" と感じたのでした。

ジェンダーギャップ?
私自身もデータサイエンティストの様々なコミュニティにおいて「おや?女性が少ないな」という経験は沢山あります。性別という視点だけだとマイノリティになりがち、というのはこの業界では多い事かもしれません。一方で、勉強会やデータサイエンティスト協会の委員会などのコミュニティで阻害されるような性差別は受けたことはありません。「女性としてどう思う?」「女性からの意見は?」なんて訊かれるようなことはもちろんありません。あくまでいち参加者であり、1人の分析者であり、1人の人間なのです。

性差という点で困ったことといえば、クライアントやパートナーからセクハラ・パワハラでしょうか。男性上司が同席していないと無理なことを要求されがちだったり、大声で怒鳴られたり、会食の場で悲しい目に遭うことも沢山ありましたし、起業してからはもはや挨拶なのかと思えるような頻度でパワハラ・セクハラに遭いますが(女性起業家に対するパワハラ・セクハラはまた独特のものがあります)、かつて属していた「組織の中で働くうえでのジェンダーギャップ」・・・たとえば「女性だから任せてもらえない」「女性だからポジションを与えられない」「女性にはチャンスがない」などといったこと)は経験したことはありません。

しかし、私に相談を寄せてくれた女性たちはの多くは、自分の所属している組織やコミュニティで性差別ベースの ”生きづらさ” を抱えていたり、DSとしてのキャリア形成に課題を感じていたのです。私が非常に稀有に幸運だっただけで、そういったケースのほうが多数であると気づき、そんな頃に出会ったのがWiDSの活動です。そして、ある尊敬する方に「この領域で女性起業家は少ない。それはもっと発信をしたほうが良い」とアドバイスを頂いたのも同じ頃でした。

WiDSスタンフォードの熱狂
そして2019年3月に東京でのWiDS開催準備を進めつつ、2019年3月4日に行われたスタンフォードのWiDS Conferenceに参加してきました。これは実にショッキングな体験でした。

スタンフォード大学のキャンパス内で開催されたこのカンファレンスは400人以上の参加者を集め、熱気で破裂しそうな勢いでした。参加者の95%以上が女性でデータサイエンティスト、もしくはその卵や関連ビジネスに携わる方たち。世界中で活躍する女性データサイエンティスト、エンジニアの講演やパネルディスカッションはどれも大変興味深く、登壇者は皆さん自信に満ち溢れていて美しく、刺激的でした。WiDS Stanfordの3人のDirectorの熱意あるコメント、参加者の熱気。もはや熱狂ともいうべき興奮でした。私も世界中から参加しているデータサイエンティストたちと話し、講演を聴くなかで、様々なことを新たに知りました。

米国ですらComputer Jobに携わる女性は減っていること、女性は男性と比べて成果をアピールしない傾向にあること、テクノロジーのカンファレンスでは女性スピーカーは極めて少ないということ。テクノロジーのカンファレンスにおける"Women in X" の第1回目のスピーカーが男性だけという笑い話は色々なところで事例があるようでした。

そして国によっては深刻なジェンダーギャップがあるということ、日本もそうだということ。私は日本のデータサイエンティスト協会をはじめ、様々なところで登壇してますよとお話しすると、日本のジェンダーギャップは本当なのか?いや、そんな中にユニコーンが居るということでは? と毎回笑いが起こりました。そしてこのWiDSが世界中で開催されているにもかかわらず、日本での認知がなく、開催がG20で最後だということには焦りを感じました。

WiDSはジェンダーに関係なくデータサイエンティストを奮起させ、教育し、この領域の女性をサポートすることを目的とした活動です。そして、世界中で同様の取り組みを行いたいアンバサダーたちに様々なコンテンツや素材を提供しています。審査はもちろんありますが、全て無償で提供されます。信じられないほどに素晴らしいことです。

世界中にこの活動を行おうとしている女性が沢山いる。世界中に仲間がいる。自分の周りにはデータサイエンティストのスキルの獲得やキャリア形成に課題を持つ女性が集まっている。私も何かしなくては、何からやろう、できることは何だろう。いや女性だけでなく、社会貢献度の高いこの仕事、この世界にもっと沢山の人を引き込まなくては。これはいつもDS協会スキル定義委員としてやっていることではないか。もっと何かできる、やれることがある。私は自分の中で間違いなく革新が起きた音を聞きました。まさにWiDSに大いにInspireされて帰国したのです。

WiDS とRejoui
Rejouiのメンバーには上記の思いを語り「大切な皆さんのリソースを投下させてほしい」とお願いしました。偶然ですが、Rejouiは2019年9月現在、社員の100%が女性の会社です。皆WiDSの活動に共感してくれて、大いに助けてくれました。そして2019年3月のWiDS Tokyo@YCUは、多くの仲間に恵まれ、大成功でした。

Rejouiの企業理念は「すべての人の自己実現を支援する」と定めています。これは性別に特に限った話では有りません。その活動のひとつとして、日本でのWiDSを進めていく。ここしばらく、熱意、いや熱狂をもって進めていきたいと思っています。

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