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ひらめき☆マンガ教室 第6期 課題8の感想

はじめに


課題8の感想です。
久しぶりの投稿です。
今回の課題は、以前の課題の完成稿の改稿という特殊なものになっています。なので感想の内容も「作品の感想」+「改稿の感想」という感じになってます。
完成稿の感想も今回が初になるのですが、僕の完成稿の感想の方針は、読んで思ったこと、書かれていること、書かれていないこと、読んでから連想される特に作品内容と関係なさそうな妄想、などをとにかく好きに書くというものです。最低限読みやすく書くとか論筋を通すとかはしたいですし、都度方向修正はしていきますが基本はこの方針でやっていきます!
やっていきます!って今までオマエ書いてないやんけ、って言われてたらホントその通りで返す言葉もないですが……そのつもりではあるので!
以下、作品一覧のページリンクです。感想の記載順は講評会後のページ掲載順にしています。


感想

ぼんち。『しちゃった』

前にネームの感想でも書いたんですが、ドキドキハラハラできる面白い話と思います。コイツは果たしてヤるのか、ヤらないのか、どっちなのか。
改稿の印象としては、やはり導入を長くとったことで作品に入り込みやすくなった感じがありますね。マンガのリズムとして一拍間をとることで登場人物を受け入れる時間ができますし、主人公の「~~期待して損した!」っていうセリフがあることで主人公がどういう気持ちなのかが明確にわかりますし。改稿前からの変更点では細かいところですが、二人の服装が変わってたり、セリフの「アンタ」や「お前」を名前呼びに変えてたり、最終ページの「キス」のフキダシの位置を変えてたりが、作品を読んだ時の小さなノイズが取り除かれているようで良かったです。
クライマックスのキスの場面ではしっかりとしたタメがあるので、読んでて「こいつらヤるぞ!!!」と盛り上がりますし、最後はちゃんと落としてくれる。満足感が高く面白く読みました。
ここからは感想というか勝手に妄想した文章です。
この男、まず「うち来る?」と提案した時点でヤる気満々というか、これ絶対下心しかないですよね。こんな可愛げがあってたまるかってんですよ!まあでもヤリチンってわけではないのかもしれない。ヤリチンでないから堂々としてるわけではなく、頭の中ではこのあとの展開を期待しつつ平静を装っちゃってるんだよな。そして、そういう雰囲気にならなかったら最初からそのつもりじゃなかったし、みたいな感じで乗り切ろうと思ってんだよなあきっと。男側の立場に立って考えてみますが、主人公を部屋に入れた段階でこれ結局ヤることになったら諸々大丈夫かなと心配になってきていて、そして「あ、爪切ってねえや」と気づき、目の前で切るとあからさまなのでシャワー浴びてる隙を見て切ったりとかしてるんですよね。で、主人公が自分の部屋着を着てシャワーから上がってくるわけですが、もうこの時点でコイツは内心ヤバいですよ。なんでもないフリして頑張って平静を保ってるに違いないです。きっと風呂場で念入りに体を洗ってることでしょうよ。一緒に寝る段になると主人公の顔を見た瞬間、これはヤベーわと思って心臓バクバクしながら思わずキスしにいっちゃうんだけど、やっぱ恥ずかしいよやれないよって感じですかね。でもそこはヤるしかないんだよ。頑張れ。
こう書いてるとなんかこの男キャラが好きになってきましたね。ヤリチン装ってるけど中身についてはオマエは俺と一緒だ、多分。
で、問題はですよ。用意周到な感じを装いつつ実はキスで恥ずかしくなってしまうこの男、ゴム準備してるんですかね……。うーん、多分ない気がするんですよね。途中のコンビニでこっそり買ってたりすればいいんですが、ないでしょうな。ということで、きっとこのオチのあとはゴムも用意ないんかい!という二段オチが繰り広げられてることでしょう。そうであってくれ。男性向けエロマンガみたいな「なくても……」っていうそういう意味のドキドキとかダメだから。ちゃんと避妊はしような。

