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貸本屋の記憶とサブスクについての考察

私は、貸本屋を利用した経験がある最後の世代かもしれません。
小さい古書店のような造りで、本棚があって本が一杯あって、それを有料で貸していたお店です。
有料っていっても一冊一泊¥10程度。
最初はお店の人に言って、ノートに名前や住所を書いて登録し、好きな本を持っていってお店の方にノートに記録してもらい、料金を支払って持って帰るという手順でした。
通りに面した家の主婦が、副業としてやっていた感じがありました。
古書店と違って、お店の方は本のことをよく知らなかったのです。
子供にとって単行本の値段がまだ高かった頃に、安く借りられる貸本屋は貴重でした。


……と言いたいところですが、実際は。
昭和30年代後半に生まれた私にしてみれば、マンガ本はそれほど遠いものではなく、小遣いでもまぁまぁ本は買えていましたし、友達との貸し借りもやってました。
それに手塚治虫・石ノ森章太郎・藤子不二雄などのメジャーマンガ家の本がない貸本屋に、私は魅力は感じていませんでした。
最初に貸本屋に行ったときには、そういうメジャーなマンガが安く読めると期待していたのですがね。
そしてほとんどの本はボロボロでした。
印刷や紙の品質も悪く、私は手に取った本をお金を払って持って帰る気がしませんでした。
結局、借りたのは2、3回だけ。
今となっては、何の本を借りたのかも覚えていません。
貸本屋は、消えるべくして消えたと思っています。


大人になってから、貸本漫画のコアな世界のことは知りました。
でもそんなこと、当時の子供に分かるわけがありません。
たぶん貸本屋って、業者がいて貸本屋をやりたい人に本をセットで貸して商売させて、上がりの一部を取っていたのでしょう。
そういう業者がどうやって本を集めていたのかは知りませんけど。
もし「子供はマンガならどれでもいい」と思っていたなら、それは大間違い。
昭和二十年代でもあるまいし、ちゃんとトレンドってものがあったのです。


今ネットで読み放題サービスを使っていると、マンガに関してはあの貸本屋のニオイがするのです。
私はいくつかの、本や雑誌のサブスクを試してみましたが、ことマンガに関してはダメダメでした。
「マンガが○○冊読める」なんて言ったって、ほとんどは名前も知らないマンガ家の下手っぴな作品か、古すぎて読む気もおきない作品です。
「こんなのタダでもいらんわ!」っていうのを「タダで読めますよ」と言われてもねぇ。
私は本のサブスクは、雑誌を読むためのものと解釈しています。


そういえば、映像系のサブスクもいくつか調べたりしましたが、例えば映画で見たい作品、見たい監督とかで検索したら、ほとんどヒットしませんでした。
つまり大ヒットした安パイ作品がほとんどで、コアでマニアックな作品はほぼないってことです。
(私はゲテモノが好きなので大ヒット作品は見ないのです)
ドラマも同じで、「あれを久しぶりに見たいな」と思っても、まぁーんずヒットしません。
もちろん、世代的なこともあるでしょうけど。
本にしても映画にしてもドラマにしても、あと音楽もありますけど、ニーズを深堀りしてコアでマニアックなものを揃えて差別化しようと思う企業はないのでしょうか。
「あの店に行けばアレがある」
「この品揃えはこの店だけのもの」
そういうのが生き残ると思うのですがねぇ。


最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

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