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1980年、好きだった人

高校生の頃、好きだった人がいました。

(以前書いた『1980年、元旦のデート』より後の話)

私とその人(仮にZさんとしましょうか)はクラスも部活も別でしたが、二人共部長ということで知り合いました。

その年の文化祭の打ち合わせで、文化部の部長が放課後に生徒会室に呼ばれたのですが、何故か来たのは私とZさんだけ。

「みんな来ないねぇ」

なんて言いながら、初対面の二人で会話が盛り上がりまして。

Zさんは可愛らしいルックスで、頭の回転が速くてユーモアのセンスもあって、会話の中での押したり引いたりが絶妙でした。

こちらとしてみれば、Zさんは話は合うし、ルックスも好みだし、楽しかったです。


その後Zさんとは廊下で会えば立ち話をするようになり、そして三年生になってみたら同じクラスになっていました。

しかも席は隣同士、そりゃ嬉しかったですよ。

おそらくZさんも私のこと、まんざらでもなかったと思うのです。


ところがここで問題が。

Zさんの友達で部活仲間のXさんも同じクラスだったのですが、このXさんが私のことを好きだったのです。

(モテキ自慢みたいですみません)

Xさんはちょっと鈍くて天然で、大人しいけど時々強引になるような人でした。

おそらく、当時のクラスメイトの多くは、私とZさんがいい感じになってるって気付いていたと思うのですが。

Xさんはそんなのお構いなしで、結構ぐいぐい来たわけです。

ま、告白まではありませんでしたがね、Xさんは今のマンガやアニメで言うと「奥手なメガネっ娘」的キャラでしたから。

(当時は今ほど男女間の垣根が低かったわけではない)


更に困ったのは、ZさんはXさんに気を使って、私との距離を取り始めたこと。

Zさんは周囲に気を使う人だから、Xさんにそうするのも当然といえば当然なのです。

ZさんがXさんを応援するポジションに行ってしまって、私としては身動きが取れなくなってしまいました。

もし仮にXさんがいなかったら、私は間違いなくZさんに告白していたでしょう。

Xさんだって可愛らしいし話せば楽しい人ですけど、Zさんの前では霞んでしまいます。

Xさんに迫られても私は受け入れることはできず、かと言ってキツい言い方で追い払うようなことは「XさんはZさんの友達」だけに出来ずにいました。

こうして三竦み状態のまま、時間だけが過ぎていきました。


ある日、部活が終わって帰ろうとしていたときに、昇降口でZさんとバッタリ会いました。

たまたま双方とも一人きりで、一緒に帰ろうということになり、珍しく二人きりになれました。

二人で暗い夜道を歩きながら色々と話し、バス停まで来て、本当は二人は逆方向のバスなのですが、私は「送ってくよ」とZさんのバスに一緒に乗りました。

ガラガラのバスの車内でまた会話が盛り上がり、Zさんは自宅の近所のマックに寄っていこうと私を誘いました。

これがZさんとの初デート、になるのでしょうね。


遅い時間だけに店内に他のお客さんはいなくて、二人でハンバーガーを食べながら楽しくおしゃべりしました。

その中でZさんは、

「ピートくん(本当はこう言ったわけではない、念の為)は、Xさんのこと、どう思ってるの?」

と聞いてきました。

私はドキッとして、

「(何でそんなこと聞くの?)」

と思いつつ、

「可愛いしいい人だと思うけど、一番好きな人は別にいるから」

と答えました。

Zさんは「ふーん」なんて言って、意味ありげに微笑んでいました。


結局、このままの状態で何もないまま、我々は卒業していきました。

当時の若者なんて、この位ウブなのが当たり前でしたね。

(その後のクラス会などでも会うことはなかった)

あの頃の私に、今くらいの図々しさがあったら、また別の人生があったとは思います。

ただ、そういう「IF」を言ってみてもしょうがないですけどね。

私は男性なので、こういう出来事を時々思い出してしまうのです。

「逃した魚は大きい」ってことかもね。


最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

(タイトル画像は本記事とは関係ありません(笑))

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