藍銅 ツバメ(らんどうつばめ)『ネクロマンサー』

あるある。骨を依り代にして家の床に魔法陣的なのを描いて死者を蘇らせようとしたら右腕持ってかれちゃうの。あるあるですね。
この作品、設定もキャラの掛け合いも軽妙なのでスルーしちゃいそうになりますが、なかなか激重な話ですよね。
普通にギャグ時空の話として読んでくと、「蘇らせた相手に怒りも憎しみも湧かない」という重い設定や、「…そっか でも君が作ってくれないなら いらないや」と義手を掴みながら言う。そんな激重感情のコマがでてきて、エモいというよりかは重いなあと思いましたね。オチでまたギャグに戻ってる感じありますけど、コイツは田中君がいなくなったらまた体の一部を犠牲にして召喚するのかなあと考えると……。
次は左足、次は内臓、最後は全身持っていかれるも田中くんが何かの無機物に魂だけ定着させて、ふたりで体を取り戻す旅をはじめるんですかね。というか、蘇生させられる度に体を失っていく友人を見て田中くんはどう思うのか。あー重い、重いよー!
改稿についてなんですが、以前僕はネーム感想で以下のように書いていました。(完成稿については感想書けてなかったので……)

掛け合いは面白いですしオチも良かったですが、久保の人間味が垣間見える、このマンガの見せ場部分の印象がちょっと薄いかなあという気がします。
田中についても、ああいう寡黙というか感情を表に出さないキャラで、そこが魅力と思いますが、読んでて感情が掴みづらいなとも思います。田中側の感情の描写ももっとわかりやすいコマで見たいなと思いました。

今回の改稿はまさにコマ割りの変更(5ページ)によって久保側の人間味がわかりやすく見れるようになっており、これは良い改稿だぞと思ったのですが、一方で次のコマにあっさり流れすぎてしまっているとも思いました。改稿前は田中のセリフコマが二つに分割されており、さらにページめくりもあってリズム的に間があるのでそこは気にならなかったのですが、改稿後は激重なセリフが強調されてるぶん、その後があっさり流されてるように感じてしまい、違和感があったのが正直なところです。おそらく、田中側のリアクション(もしくは”リアクションがない”というリアクション)のコマがあればそうは感じなかったのかな?と思います。でも、これは単に僕の好みの話かもしれません。
なんだか注文の多い感想になってしまいましたが、率直な印象をなるべく説明しようと思って書いてみました。

はやしなおと『人見知り人魚』

改稿で追加されたページでオチがついた感じがあっていいですね。海藻について立て板に水のごとく話はじめる主人公を見て、この主人公を好きになれた気がしました。というか、良いキャラですよね。自力で足生やしちゃってるし。主人公はなんとしても王子からオモシレー女認定されて見染められてほしいですね。この王子がオモシレー女を認めるほどの度量があるかは知りませんが、きっとあるでしょう。王子だし。
あと、2ページ目は目のアップのコマが目立ちますが、ここいいですね。目が綺麗。きっと「君は綺麗な瞳をしてるね」とか言われて王子に口説かれたりするんでしょうか。キュンですね。
今一つと思う点としては、海藻に詳しいという設定が一コマ目にさらっと出てきているだけなので、もうちょっとオチのためのフリが欲しかったなあと思いました。

ヤギワタル『ファクトチェックするトラベル(改稿)』

改稿前のネームの感想で「肩透かし感が強い」と書いたのですが、この改稿の物語は好きですし、良い改変だなと思いました。僕は改稿前のネームの感想で以下の様に書いていました。

正直言うと肩透かし感が強いですね……。前半はファクトチェックする対象に予想外の何かがある、またはそこで何かが起きることを読者が期待できるようなつくりになっていると思っていて、後半はそれが裏切られる展開となりますが、であれば主人公の”気づき”だったり”価値観の変化”なりを強めに出した方が物語としてのカタルシスがあったのではないかなと思いました。
(旅の醍醐味的なことを描いているのだと思うのですが、あまりわからずです)

