41歳で自然妊娠された方の物語
ある日、薬局にご夫婦がいらっしゃいました。お洒落なペアルックから一目で仲良しご夫婦だと分かりました。
話を伺うと、妊娠を希望されて5年、何年も不妊専門の病院でタイミング療法と体外受精療法を受けているが未だに授からないとの事でした。度重なる体外受精で奥様は心身ともにかなり疲れた様子でした。しかも数か月後には41歳になるとのことで、ほぼ諦めモードでした。
お二人が漢方薬局に来られた経緯を伺うと、興味深い事に奥様は漢方薬を全く信用していないのに、ご主人様がどうしても奥様に漢方薬を試して欲しいとの事でした。ご主人様は若い頃中国に留学した経験があり、その時体調を大きく崩して病院で治療を受けたが一向に改善が見られず、知り合いの紹介で中医の先生に診てもらい、処方された漢方薬を飲んですぐ元気になられたそうです。その時の感動を未だに忘れられず、漢方薬が不妊治療でもきっと良い働きをしてくれると信じ、今日は話だけを聞くと言う条件で奥様を無理矢理連れてこられたそうです。
私はまず奥様の今までの経緯や検査データを分析し、漢方治療を受ければ自然妊娠の可能性はまだ十分あることを伝えました。そして彼女の体調を細かくチェックし、不妊になる原因と解決方法を伝えました。
彼女の場合は先天の精と後天の精が弱い、つまり生まれながらの虚弱体質で胃腸も弱く、消化吸収能力が弱い事で全身的ににパワー不足が見られました。人間の身体はパワーが足りなくなるとエネルギー配分を生命維持に最優先するようにできています。例えば中枢神経系、循環器系、免疫系などにです。これらと比べると生殖機能は生命に直接関わらないものなので真っ先に供給がカットされて妊娠が上手くできない事になります。治療は先天の精である腎の機能と後天の精である胃腸の機能を上げることで全身のパワーアップと生殖能力を高める事に重点を置きつつ、全身のバランスを整える事です。
私の説明を聞いて奥様は納得するまで至りませんでしたが、とりあえず3ヶ月試して見ることになりました。私の説明よりもご主人様の気持ちに答えて上げようとする部分が多かったように思います。これでご主人様も安心した様子でした。本当に仲の良いご夫婦でしたね。
お薬は胃腸を元気づける漢方を主体に少し加減を加えて全身のバランスを整え、腎機能を高める漢方をご用意しました。その後二週間に一回のペースで来て頂き、体調に合わせてお薬を調整しました。
暖かくなり始めたある日、突然奥様から電話があり、妊娠反応陽性が出たとの報告がありました。もちろん自然妊娠です。これでやっと念願の妊婦生活が始まります。
妊娠中もずっと漢方薬を服用したお陰か、出産までほとんどトラブルもなかったそうです。言うまでもなく彼女はすっかり漢方信者になり、これからは漢方の素晴らしさを周りに宣伝すると自ら言ってくれました。約束通り、その後彼女の紹介で薬局には不妊の患者さんが来られました。
今、世の中にはまだまだ漢方の事を知らない方が多いようです。でも漢方の恩恵を受ける方が一人二人増えて行けば、そのうちたくさんの方々に伝わって行くでしょう。私達もこうやって積極的に発信をし、大勢の悩みを抱えている方の役に立てる事を願っています。
中医学アドバイザー 井上松春
薬剤師 早川友樹
誠心堂薬局 池袋店
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