「鶺鴒一册」05
鶺鴒の質料(ヒュレー)は/
/響(hibi)kiと翳(kage)ri/
/不規則な響(hibi)kiと翳(kage)riの水際に/
/挨拶のようにふるえる声/の藻…
/その しみと しみを/
/鶺鴒は羽搏く/
/篠原に幾葉/
/薄い便箋を書き殘(そこな)い
※このページが書けたときは、非常にうれしかったことを思い出す。アスリートの方が「ゾーンに入る」と言われるような状態だったかもしれない。高揚しているのに、冷静でもあるような。
2008年『現代詩手帖』5月号では、山内功一郎さんがブックレヴューを書いてくださり、そのタイトルが「響(hibi)kiと翳(kage)ri」だった。▼「とりわけわたしが注目したいのは、我々を生かす言葉と滅ぼす言葉の「響(hibi)kiと翳(kage)ri」が、本詩集中の戦慄的な片鱗として認められることだ」。このレヴューは本当にうれしかった。稲川方人さんの詩集『聖-歌章』の書影と見開きページになっていることも。
2008年『ガニメデ』Vol.43(8月)に掲載された小笠原鳥類さんのエッセー『動物、博物誌、詩―薄井灌『干/潟へ』、鶺鴒の愉快な冒険』でも、このページが取り上げられている。▼「文字を選んで、一つ一つをいとおしむように並べていくと、それは影を持ち、立体になり、動くものになるだろう。文字が羽ばたくことがあるだろう、とても細かい動きなのです。ルビ、アルファベット、ややめずらしい漢字など、いつでも油断せずに正確に選ぼうとしています。あたりまえのものとして言葉を取り扱うのではなくて、いつでも特別な瞬間が。何度も失敗しながら、書き直して、並べられた文字や単語の群れを立体的な骨格にしていくのでした」。涙が出そうなほどうれしかった。
あらためてお二人に感謝を!
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