この物語だと「ファクトチェック」という部分や主人公の感情の動きに物語の焦点が当たってますし、細かいセリフの変更なども主人公の旅それ自体に読者が集中できるようなものになっていて、改稿前より明らかに良いなと思います。それに、好きな話にもなりました。
観光地の存在を確かめる(ファクトチェック)のために旅行しろと謎な仕事を任され、行ったら行ったで受け入れ難い出来事に遭遇する。"城"だけに不条理な話で面白いです。(カフカ的かどうかはともかくとして)
明らかにそこに目的のものは存在していないが、人々が存在していると思えば、フェイクの物語を皆が信じていれば、それはファクトなのかもしれない。ファクトもフェイクも実際は境界が曖昧なものですよね。
こういった話は主人公が遭遇した不条理にどう対処するか(または対処しないか)が問われるかと思いますが、最後のコマで主人公がお婆さんから渡された果実(?)を持っていることが示されているのがその答えなのかなと思いました。忘れちゃいないよっていう。
(この果実もちょっと黒みがかってる部分があるのがいいですよね。改稿前は真っ白でした)
あと、ここからは作品とあまり関係ない余談というか蛇足ですが、改稿前と改稿後を交互にWebブラウザを切り替えながら読み比べてると、それぞれ別の世界線の話を読んでいるかのようで面白かったです。
改稿前が城が崩れなかった世界線で、改稿後が崩れてなくなってしまった世界線。どちらにしても主人公は城を探しにやってくるし、お婆さんは果実を落とす。城があって平和な観光地があって特に何も起こらない世界線と、城がなくなりフェイクをファクトとして扱わなければならなくなったことで主人公が不条理な目に合う世界線。そして後者の方が物語的には面白い……。Webブラウザのタブを切り替えるだけで同じような物語なのに全然違う世界がそこにあるようで、ちょっと不思議で面白かったですね。
だからなんだという感じですが、いずれにせよ僕の鑑賞の仕方とその環境から湧いてきた妄想でした。

たにかわつかさ『ばあちゃんの家の竹の花(改稿)』

竹という植物は何十年かもしくは百年に一度花が咲くと、その後は地下茎でつながった竹林まるごと徐々に枯れていってしまうそうな。それゆえに不吉の象徴でもあるのでしょう。だからきっと、ばあちゃんの家周辺の竹林は跡形もなくなってしまうのだろうと思います。主人公の”のきば”の気持ちを考えると寂しいものを感じます。
しかし、竹は枯れたあとも地下茎の一部はそのまま残っており、次の春にはまた筍が芽吹いてくるそうです。ばあちゃん亡き後、竹林がどうなるかはわかりませんが、のきばにはまた新たな思い出をその土地でつくってほしいなと思いました。寂しいけども暖かい気持ちにもさせてくれる作品でした。
改稿については、細かく手を加えた部分(セリフやトーンなど)は読みやすさに影響を与えていると思います。ですが1ページ増えた分、一番の山場となるシーンの大ゴマがめくりで来なくなってしまっていて、そこは勿体ないと思いました。これは比較してはじめて言えることかもしれませんが、病室から花が見えるシーンと、その後の手を振るのきばのシーンはめくりで来た方がこの場面のリズムに合っているのではと思いますし、場面のインパクトもあるのではと思います。もう1ページ増やすにしてもページ数そのままに上手く調整するにしても難しいとは思うのですが、そこが気になってしまう感じです。

藤原 ハル『課題2「きらいなあのこ」改稿』

主人公の表情が変化が良くて、感情豊かなキャラなんだなあって伝わってきます。魅力的ですよね。
琴森さん(カースト上位の子)の嫌味のない感じのキャラも良いです。もちろん最終的には逃げずに面と向かっていった主人公も素敵ですけど、琴森さんは単に陽キャだとか、誰にでも優しいとかそういうのじゃなくて、”自分”を持っててカッコいいっていう印象があるように思います。だからこそ、主人公が彼女に向かって一歩踏み出す展開が映えますよね。主人公にだって琴森さんに負けず劣らずの”自分”というのはあって、でも話しかけられた時の周りからの視線から逃げてしまって、そんな自分を惨めに思っている。改稿前からガラッと変えた後半の展開が、そんな主人公のことを救い、そして琴森さんと主人公という別々の”自分”を持った二人が通じ合った瞬間が描かれていて、本当に良かったなと思いました。良いものを読めました。
(それに、改稿前よりも改稿後の方が物語としての説得力や一貫性も感じました。上記の繰り返しになりますが、15ページのような二人の魅力が通じ合う瞬間が見れるのはやはり読者としても一種のカタルシスがあるように思います)
あと細かいところですが、後半の改稿に際して12ページからのコマ割りだったりフキダシやキャラの配置だったりが、勢いがありつつも読みやすく調整されている!すごい!と思いました。15ページの二人の配置も琴森さんの言葉を主人公が受ける形になってますし、トーンもバッチリだなと。

