雲Nubes_2016.5.15
noteで雲の写真集『雲Nubes』をつくっています。
▼雲は夢を追う人のもの、そして雲の形に見とれるのがクラウドウォッチングの醍醐味である。雲は空に描いたロールシャッハテストだ。わたしたちはその抽象的な形に想像を膨らませる。見ている雲が何に似ているかを考えて時を過ごせば、精神分析にかかるお金を節約できることまちがいなしだ。
——ギャヴィン・プレイター=ピニー『「雲」の楽しみ方』桃井緑美子(るみこ)訳、河出文庫、2017年1月20日 初版発行
私はこの雲に「鳥」の姿を見たのだが、では私の精神状態を「精神分析」はどのように分析してくれるのだろうか。ロールシャッハテストに用いられる図像は、一種のデカルコマニーだが、合わせ絵なので、ほぼ左右対称だが、左右対称の雲などほとんど見ない。「雲」を喩えるなら、むしろこちらの説明のデカルコマニーがふさわしいだろう。
▼デカルコマニー(Decalcomania)
2009年01月15日掲載
光沢のある紙の上に、黒のグアッシュで描いた図柄を圧力をかけて転写する技法。シュルレアリスムの作家O(オスカー)・ドミンゲスは、18世紀のイギリスにおいて陶器やガラスの絵付けのために開発されたこの技法を用い、支持体への彩色がどのような効果をもたらすのかに着目した。偶然に左右される部分が大きいこの技法は、その後M(マックス)・エルンストによってさらに開拓され、現在では「オートマティズム」の理念と相補的な関係にあるものと評価されている。日本でいち早くこの技法に注目した批評家瀧口修造は、その偶然性がもたらす“滲み”や“染み”のような効果を愛好して自らもこの技法を活用した作品を制作した。また加納光於はこの技法を「インタリオ」と呼ばれる腐蝕銅版画の制作技法へと応用、同様の効果を演出してみせた。[執筆者:暮沢剛巳]
——「artscape 現代美術用語辞典 1.0」より
青森在住の詩人・SSW(singer-songwriter)の川畑battie克行氏は、毎月、何枚かの写真をレイアウトし、近況を綴った「写真葉書」を送ってくれるのだが、先日届いた葉書には、「雲の写真、もう10年も撮ってるんだね、びっくりっっっ!! いわれてみれば天然のデカルコマニーだったわ。そういうことか」と書いてあった。(葉書の画像を載せたいけれど、本人に了解をとっていないので……)。「雲」が「天然デカルコマニー」だとは、思ってもいなかった。10年来、雲を眺めては、写真を撮ってきたのは、「そういうことか」、と納得させられたのは私のほうだった。私のnoteのトップ画像は、自作のデカルコマニーです。「瀧口修造のデカルコマニー」について書いた記事はこちら。