ただ、調子が悪いだけ〜璃月〜


9月に入り、仕事を始めた。
というのも、9月の手当が急遽申請できなくなったから。10月から契約の会社に入ったはずだったのに、契約日と研修が9月上旬だったのだ。
例え研修ではあるものの、1日でも給料が発生したらその後手当は対象外となる。

別に、躁鬱病が良くなった、訳ではない。
家族や彼や世間になんとなく、そろそろ働いたら?感を促されていると感じたから。

出勤初日を終え思うこと。
それは、半年間のお仕事お休み期間の代償は、わかっていたもののとても大きい。

まず、体力のなさ。退勤するまではいいのだが、そこから家に帰るまで完全に力が抜けてしまって、無理矢理に動かす感じになる。

そして、出勤時間がきちんと決まっていること。
遅刻してはいけない(当たり前のことだが、朝、そして出勤中のいつパニックになるかわからない私にとって、これは致命的だったりする)。

何より仕事中だとしても、いつ体調が悪くなるのか、涙を流してしまうのかわからない恐怖と戦わなければいけない。こればかりは自分でコントロールがまだ、効かないことだから。


それでも「頑張ろう」と決めて、
どうしても経験を積んでおきたい職種の募集のある、心からここがいい!と思うところを見つけ、
怖い怖いと言いながら選考を受けて、
どうにか受かった会社。

家族も彼も、とても喜んだ。
「これでやっと一歩進めるね」
そういって、涙を流された。

はじめはリハビリがてら、無理せずに、と周りには強く言われているので週1から。
そのあと、週2日になり、かけもちパートが始まると週4日になる。週3日は午前か午後かになりそうだから、それが救い。
とはいえ、月に入ってくるお金はガクンと減った。

もう後戻りはできない。だから、失敗はない。
みんなの呆れた顔も見たくない。

今だってみんなみんなに日々呆れられて、怒られている気がしてならない。
家族にも、彼にも、会社の人も、世の中も、みんなに、
「将来も見通せない、頑張れなかった人」と烙印を押されている気がする。

頑張れない、そう思いながらも入社した会社は、案の定、頑張れ、頑張れという会社だった。

「璃月さん、今日から頑張ってね」
と、体も声も大きい、威圧感のある人が言う。
この人、怖い。
前職の上司も同じような感じで、威圧感がすごかった。

「頑張ろう」、その言葉の中に
愛があろうとなかろうと、
期待があろうとなかろうと、
今の私にはプレッシャーでしかない。

「仕事と病気が落ち着いたら、結婚の時期を決めようか」彼が言った。

仕事も始めた、病気が良くなることは見込めない、お金もない、将来も見えない。
何より、自分がいつ崩れるかわからない。

そんな状態で、何が「結婚の時期を決めよう」だ。

同棲生活が快適になるように、環境を整えた。
彼の異動に合わせて動けるように、仕事も選んで、始めた。周りのみんなは喜んで、頑張れ!という。

前にも後ろにも右にも左にも動けない。
気づけばガッチガチに固まっていた。

そう思っているのは私だけで、
実は誰も呆れてないし、誰も怒ってないし、元気でいてくれるだけでいい、と思ってくれているのかもしれない。

でも、でも。
でももし私が今後戻りをしたら、将来はもっと見えなくなる。

誰もいない場所に行きたい。
これ以上この環境にいても、お金はかかるは、泣き続けるは、周りにとって迷惑しかかけない。

しがらみも、期待も、将来も、感情も浮いていない、そんな場所に逃げたい。

そんなことを思って、また、涙が止まらない。

「ただ、調子が悪いというだけだから。今日はゆっくり過ごしてごらん」
そう言い残して会社に行った彼の言葉は、全く私の心に響かなかった。

きっと、調子が悪いのは今日も明日も明後日も、それからも変わらないだろうから。

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