形井中へい『朝熊会長は絵が描けない(課題6より)』

内容としては朝熊会長(女)と二人っきりの空間でひたすら主人公(男)が悶々としているというものですが、ラストの脇舐めで全てを持ってかれますね。表情なんかも変わっちゃって、唐突に恐いもん。なんか舌の形も不気味というか、人間じゃない感じしますよね。その前のページの”間”といい、ホラーを見たような印象でした。
(脇の描き方については生々しくフェチっぽさがあって良かったです。これは確かに主人公は舐めたくなるのかもしれんな、と)
改稿については、モノローグの追加はよかったと思います!改稿前は「スかしてるが頭の中はエロいことずっと考えてたんやろ?」っていうのが示されないまま終わってたので、改稿後は最初からわかりやすくなってるなと感じました。ラストもインパクトがあり、オチがツイてる感じもあって改稿前より満足感があります。ですがあのラストには副作用があると僕は思っていて、というのもこの作品の主題であるところの朝熊会長の魅力がすべて脇舐めに塗り変えられちゃってると思うんですよね。残念というよりかは、タイトルがそのままだと引っ掛かる感じがあるなと個人的に思ったということです。
あと正直なところ朝熊会長、絵普通に描けそうだなって思っちゃいました。わかりやすく絵が描けないエピソードがあった方がタイトル通りかなと思います。
(今回の課題的にタイトル云々を言うのは違うかなと思いますが、どうしても気になるところだったので……)

山岡兄弟『いつもここにいるよ』

人の一生の話ですが、主人公の語りによってダレず、駆け足にもならずといった感じで読めました。一瞬の出来事が大きな意味となって、生命の円環の中で巡り続ける。きっと主人公の母も娘も主人公がおばあちゃんから受け取ったようなものを何か受け取っているのでしょうね。「しぬがでんせんした」と主人公は言うけども、人は”何か”を他の人から受け取り、死ぬ前に渡し、渡された先でその”何か”と一緒に生きていくってことなんでしょうね。自分が何を受け取り何を渡すのか、あるいは自分の人生の意味は、最後死ぬまで分からないものなのでしょう。ただ、この主人公は最後にその結論に辿り着けたのだろうと思います。この結末は美しいものですよね。
改稿については主人公のエピソードを2ページ分詳細にペースをゆるめて描いたのは全体の構成的にもプラスに思います。
(どちらがいいかってなんとも言えないですが、僕はそう思いました)
ただ、もっと長い尺で読みたい話ではあります。改稿によって詰め込み感は軽減されていますが、モノローグで引っ張っていく話じゃないのも読んでみたいですね。かなり長くなっちゃいそうですが……。

深田えいひれ『課題3改稿]選ばれし者:Re』

お疲れの勇者を狙う謎の女は何者か。勇者の旅の意味とはなんだったのか。そして3ページ目下の”ビリビリビリビリボリ”という謎の音の正体は。すべてが謎でツッコミが追い付かないですが、これで勇者の旅は終わったのであった、ということはわかるって感じですね。勇者業が大変だったということは仲間のエルフの魔法使いとかに遠い未来でも覚えておいてもらいたいですよね。
僕も目覚めたら面倒ごとがすべて片付いてて家から出なくてよいならどれだけいいことだろうって思いますが、そうは問屋が卸さないように、この勇者も世界が救われたあとにいろいろ面倒そうな人生が続きそうですな、と勝手に想像したりしました。
最後のページの勇者を待ってた人?を大きく描くのは良いと思ったのですが、そのページの左側4コマの間ふたつのコマ(顔アップ、後ろ姿)はそれまでの話の勢いを削いでしまってる感じがするので、無くすか勇者のリアクションを詳細にした方が良いのかなと思いました。
(なんとなくですが、このコマ割りなら次ページもあったほうが漫画としておさまりがいいかなという気がします)
3ページ目の剣が光るのもちょっと意図がわかりづらいかなと思います。正直言うと、話の内容としては改稿前から分かりづらくなってしまっているように思います。同じ4ページですが改稿前は起承転結がしっかりあって、改稿後はそれがなくなってしまっているように思うので、もうちょっと展開だったり説明がプラスされたものを読みたいと思いました。


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