「初恋」[流月]

初めて人を激しく好きになったのは、高校2年生の春。
長いこと友人関係を続けていた人と、不意なことで帰り道に手を繋いでしまったから。その手の柔らかさと温かさと離し難い心地よさに、雷が落ちたように急展開で好きになってしまった。
その人とはなあなあの流れで付き合ったけれど、何も無く。付き合ってから7ヶ月を過ぎた頃、適当な理由で振られた。泣いた。とても。それは目も当てられないほどにとても。
私は彼を思うといつも泣いていた。
振り向いてくれない言動の冷たさやその割に他の女友だちには見せる屈託の無い無邪気さ、すげない態度、どうしてさっさと振ってくれないのだろうと思っていた。私は彼のことが大好きだったから、気持ちが無いのは分かっていたけれど私から手放すなんて出来なかった。
付き合っている最中も嫉妬や言いようのない苦しみを味わったけれど、別れてからもそれは続いた。
初めて見る感情に戸惑って、扱いきれない自分の心に嫌気が刺したころ、彼からの再度の好意に気気付き、「何を今更」と急激に冷めてしまったのがこの恋の終わり方。

今、長く好きな人と付き合い、そして終えようとしている。
4年間の片思い。璃月にも好きになった当初から話を聞いてもらっていたけれど、付き合うに至るなんて私は露程も思っていなかった。
私の好きな人(現彼氏なので彼と呼ぶ)は心のシャッターをガンガンに下ろしている人で、かつての好きな人のすげなさなんて可愛いものだと思えるほどに冷たかった。
愛情も情も人間らしさも感じない、初めから何も受け入れないと決めているのが伝わってくるし、その癖バカみたいに距離が近くて、「ああ、この人こういう人なんだなあ」と思っていたのをふ、と思い出す。
彼が私に言う「この俺があなたのことこんなに好きで好きでどうにかなってるんだからもうちょっと自信持ったら?」は「確かに!」とは正直思うことで、難攻不落、誰も心に住まわせない彼が私に揺らぎ、(4年間かかってるけど)好きだと言ってくれるのはかなり自信を持ってもいいことだと思うのだけど、なんかさあ、あのさあ、分かるかな、なんだかね、彼を手にする度に一つひとつ何かが私の中から消えていくの。
彼が私を好きだと分かった時、付き合うに至った時、キスを、セックスをした時、止められない思いのまま感情をぶつけられた時、こんなに長く好きだった人なのに嬉しいの感情が長く続かないの。
最初は嬉しい、きゅんとして「可愛いな」と思う。
でも続かない。彼とバイバイすれば1人の私にたちまち戻る。「彼といる私」は「1人の私」には何も侵食してこない。
それで考える。「なんて無駄な感情なんだろう」。
少し前まで、付き合う前まで、深く関わるまで、あんなに周りの関わる異性や恋愛対象になり得る人に嫉妬していたのに、スキンシップを想像してはキャーキャー言っていたのに、それすらももう無い。

「初恋」は終わる。
激しい感情で、その感情をコントロールも出来ずに、息も出来ない程に泣いて、食事も喉を通らず、それでも終わる。終わってしまう。
私に「初恋」を教えてくれた冒頭に出てきた彼を私は未だに少し恨んでしまっているけれど、でも感謝もしている。
あんなに激しく誰かを思うことはもう無い。
そして、次は私が誰かの初恋になること、それを終えようとしていること。あの痛みを与えてしまうこと、早まってしまったのも罠に落とし込んだのも私だ、ひどいことをする。
彼からの「好きだよ」にいつからか「ありがとう」としか返せなくなった。
好きで居る理由をそれでも探してしまうけれど、だからまだ執着はしているのだと思うけれど、でももう要らないのだと、ちゃんと傷付いたのだと、私は分かっている。

初恋を彼にはあげられなかったけれど、ちゃんと好きな人と付き合ってそれなりなことをしたのは初めてで、私も新鮮でとっても楽しかったし幸せだった。それはきっといつか璃月も言っていた、「付き合わなければ分からなかったこと」だと思う。

仕事が忙しくて眠れない日々。時々外をぼう、と見つめながらタスクやノルマと戦ってるよ⚔
集中して自分の神経と向き合って、大好きで大切なお仕事をしてる。削られていく精神と、それでも満たされている幸福感。「私はこれが好きなんだ」と感じる多幸感。
ちゃんと存在している、大切な人たちの中に自分も。自分の中に大切な人たちも。それでもちゃんと自分が幸せだと思えることが出来ている。
寝不足の足りない頭で、ほとんど植物みたいなIQで、下手な言葉を使いながら、そんな風に思えている。
幸せになりたいね。
誰も傷付けないくらい強くなりたいね。

お久しぶりの日記。何が書きたいのかよく分かんなくなっちゃったけど、ほとんどポエム。メモ。

じゃあのん!

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