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妊娠に向けての戦略

2年前のとある日、30代の若い女性が薬局にいらっしゃいました。
話を聞くと、結婚してからすぐ妊活を始めたけれど、5年が経った今もその夢は叶わず、病院の検査では多嚢胞卵巣症候群(PCOS)の傾向と高プロラクチン血症が指摘されたそうです。
ご夫婦ともに病院での治療などは考えず、自然な形で妊娠が出来れば良いなと漢方薬局に来られたそうです。明るく元気そうな方だなというのが第一印象でした。


基礎体温を見てみると確かに排卵に時間がかかり、高温期への移行がゆっくりでした。身体が冷えやすい事と肌が乾燥していることもうかがいました。総合的に判断すると中医学的には血の不足と腎虚、そして肝気鬱滞が見てとれました。
私は自然妊娠をするための絶対条件として4つの項目を挙げました。元気で正常な卵子と精子があり、また卵管と子宮に異常がない事です。4年間の妊活で妊娠できなかったのは4つの条件のどこかにきっと問題があったからだと。そしてこれからは想像できる問題点を1つずつ排除して行きましょうと伝えました。
彼女の場合、検査では卵管と子宮に異常が見当たりません。ただ排卵に時間がかかり、高温期への移行も弱いタイプなので、排卵はしているものの質はあまり良くない可能性が高いと感じました。これを改善させるには腎(生殖器)のパワーを上げることが何よりも重要になります。またプロラクチンが高いと妊娠の妨げになるので、これも下げなくてはなりません。高プロラクチン血症は薬剤によるもの、甲状腺機能低下症に伴うもの、下垂体の病気によるもの、視床下部の病気によるものがほとんどですが、彼女の場合は単純にストレスによるものと判断し、自律神経を整えることで改善を図りました。


定期的に彼女の体調の変化をうかがいながら漢方薬を調節し、かれこれ1年近く漢方薬を続けた結果、生理周期が整ってきました。ここに至るまで時間はかかりましたが彼女の持ち前の明るさでモチベーションは下がらず、常に前向きに問題点を探しながら二人三脚で治療を進めることができました。そして私からの提案でこの時からご主人様も漢方薬を飲むようになりました。もちろん腎のパワーを上げて精子の質を上げる作戦でした。


そしてさらに何か月か経ったある時、彼女の高温期が14日以上に伸びてきました。これは良い兆候じゃないかと私はドキドキしてきました。それから2カ月後、待ちに待った妊娠の報告をうかがう事が出来ました。
すべてが計画通りでした。時間はかかりましたが今までの努力がすべて報われる瞬間でもありました。妊娠中もしっかり漢方薬で体調管理をし、彼女はつわりもなく元気に妊娠生活を楽しむことが出来ました。もうすぐ出産予定日なので最後までサポートしていこうと思います。


追記(4/27)

こちらのお客様が無事にご出産され、詳しい内容をアンケートに記載して下さっています。

そちらも記事にしておりますので、ぜひご覧ください!

https://note.com/kampo_ikebukuro/n/nb02d0f3d757e


中医学アドバイザー 井上松春
薬剤師 早川友樹

誠心堂薬局 池袋店
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