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【SHElikes課題】考察好き必見!恩田陸『ユージニア』の3つの魅力

1.10年間の推し小説。恩田陸『ユージニア』

本記事では、私のおすすめのミステリー小説、恩田陸さんの『ユージニア』を紹介します。

恩田陸さんは、2005年に第2回本屋大賞を受賞した『夜のピクニック』や、2019年に松坂桃李さん、松岡茉優さんらの共演で実写映画化された『蜂蜜と遠雷』で有名です。
しかし、『ユージニア』は知らない、読んだことがないという方も多いのではないでしょうか?

私は中学生の頃にこの小説に出会ってから、「好きな本といえば『ユージニア』です!」と答え続け、上京の際にもわざわざ実家から持ってきてしまうほど、この本の大ファンです。
この記事を読んで、『ユージニア』を読んでみたいなと思っていただけると嬉しいです。

【この本がおすすめなのはこんな人】
・ミステリー小説が好きな人
・本を読んだ後の考察が好きな人
・複数人の視点から物語が進んでいくストーリーが好きな人
・恩田陸さんの文章が好きな人

2.『ユージニア』のあらすじ

まず、『ユージニア』のあらすじについてご紹介します。

本の舞台は金沢。
名家の医者一族「青澤家」で大きなお祝い事が行われた日に、毒入りの乾杯ドリンクが持ち込まれたことで起こった大量殺人事件。
当時の関係者たちの取材をもとに、事件当時の状況を辿っていく形式で物語は進んでいきます。
数十年後に行われた関係者へのインタビューにより、新事実や真犯人が浮かび上がってくるものの、それは果たして本当に真実なのか?
読みながら頭を悩ませてしまうのはもちろん、読み終わった後も、つい他の人の考察が気になってしまう、中毒性の高い小説です。
タイトルの「ユージニア」は、事件後現場に残された手紙に書かれていた詩の一部で、この言葉がどういった意味を持つのかについても、物語の中で明らかになっていきます。

インタビュー形式のため、たくさんの人物が登場します。
殺害された名家の唯一の生き残りであり、小さい頃から目の見えない少女「緋紗子」。
事件当時はたまたま現場にはいなかったものの、家に出入りをしていた近所の子供たち。
その中でも、大学生の時に事件について調べた本「忘れられた祝祭」を出版した「満喜子」。

ほかにも、事件を追っていた警官や、犯人として逮捕された男を知る人物など、それぞれが当時見たもの、感じたことについて語られます。

3.『ユージニア』の魅力を3つ紹介!

それではいよいよ、10年間この本をおすすめしてきた私が考える『ユージニア』の魅力を3つ紹介します。

■魅力① 真相はどのようなものなのか、自分で考察できる!

ミステリー小説の醍醐味ですね(笑)

犯人は青澤家とどのように繋がり、なぜ毒を入れたのか?
真犯人は別にいるのか?
「ユージニア」とは何か?残されたメッセージは誰が書いたのか?

関係者たちが実は知っていたこと、隠していたことを語り、徐々に謎が明らかになっていきます。

一方で、登場人物が数十年前の記憶、かつ「あくまでも自分はこう感じた」というニュアンスでそれぞれ話をするため、「絶対に真犯人はこの人!」という確証は最後までありません。
つまり、真実は読者の解釈に委ねられています。

ヒントを拾い集めながら推理していく感覚は癖になり、つい読み返したり、他の人の感想や考察を検索したりしてしまいます。

絶対に白黒つけてほしい!曖昧な結末が苦手!という方には若干不向きかもしれませんが、考察好きな方にはたまらない、2度も3度もおいしい小説です。

■魅力② 伏線回収ですっきり快感

この本の特徴である関係者へのインタビューでは、当時の詳しい状況が、実に様々な立場や視点から語られています。

事件当日に居合わせた人はもちろん、事件以前に犯人の男性と親しかった人物や、事件の数年後、満喜子と一緒に「忘れられた祝祭」の調査に取り組んだ人物なども登場します。

登場人物たちが語る内容を、自分の頭で整理しながら読み進めていくと
「あの人が言っていたのはこの行動のことか!」「この発言はここに繋がるのか!」
と納得でき、伏線が回収される快感を感じることができます。

■魅力③ 暗い事件と美しい情景描写とのギャップ

最後は、文章表現の魅力についてです。

『ユージニア』は、大量毒殺や犯人の自殺、目の見えない遺された少女など、物語の設定としては非常に暗さを感じる小説です。
しかし、文章中には多くの美しい情景描写が登場します。

金沢の街にある建築物の描写や、青澤家の家の外観、花の色、季節、海の音など、細かい描写で表現されているため、景色を思い浮かべながら読むことができます。
重たい物語設定とのギャップも、『ユージニア』の魅力の1つです。

ぜひ実際に読んで感じていただきたいのですが、ここではいくつか私のお気に入りの情景描写のフレーズを紹介いたします。

あの事件があった夏と、あたしが関係者の話を聞きにこの街に通っていた夏は、あたしの中では対になっているの。
どちらも白い夏だった。白い日々。きっと、私にとっては、どちらも熱に浮かされた、異常な状態だったからでしょうね。

恩田陸『ユージニア』 1 海よりきたるもの より

海の上に、空から一つのブランコが下がっている。
ブランコの鎖の先は見えません。高い雲の中から、光みたいにどこまでも伸びている。
そして、ブランコはゆっくりと海の上で揺れているんです。
もちろん、ブランコには彼女が乗っています。
あの日、私が見た彼女。
晴れやかな、この世のものとも思えぬ笑みを浮かべてブランコを漕いでいる彼女が。

恩田陸『ユージニア』 4 電話と玩具 より

なるべくネタバレにならないシーンで厳選してみました。
少しでも、美しい世界観が伝わっていれば嬉しいです。

4.おわりに

以上、私のおすすめする本、恩田陸さんの『ユージニア』を紹介しました。
少しでも魅力を感じていただけていれば幸いです。

読んでみたいと感じた方は、ぜひ書店やネットで購入してみてください。
きっと読み終わった後には「ユージニア 考察」で検索してしまうことでしょう。


この記事は、SHElikes ライティング入門コースの課題、および課題添削をもとに作成いたしました。


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