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夜、冴えた目でこわごわ歩く

交番に車が戻ってくる。黒い世界に赤い光が静かに光っている。
新聞の配達所からは、目の高さまでまっすぐな光がさしこむ。3台のバイクが鳴っている。朝の訪れのような音だ。
こんなに静かな夜なのに、川は走るように流れていく。
すっと音が消える。この先はお店が少ない。駅の方向に戻る。
人がふたり、ひとり、ひとり、ふたり、ひとり。
終電から出てきたのだろう。
ふと、都心であればまだ飲み足りない人がふらふらと歩いているのだろうなと、喧噪をふっと想像する。
頭のなかが都会にそまり、タクシーが立て続けに横切る。
今いるのは、自然ゆたかな地域だった、と、女ひとり歩きのわたしははっとする。
筋トレをした。ランニングをした。それでも眠ることを許されていない、眠くならないわたしは、もっと遠くへ行きたいと思いながら家に着く。
眠っていたはずの彼は、スマホを見ていた。眠れないままのわたしと、寝起きのやわらかな視線が交差する。
2023年2月19日 0:03a.m.

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