1度でいいから
初めて現像した写真。
「2つのフィルムのうち、ひとつはまっさらでデータにはしませんでした。」
お店のお兄さんが淡々と説明するから恥ずかしさと申し訳ない気持ちで笑ってしまった。
まあ、こんなもんか憧れだったフィルムカメラ
初めてのフィルムはまるまる一本無駄になってしまい、気が抜けてしまった。
画素数が落ちてしまうデータではデータ化してしまってもただの黒でしかない。
小二の頃から憧れだった。
自分のカメラで写真を撮ること。
今日は、ちょっと背伸びしていたかった。
あの頃の自分に戻ったみたいで、不思議と気持ちは上を向いた。
小一時間だった待ち時間、すべての瞬間が特別な思い出になったような浮ついた気持ち。
まだ明るい空には、綿飴を巻き取る前みたいな、ふんわり広がる絹糸みたいな雲。
ピンク色に染まったゆったりと流れる様に心がさらに弾んだ。
帰り道、ちょっと残念な気持ちとフィルムが入った封筒を片手に持ちつつ、ふと見上げた真っ黒い空は輝く月で眩しいくらいだった。
黒も悪くないと慰めるように光っているようで幸せだった。
単純で、おめでたいくらいが丁度いいし、わたしらしい。
初めてや憧れは、それだけ心を弾ませるんだと知った。明日は今年一明るい月が見えるらしい。懲りずにフィルムカメラ片手に夜空を眺めたい。
私達の月を楽しもう。
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