見出し画像

『永遠のソール・ライター』を鑑賞して

書きかけの記事があるのだが、なかなか時間が取れないので、最近感じたことを先に書いておく。
鮮度があるうちに。

母に誘われBunkamuraへ『永遠のソール・ライター 展』を観に行ってきた。
前日に誘われて予備知識なく行ったので、「誰?有名な人?」くらいだったが、実際に観てみるとファッションフォトなどは見覚えがある気がするものもチラホラ。

作品も面白かったのだけれど、今回、展覧会を見ていて、私の見方が今までと違うことに気づいた。

アーティストのキャリア

聖職者の父親に敷かれたレールの上を歩きはじめたソール・ライターが、自分の人生を見つめ直し、レールを外れて歩きはじめるところから、彼のアーティストとしてのキャリアがはじまる。

彼のwontである、絵を描くことや実験的なアーティストとしてのキャリアとは別に、生計を立てるためにneedである商業写真を撮りはじめ、ファッション誌で活躍し始める。

それでも、やはり、商業写真に興味があったわけではないソールはスタジオも弊社市、徐々に表舞台から消えていく。

しかし、10年以上過ぎた頃、イギリスの写真感材メーカーの補助金によって、過去のカラー写真が初めてプリントされ、個展が開催される。
そこで、ソールの作品は多くの人に見られるべき作品と評価され、「カラー写真のパイオニア」と呼ばれるようになる。

当時、カラー写真がアート作品として認められていなかったというのが衝撃だった。
いつの時代も新しいものを受け入れられるのには時間がかかる。そして、それは日本に限ったことではない。

アーティストの内省

​“私は有名になる欲求に一度も屈したことがない。自分の仕事の価値を認めて欲しくなかったわけではないが、父が私のすることすべてに反対したためか、成功を避けることへの欲望が私のなかのどこかに潜んでいた”

自分のキャリアを築く過程が作品で“見ることができる”ことが興味深かった。
生計を立てるために撮った商業写真、商業写真の傍らで撮り続けた本当の自分が撮りたい写真、アーティストとして認知されてからの写真。

私が一番好きだったのはソール・ライターが自ら“スニペット”と名づけた、名刺サイズにトリミングされた白黒写真だった。
それらは手に収まりのよいサイズにちぎられていたりして、彼が持ち歩きたいもの、大切にしておきたいものだと感じることができた。
“価値観のつぶやき”のように感じた。
また、「スニペットを偏愛していた」というキャプションを見て、私には小川洋子の小説を彷彿とさせた。

成功者の「内省」はすごく響く。
父親の価値観と最後まで相まみえなかった彼、成功者としての姿を最愛のパートナーに見せることができなかった彼の言葉は重い。

画像1

私の視点

作品を見ればいい、そう思って美術館に足を運ぶことが多かった。
そこからストーリーを組み立てることが好きだった。
少しキャリアの勉強をしたからだろうか?今までよりも展覧会のキャプションや年表が気になったし、自分でストーリーを想像するだけでなく、より作品が語るものを読み取りたいと思うようになった。

写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと』というドキュメンタリー映画があるそうなので、観てみようと思う。
“急がない人生”というのが、とても気になる。

好きだと思った写真がことごとくポストカードになっておらず、なにも買わずに帰って来た。




たくさん「スキ!」と思ってくださってサポートいただけたら、 物語を愛する人たちが集まれる ≡ 私立図書館 ≡ 設立の資金にさせていただきます。